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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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奪わせない

「たぶん詩乃(しの)が気に入るのいっぱいあると思うぞ」

「楽しみ! じいじもお小遣いくれたんだ」

「無駄遣いすんなよ」

「うん!」

 美津(みつ)の所に田貫(たぬき)と訪れてから1週間後。次は詩乃を連れて行こうと、提灯屋(ちょうちんや)を訪れていた。田貫を通じて店に来て欲しいと連絡があったからだ。提灯屋が近付くと、塀の上や道の端に猫が増えてきた。この前は1匹も見なかったんだがな。

「猫ちゃんいるの?」

「ああ、たくさんいるな。店はもうすぐだからな」

 出かけるのが嬉しいのか、詩乃は俺の手を握りながら足取りを軽くしている。

 扉を開けると、前と同じように風鈴が鳴った。詩乃はその音に興味を示した。北海道の家に飾ってあったけど、それとは少し音が違うかもしれないな。

「美津? どこにいんだよ?」

「……ああ来たのか、いらっしゃい」

 店の奥から箱を持って現れた美津。視界に詩乃を捉えたのか、一瞬で表情を変えた。

「そ、その子が妹かい!?」

「あ、ああ……」

 大声を出した瞬間、美津はすごい勢いで迫ってくる。思わず詩乃を抱き上げ、美津の視線から逃そうと体が動いた。突然のことに驚き、腕の中で驚いているのがわかる。

「なんだよ急に」

「いや、こんなに可愛らしい子だとは思ってなくてね。真っ直ぐ伸びた黒髪も小さい唇も、白い肌の中でほんのり色付いた頬も全部想像以上だよ」

「き、気持ち悪ぃ。あんた、詩乃に何する気だ」

「何もしないよ失礼な! ただ定期的に逢いに来てくれればいいだけさ」

「は?」

 さっきから腕の中に隠している詩乃を少しでも見ようと奇妙な動きをする目の前の女。しなやかに見えるその姿が不気味で、詩乃を見る目の瞳孔が細く鋭くなっていった。この化け猫女、まさか詩乃を食うつもりじゃないだろうな。

「食うなら田貫にしろよ」

「ふん! あんな肉食ったら腹を壊しちまうよ。それに、可愛い女の子を食べる趣味なんて、あたしにはないのさ」

 美津は不満たっぷりという表情で、俺の腕を叩く。その時、窓から1匹の白猫がやって来た。

「まぁいい、さっそく本題に入ろうじゃないか。詩乃ちゃん、あたしは美津って言うんだ、今から詩乃ちゃんのお兄ちゃんと話があるから、店の奴と雑貨でも見ていて」

「美津、さん……」

 少し人見知りが出ているようだが、俺たちのやり取りを聞いていたからか警戒はしていないみたいだ。

白谷(しろや)、こっちに来て」

 美津の声に先ほど入ってきた白猫が歩いてきた。側まで来ると、猫の姿を変化させ細身の男になる。肩ほどに伸びた白髪に、黒色の着物を纏っている。

「美津さま、私がこの小さいお姫様の相手をすれば良いのですね?」

「ええ、失礼のないようにね」

「かしこまりました」

 見知らぬ男に詩乃を預けるのは気が引けたが、害があるようには見えない。まあ店の中だし何かあればすぐに殺れる。

「殺気をぶつけないでください、何もいたしませんよ」

「悪いな、こっちは妹が大事なんでよ」

 美津は持っていた箱を白谷という男に渡す。その中には子供向けの小物や装飾品などが入っているようだ。

「会えた記念だ、好きなのを選びな、あたしからの贈り物だよ」

「ありがとうございます!」

 店の端にある小上がりに2人は向かい、俺は美津がレジの横に用意した椅子に腰かける。美津も普段使っているであろう椅子に座り、お茶と少しの菓子を差し出す。

「ぬらりひょんの事だけど、はっきりとした居場所は分からなかった。お得意の目くらましでもしてるんだろうよ。あたしの眷属たちが見つけられなかったんだ、余程力をつけてるんだと思う」

「そうか」

 期待していなかったと言えば嘘になる。これで居場所がわかれば直接殴り込みにで行っていただろう。

「だけど、わかったこともある。ぬらりひょんはあんたのことをいろんな甦り(よみがえ)に伝え回ってるらしい」

「俺の事を? なんで」

「ぬらりひょんのやり方は知ってるだろ? 奴は自分で仕掛けることの方が珍しい。下級妖から天狗まで、手駒にしようと動く。そして、あんたみたいな名のある妖を打ちのめす」

 確かに、ぬらりひょん本人が出てくるのは珍しかった。ムキになったり、何か策を持っていたり。前世でもあいつは力のある妖を手下または同盟関係を持ちかけて俺に挑んでいた。もし美津の言う通り、今も自分の仲間を増やしているのなら、俺の妖気をそこら中の甦りや妖が嗅ぎ回っているはずだ。

「あ、そういえば……」

「どうしたんだい?」

「いや、少し前に田貫が数人の甦りに襲われてて、そん時に探してた奴って俺の事を言ったんだ。もしかしたら……」

 あの時、あいつらが何の甦りなのか考える余裕はなかった。アイスの方が心配だったし。

「今のとこぬらりひょんと組んでそうなのは誰なんだ」

旧鼠(きゅうそ)(いたち)連中、首長たちなんかもあんたの噂をしてるって眷属が聞きつけたね。それに、天狗も」

「天狗か」

 天狗は厄介だ。数が多い上に、力のある奴も群れに何体か存在する。天狗はいくつか種類があり、その中にも群れがある。大天狗や鴉天狗はかなりの戦闘好きでよくやり合った。詩乃には俺の妖気が嫌ってほど染み付いてるだろう。だが、詩乃自身に力は無い。あいつらが狙うには格好の的だろうよ。

「手を貸してやるよ」

「あ?」

「そんなに殺気立つんだ。詩乃ちゃん、本当に大切なんだろ?」

「当たり前だろ。長い時間を生きて、ようやく見つけた俺のたった一つの宝だ。人を食っても、妖を倒しても、村や町を焼いても得られなかった感情を手に入れた。だから詩乃は誰であっても俺から奪わせない」

ここまで読んでくださりありがとうございます

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