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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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はじめまして

「おはよう嶽川(たけがわ)くん。昨日はありがとうございました」

「無事に帰れたのか」

 翌日、自分が到着するよりも早く、田貫(たぬき)は教室にいた。俺が来ると1番に挨拶をし、綺麗にラッピングされた何かを差し出してくる。

「昨日のお礼に、クッキーを持ってきたんですよ。僕の家ケーキ屋でさ、僕も簡単なお菓子なら作れるので」

「てことはお前の手作りか」

「あ、いちおう店でも出してるやつだから、不味くはないと思うんだけど」

 もったいない気もしたが、リボンを解きクッキーを1枚取り出す。サクッとした食感のあと、散りばめられた砂糖のほのかな甘みが広がる。

「美味いじゃん」

「よかったー」

「妹にも食わせる」

「妹って、もしかして昨日の」

 あ、紹介してなかったな。あの雰囲気から察しているだろうが、改めて紹介してみよう。それに、もしかしたらぬらりひょんのことも聞き出せるかもしれないしな。

「田貫、放課後ちょっと着いてこい」

「え、カツアゲならお断りです」

「違ぇよ」

 こいつは俺のことなんだと思ってんだよ。

 

 最初はビクビクしていたくせに、学校を出てバスに乗る頃には自分から話し出すようになっていた。たぶん、昨日助けたのが良かったんだと思う。

「僕のとこも弟がいっぱいいてご飯足りないとか、遊べとかいろいろうるさくて……」

「田貫が一番上なのか」

「そうだよ」

 いつの間にか敬語も抜けて気さくな話し方をするようになってきた。小学校の最寄りのバス停に着いた頃、田貫はもじもじと気持ち悪い動きを見せる。

「あのさ、嶽川くん。僕らもう友達って言っていいかなあ」

「は?」

「あ、嫌だってさ。学校でも僕らよく一緒にいるし、沢山喋ったと思うし……もう、友達でいいかなって!!」

 無駄に目を輝かせる田貫。純粋を通り越して気持ち悪い、変態?っていうのか?

「気持ちわりぃな。友達って宣言するもんなのかよ」

「え、あいや、そうじゃないけど、ほら、嶽川くんってわかりにくいっていうか……」

「ああ!?」

「ひぇえええ」

 ポロッと失礼なこと言いやがるなこいつは。まあもうどうでもいいや、そう思って話し続ける田貫のことを無視しておこうと決めた。

 今日は1人で待っていた詩乃(しの)。足元に落ちている石を並べて、何やら形を作っているようだ。

「詩乃、待たせたな」

「にいに!」

「何作ってんだ?」

 大小様々な石は、曲線を描くように並べられている。たぶん、これからハートになるんだろう。

「完成してから帰るか」

「うん! 後ちょっとなの」

 石を触りながら慎重に並べていく。そういえば北海道にいた時も、芋とか並べるの好きだったな。

「その子が妹さん?」

 突然の知らない声に驚いたのか、詩乃は隣にいる俺の足を掴んだ。田貫はビビられたことがショックだったのか、ぶわっと目をうるませている。

「昨日会ったろ。同級生の田貫一成だ」

「たぬき、いっせいさん? にいにの、お友達?」

「あー……たぶんな」

 たぶんなんてひどいよ〜とさらに喚く田貫。まじで急にうるせぇなこいつ。

「はじめまして、嶽川詩乃です」

「あ、これはご丁寧に……田貫一成です。たけ、影丸(かげまる)の友達です、よろしくね」

「呼び捨てかよ」

「いいでしょ、友達、なんだし」

 にんまりと笑う田貫。なんなんだ、何が嬉しいってんだよ。まじで意味がわからん。詩乃はおっとりとした田貫の口調にすっかり和んだのか、再び石を集めてハートを作り上げる。完成したそれをスマホで写真に収め、帰路に着く。

「そうだ、田貫。お前にもうひとつ聞きたいことがあんだよ」

「なに?」

「ぬらりひょんってわかるか?」

「え?」

 田貫の顔がサッと蒼くなった。ぬらりひょんも鬼に比べれば弱いものの、下級の妖たちからすれば畏怖すべき存在なのは間違いない。

「えっと……僕が答えられるのは、各地を転々として仲間を増やしてるってことぐらいかな、あくまでも噂なんだけど」

 昔対峙したぬらりひょんも、多くの妖を連れていた。妖力を器用に使って自身の肉体的弱さを補う。幻術を使えば、そこらの妖なんぞいとも簡単に倒してしまうのだろう。ここに来てからまだぬらりひょんの妖気は感じていない。しばらく、ここにより着く気はないのだろうか。

「でも、どうして気になるの?」

「詩乃は、妖に両の目を奪われた」

 疲れたのか背中で眠る詩乃。田貫と話していても起きる気配がない。

「妖気を感じた、犯人はぬらりひょんだ」

 田貫が息を呑んだ。前世で俺の縄張り近くにいたのなら、何度かぬらりひょんとやり合っていることは知っているだろう。自分事のように顔を歪め、何かを必死に考えている。

「影丸は、ぬらりひょん様を倒したいの?」

「ああ。妖気も前世に劣るがかなり蓄えることが出来た、そろそろぬらりひょん探しをしてもいい頃だろ」

 今世でのあいつの姿は知らない。妖気を隠すのが上手いやつだったから、簡単に探すのは難しいだろ。だが、その器用さを活かさず、詩乃の目にはたっぷりと妖気を残していった。明らかに、俺をおちょくっている。それには単純に腹が立つし、詩乃を狙ったことで怒りは倍増以上だ。

「情報を集めるなら、いい所があるよ。今度案内するね、日曜は空いてる?」

 田貫は何かを覚悟したように、強く俺を見つめた。

「君の話を聞いて、妖の情報屋がいるって噂を思い出したんだ。一緒に行かない?」

ここまで読んでくださりありがとうございます

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