転校生
「おはよう」
その挨拶に振り返る。そこには、自分のクラスメイトがいた。
「ああ、おはよう」
挨拶には挨拶で返す。これが僕のジンクス、と言えるようなものでもないけど、自分の中で決めているもの。自分ルールってやつだ。
「ねぇ、聞いた?今日転校生が来るらしいよ。」
初耳だ。といっても僕は転校生にそれほど興味はない。だけど、カッコつけていると思われるのも嫌なのでとりあえず気があるように返す。
「えっ、まじで?えー、どんな子かなぁ?」
「なんか東京の子らしいよ」
「へぇー、東京か。都会人だね。」
みんな東京というワードに、こぞって興味を示す。まあ、ここは地方だから仕方ないにしても、少し恥ずかしい。
クラスについたので、そこで彼との会話は終わった。
しばらく経って、朝の短学活が始まった。そこで、先生はみんなが興味を示すと確信したような声で
「きょうは、転校生が来ている。紹介するぞ。おーい、入ってきてくれ。」
クラスの中にざわめきが起こる。情報を知らない生徒は、さっきまでのつまらなさそうな顔から一変。とても、目が輝いている。なるほど、普段起こらないイベントには、みんなこんなに興味を示すんだ。
そう思っているうちに彼が教室へ入ってきた。
彼の顔はニキビが浮かんでいて、お世辞にもイケメンとは言えなかった。しかも、腕は骨にとりあえず皮をかぶせたような感じで細く、健康とは真反対のような体だった。
彼は緊張する様子もなく、堂々と自己紹介を始めた。
「こんにちは、はじめまして、俺の名前は花御根健斗です。東京から来ました。この田舎に来たのは、親の仕事の都合です。よろしくお願いします。」
口調はとても丁寧だが、彼が僕らを見下しているのがよくわかった。まるで、親のせいでこんな辺鄙なところに連れてこられた。私は不服です。とでもいうように。
僕が思ったこの感想は、このクラスの鈍感と言われている人たち以外感じたようだ。あからさまに空気が悪くなった。
先生もこの空気の悪さ、間の悪さを感じたのか、話題を変えるように、僕の隣の席につくように彼に指示した。
彼は、僕の隣の席につき、よろしくといった。社交辞令のようなものだったが、自分ルールに無視は反するので、僕もよろしくといった。
彼とは話をしないまま、この1日を過ごした。