終点 結婚式 ~サークレッドケープ~
スタッキーニ王国、メイデン共和国、スエノブ皇国の連合軍とバルツァー帝国との戦いは、バルツァー帝国が全面的に非を認める形で決着した。
バルツァー帝国は、莫大な賠償金を三百年の分割で支払うことになった。この賠償金を完済するまでの間、担保として交通や貿易の要衝となる街を無償で租借する形で三カ国が支配することになった。
なお、グラニット王国はあまり前線に出ておらず、陰ながら支援する形しか取らなかったけど、三カ国に比べれば少額ながら賠償金を受け取ることになった。
ただし、戦争賠償金としては低額だったので、担保を預かる必要性はないと判断され、租借地は受け取らなかった。まぁ、グラニット王国はまだまだ人が足りない状況なので、管理する必要がある土地を貰っても困るんだけどね。
ちなみに、アンの故郷であるトレビシック王国に関しては、侵略被害にあった国なので莫大な賠償金を受け取ることになった。
ただ、やはり戦争の影響で人材が不足しているため、租借地は受け取れなかった。
その代わり、三カ国の租借地が返還される条件として『必ず侵略被害に遭った国々に対する賠償金を完済すること』と明記されているので、まず踏み倒されることはないと思う。
それとバルツァー帝国皇帝、キャロリン・バルツァーだけど、彼女は戦争責任を負って皇帝を退位。新たな皇帝は皇帝位継承権を持つ人物の中から三カ国の首脳によって推薦、即位することになっている。
そして、政情が安定するまで占領軍幹部の助言によって政治が運営される手はずになっていた。
キャロリンは、彼女の事を最も真剣に心配していたクラウスとその家族と一緒に、国外で暮らすことになった。彼らと一緒なら、キャロリンの歪んだ思考を元に戻せるだろうから。
ちなみに、その暮らす場所とは――。
「本当によかったの、アン? グラニット王国にキャロリンを住まわせるなんて言っちゃって」
「いいんです。地政学的に言って、ラバージャングルほどふさわしい土地はありませんでしたから」
そう。グラニット王国のラバージャングル、その外れに屋敷を構えてキャロリンとクラウス一家が生活することになった。
しかもこの提案をしたのは、驚くことにアンだった。
「難所となるサバンナ地帯を越えなければなりませんし、南部大陸の奥地ですから。キニーネテラスのように重要物資である医薬品が採れる訳でもないですし。本当はサークレッドケープがよかったんですけど、あそこは一年以上連続して住めませんしね。
――それに、彼女と直接会ったとき、憎い敵という印象を抱かなかったんです。むしろ大人に振り回されてしまった女の子といった印象だったので……」
「だからアンは、キャロリンを殺さなかったんだね」
キャロリンとクラウス一家がラバージャングルに移住するのはもう少し先になるけど、できるだけ早く移住するみたい。
戦後処理が落ち着いた頃、僕達はかねてより考えていた計画を実行した。
「それにしても、こんなツアーを組んじゃうなんて、トシノリはすごいのだー!!」
「魔力鉄道のおかげだけどね」
「それでも、今まででは考えられないくらいすごい計画ですよ。世界の北と南をハシゴするツアーなんて」
実は、アンのトレビシック王国王位を継承する戴冠式と、僕達三人の結婚式を一気に行うツアーを計画していた。
当然、アンの戴冠式はトレビシック王国でやるし、僕達の結婚式はグラニット王国の最南端、サークレッドケープに建てた神殿で行う。
正に、世界の南北を縦断するツアーでもあった。
もちろん、各国の首脳や要人も多く招待し、参加を表明している。
当然首脳陣は非常に忙しい身の上なので、スケジュールは限られている。そんな限られたスケジュールでも、魔力鉄道を使えば不可能ではない。
まぁ、普段は研究用にしているボールドウィン号とモークチャンク号を引っ張り出すことになったけど……頻繁に使うわけじゃないから、別にいいよね。
アンの戴冠式は、つつがなく終了した。現在は、サークレッドケープで結婚式の真っ最中。
神殿内で、神官が僕達に問いかける。
ちなみに、ここの神官は半年交替制。サークレッドケープは一年以上留まることは出来ないから、こういう持ち回り制になっている。
「新郎トシノリ・イノウエは、新婦アン・トレビシックとエディと、永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」
「新婦アン・トレビシックは、新婦エディと共に新郎トシノリ・イノウエと、永遠の愛を誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦エディは、新婦アン・トレビシックと共に新郎トシノリ・イノウエと、永遠の愛を誓いますか?」
「ちかうのだー!!」
結婚の宣誓を神官の前で行うと、式は次の段階へ進む。
「では、指輪の交換を。そして、近いのキスを」
指輪の交換を行いながら、ふと思った。
これから先、国も家庭も、いくつもの区切りを迎えると思う。この結婚式も、その区切りの一つ。
もちろん、区切りの度に様々な困難が立ち塞がると思う。でも、そのたびに三人で力を合わせれば、乗り越えられると確信している。
こんな気持ち、前の世界で親の言いなりみたいに生きているだけだったら、絶対に感じられなかった。
「アン、エディ。僕はこの世界に来て、二人に出会えて、本当によかったと思う」
「私もです。最初は南部大陸に飛ばされて不安でしたけど、二人と出会えたので幸運だったと思っています」
「エディも! こっちに来ていろいろあったけど、これがエディにとっていちばんよかったのだー!!」
そして、僕達三人で熱いキスを交わした。




