第84駅 最後の領域探索とボーナス ~サークレッドケープ~
現在、僕達はグラニット号に乗ってサバンナ地帯を抜け、ひたすら南へ向け突き進んでいる。
目的は未踏の領域の調査なんだけど、実はトムとエディの証言で、この旅が最後の調査になることがわかっていた。
そもそも、南部大陸は逆三角形に近い形をしている。今向かっているのは逆三角形の下の頂点に当たる部分、南部大陸の最南端なんだ。
「エディ、南部大陸の最南端ってどんな所なの?」
「フシギなばしょだったのだー。エディはおっきい岩とかこわせるけど、あのばしょの岩はぜんぜんこわせないのだー。っていうか、小枝を折るのにもくろうするのだー」
「特別な材質が多く産出する場所なのでしょうか?」
とまぁ、これから行く領域の話に花を咲かせていると、エディが思い出したようにこう言った。
「そういえば、ママはあの領域にいくと、おとなしくなったのだー」
「おとなしくなった?」
「おとなしいっていうよりは……ほら、このまえアンのパパとママのおそうしきをやったでしょ? あれとおんなじフンイキだったのだー」
「神聖さを感じ取った、ということでしょうか?」
聞けば聞くほど、不思議な領域だと思った。
数日後、僕達は南部大陸の最南端の領域に到達した。
中心部に聖樹があり、美しい岬がある以外は特に特徴が無い領域に感じられた。強いて言えば、聖樹が他の領域の物に比べて大きい。
ところが、小枝を拾って折ろうとした時、この領域の異質さを思い知った。
「うっ、細い小枝なのに、ぜんぜん折れない……」
「私のスキルを使ってちょっと見てみたんですけど、どれも売れそうにないです。というのも、この領域にある物は全て頑丈過ぎるらしく、一流の職人が何ヶ月もかけてようやく一つの部品を作れるほどだそうで。
あまりにも効率が悪すぎて、売り物に出来ないそうです」
アンのスキル『商才』は、物を見てどのように売れば一番売れるかわかるというもの。その能力を応用して、領域にある物について調べたんだね。
それにしても、この領域は一体……。
「ご説明しましょう」
「あ、トム」
そこに現れたのは、トムだった。
「この領域は、様々なレイラインが多く集まっており、魔力が比較的高い南部大陸の中でも、飛び抜けて高い魔力を持っています」
「だから、聖樹があんなに大きいんですね」
「その通りです、アンさん。その高い魔力の影響により、この領域の植物や岩が頑丈になっているのです。それと、この領域で採れた物は口にしてはいけません。高い魔力の影響で、一口だけでも命が危ぶまれます」
「ママのようすがちがってたのも、高いまりょくのせいだったんだなー」
聖獣も神聖視する聖樹の領域なんだ、ここは。
でも、待って……?
「もしかして、この領域に来ること自体が危険なんじゃ……?」
「いえ、直ちに影響があるわけではありません。動物も同じです。ですが、年単位で長期滞在していると健康に影響が出るかもしれません」
そうなんだ。それならよかった。
でも、そうするとこの領域は開拓しようが無いかも……。
と思っていたら、アンがあるアイディアを出した。
「ここに大きな神殿を建てましょう」
「確かに。エディのママも神聖視するくらいだから、確かにピッタリかも。でも、木とか岩を壊したり移動出来たりしないよ?」
「だったら、木や地形に合わせて、今ある形を壊さないように建てればいいんですよ。実際、そうやって建てられた神殿もあるそうですし」
そういえば、前世では奈良にある春日大社もそんな感じだと聞いたことがある。春日大社は春日山を神域としていて、地形や木の位置をなるべく変えずに建てられたと聞いたことがある。
「確かに、アンのアイディアが一番いいかも。早速セントラルシティに帰って相談してみよう」
「ママと同じ気持ちになれるのかー? ならサンセイなのだー!!」
ということで、神殿を作るため一度セントラルシティへ戻ることになった。
それとこの領域と駅の名前だけど『サークレッドケープ』と命名した。『神聖な岬』っていう意味だね。
そしてセントラルシティへ帰ろうとしたその時、トムからある事を聞かされた。
「この領域に到達した時点で、トシノリさんのスキルにボーナスが加わり、大幅にレベルアップしました。ご確認ください」
まさか、そんな隠し要素があったなんて……。




