第82駅 親子、感動の再会……? ~シェンカー~
エディとゴルトライン夫妻が親子関係にあると遺伝子鑑定で証明された。
ただ、それでもアンは懸念があるようで……。
「エディさんとあの夫婦が親子関係なのに嘘は無いでしょう。ですが、やはり安易にエディさんと会わせるべきではないと思います」
「何か感じ取ったんだね、アン」
「はい。いろいろな貴族や来客と接してきた経験から言わせてもらうと、やはりあの夫婦には何かあると思います。表では紳士淑女然とした尊敬を集める人柄を演じていて、裏では非情だったりあくどいことをやっているタイプの人と同じ匂いを感じます」
アンはトレビシック王国にいた頃から、王女としていろいろな人と面会してきた。だから、人を見る目はかなり高いと僕は思っている。
僕はきちんとゴルトライン夫妻の人柄を始め、色々と徹底的に調査する必要があると思っていた。だから、グラニット王国を出発する前にリットリナさんに相談して情報収集用の魔道具をもらったし、スエノブ皇国から付いてくる兵士にも協力を仰いでいた。
数日後、夫妻について色々とわかるんじゃないかな。
「お時間を作っていただきありがとうございます、ラインゴルトさん」
「いえいえ、陛下のためならばいくらでも時間を作りますよ。それで、結果の方はどうでしたか?」
後日、僕とアンはラインゴルト邸で夫妻と面会していた。表向きは、エディとの親子鑑定の結果を伝えるため。
「ほぼ間違いなく、エディとあなた方は親子だと証明されましたよ」
「では、私たちにエディと会わせていただけるのですわね!?」
喜色ばむ様子で声を出した、奥方のサフィール氏。
でも、アンがそれに待ったをかけた。
「お待ちください。実は、親子鑑定は数時間で出来るのです。なのに、なぜ何日も時間をかけたと思いますか?」
「それはどういう……?」
予想外のことを言われて困惑するサフィール氏。
でも、アンはそれにかまわず続けた。
「実は、一定範囲の音を拾う魔道具を我がグラニット王国が誇る魔道具師が開発しました。そして幸いなことに、スエノブ皇国から護衛で付いてきていただいた兵士の中に、諜報に優れた方が何名かいらっしゃいまして。
失礼ながら、こっそりこの屋敷のあちこちに仕掛けさせていただきました」
「いつの間にそんな……」
「そして、録音した音の中から興味深いものが記録されておりました。今から再生しますね」
アンは小さい箱のような魔道具を取り出し、スイッチを入れるとテーブルの上に置いた。
数秒して、録音内容の一部が再生された。
『ゴルトライン家に追い風が吹いてきたようですわね、あなた』
『そうだな。グラニット国王は科学的な方法で親子関係を証明するとか行っていたが、まぁ問題は無いだろう。エディと我々は、本物の親子に間違いないのだから』
『そうですわね。あの獣が私達の子供だと思うと虫唾が走りますが、利用できる者は何でも利用し、利益を稼ぐ。それが商人ですもの』
『その通り。あの獣は金を生み出す獣。確か、産業動物とか言うんだったか?』
その後も、エディを獣、あるいはそれ以下のようにけなす、聞くに堪えない言葉が羅列されていた。
そしてキリがいいところで、僕は夫妻に問いただした。
「これは、どう説明されるつもりですか?」
「え、ええと……」
「そ、それは……」
夫妻がしどろもどろになっていると、突然部屋の扉がドカン! という音を立て、粉々に吹き飛ばされた。
そこに立っていたのは――無表情で足を蹴り上げていた、エディの姿だった。
夫妻は誰が来たのかわからなかったが、生えていたトラ耳とシッポを見て、なんとなく察したようだった。
「エディか!? 頼む! お前から国王陛下に取りなしを……」
「お願い、エディちゃん! 私たち、親子でしょう!?」
エディのことを散々けなしていたくせに、そのエディ本人に助けを求める姿が滑稽に見えた。
もちろん現実はそう甘くなく、エディは夫妻の懇願を一蹴した。
「おまえらなんか……おまえらなんか……エディの家族じゃないのだーーーー!!」
エディからの絶縁宣言だった。
そしてエディは、用は済んだとばかりに屋敷を去った。僕とアンもそれに続く。
後ろから弁明らしき声が聞こえるが、誰も相手をしなかった。




