祐希の覚醒
「正確な分析か・・・僕が見たのは
夢ではなく分析に基づいた予測という事か」
亮はグーグルマップを開き、
自分が見たイメージを思い浮かべ
時計のストップウォッチを押して
独り言を言ってメモに書いて行った。
「1秒・・・。0.1秒。3分。太陽が
こっちだからこっちの方角は西か・・・
するとここだ!」
亮はパソコンの地図を指差した。
そこに絵里子から電話がかかってきた。
「亮、祐希と一緒?」
「いいえ、彼女は部屋に戻りました」
「実はさっき祐希から電話があった時
おかしな事を言っていたから心配になっちゃって、
それに写メで祐希が女性の服を着ていたから」
「ええ、それは・・・」
亮はハンクス教授の話をしたかったが、
守秘義務と絵里子がそれを知る事で祐希の
関係を悪くさせたくなかった。
「なに?」
「祐希さんは女性に戻る事を自ら望んだそうですよ」
「そう、さっそく女性としての教育をしなくちゃ。
祐希スカートを履いて股を開いていなかった?」
「ええ大丈夫でしたよ」
亮は祐希が椅子に座った時、股を開いていたり
時々男っぽいしぐさをするのを思い出したが
絵里子には明かさなかった。
「よかった、祐希は亮の事を
気に入ったみたい。彼女と話をしてあげて」
「もちろんです。男の目線と女の目線が
複雑に交錯しているようで、精神的に
障害を起こすかもしれません。見守ります」
「ありがとう、祐希をお願い」
「はい」
亮はそう返事をしながら、祐希の作られた
性同一障害のリハビリをする
大変さを感じた。
亮がマシューに預かった
アタッシュケースからピストルの
SIG SAUER P229
を取出し手入れを始めると
ドアのチャイムが鳴った。
「亮、私、キャシー」
亮がドアを開けると真っ青な
顔のキャシーが立っていた。
「どうしたんですか?」
「祐希さんが苦しみだしているの部屋に来て」
亮とキャシーが急いで部屋に入ると
祐希は自分の胸を鷲掴みにし、
お腹を押さえてうつ伏せになって
うめき声をあげていた。
「こんな物、こんな物」
「祐希、しっかりしろ!君は
女になる事を選んだんだろう」
亮が祐希の肩を触ると祐希は
亮の手を弾き飛ばした。
「仕方が無い」
亮は祐希に覆いかぶさり口を開けて錠剤を放り込んだ。
「飲み込め!祐希」
すると間もなく祐希の体の力が抜け気を失い亮は
祐希をベッドに運んだ。
「どうしたんですか?キャシー」
「部屋にもどって祐希さんと話をしていて
私が父との忌まわしい過去を話すと
祐希さんがまるで男のように強い力で
急に私に飛び掛かってきたの」
「なるほど、そしてキャシーのお父さんの
話をした途端抑え込んでいた
男の心が現れたんだと思います。
祐希さんは長い間刷り込まれていた
男の心と女になろうとしている
体が争っているんです」
「気の毒に・・・私には亮がいたから
立ち直れたけど」
キャシーは男と女の狭間で苦しんでいる
少女を悲しい顔で見つめていた。
「キャシー、ナプキンを持っていますか?」
亮は体を丸めてお腹を押さえている
祐希を見てキャシーに言った。
「ええ、あるけど」
キャシーは恥ずかしそうに答え、キャリー
ケースの中からナプキンとショーツを
取って持ってきた。
「きょっとしたら、祐希に
初潮があるかもしれないです」
「初めてなの彼女?」
「ええ、男として育てられていたので
生理まで無かったそうです。
それで今まで味わった事のない
腹痛でお腹を押さえているんだと思います」
亮はキャシーから受け取ったナプキンを
素早く開くと手が止まった。
「キャシー、このテープ剥がして・・・
どこに貼るのかな?」
亮はショーツの股の部分をジッと見ていた。
「うふふ、男にはわからないわよ。貸して」
キャシーは亮が困った顔を見て笑っていた。
キャシーはナプキンのシールを剥がして
ショーツに貼ると亮が声を上げた。
「ええっ!それって直接あそこに
貼るんじゃないの?」
「何言っているの、そんな事したら
あそこがカブレちゃうわよ」
キャシーは笑いながら亮のお尻を蹴飛ばした。
亮がベッドから離れると
「さあ、祐希さんこっちに履き替えて」
キャシーは母親のような優しい声を
上げてショーツを履き替えさせ
祐希を再び横にした。
「どうしでしたか?」
亮は祐希の方を覗き込むとキャシーは
亮の顔を軽く叩いた。
「まだ出血していないけど、あなたの言う
通りあの時の痛みかもしれない。
胸も乳首の痛みかもしれない」
「ええ、自分の胸の膨らみを
否定したのではないようです。
お赤飯を炊かなくちゃ・・・」
「OSEKIHN?」
「日本では初潮を迎えると赤いごはんを
炊いてみんなでお祝いをするんです」
「まあ、なんて事をするんでしょう。
そんな事お祝いするなんて恥しいわ」
「そうですね・・・たしかに」
亮は日本の風習を思い浮かべ赤面した。
「痛い・・・」
涙を流している祐希を見ていた亮は
「キャシー、祐希を僕の部屋に連れて行きます」
「気にしないで私が・・・」
「いいえ、何かあった時の為に」
亮は祐希を抱き上げるとキャシーが
部屋のドアを開け亮の部屋のドアを
開けベッドの毛布を上げて待っていた。
亮はキャシーの気配りの良さと流れるような動きに
胸をときめかせていた。
「ありがとうキャシー」
「いいえ、ナプキンをテーブルの上
に置いておきますね、
男性の部屋にはおかしいけど・・・」




