プロローグ、も二回戦め。
この人生、三回戦め。
というか...まあ、二回戦めの第二ステージ、とでも言うべきなのかな?
前世の記憶らしきものを思い出したのは、つい先日。
そう、ほんの二日前。一昨日のこと、だった。
そして。怒涛の如く激流のように押し寄せて来た人生の荒波も、今日で一段落。
あれから、俺の記憶に、大きな変化はない。
つまり。今世でのこれまでの記憶も、前世の記憶らしきものも、そのまま俺の記憶として根付いた状態が粛々と継続しているのだ。
その一方で。空腹感も疲労感も眠気も時間の経過と共に着実に襲ってきては、食事と睡眠を取る事によって確実に回復を遂げている。
うん。これは、十中八九、異世界転生で間違いない、と思う。
たぶん、それが真実であろう。と、俺の感覚と直感が告げている。
VRゲームの世界に全力で没入している最中などでなく、ある日の突然な異世界転移でもない。この世界では珍しくもないが世間で訳ありと判定される二度目の人生であり、尚且つ、異世界からの異世界での人生の記憶を持ったままの異世界転生。
まあ、ね。正直、絶対とまで言い切れる自信はない訳だけど、もう俺は、そう考えてしまう事にしてしまった。
ただ。前世で得た知識などは割と容易に手繰り寄せられる一方で、前世の俺の人生に関する記憶には靄がかかったかのように上手く思い出せない、という不自然さが、微妙に気にはなるのだが...。
この世に生を受けて、もう直ぐ十六年。
その約十六年の間、生まれてから昨日の朝までの期間が、俺の第二の人生における第一ステージ。
続いて。前世の記憶を思い出した一昨日の昼前からそれ以降の一日とその翌日が、怒涛の転換期。
模様替えと言うか、ゲームチェンジと言うか...そう、人生における大きな筋目、境界線。
更には。今日から始まる、新たな人生。
しかも。
何故だか、生まれた国でも移住を希望した国でもない全く見知らぬ国の初めて訪れる土地で、俺は、次期領主として迎え入れられていた。
意味不明、だった。
いや、まあ。色ボケ英雄の王国とも言われるラッセル王国の有力貴族であるロンズデール伯爵家に、ひょんなことから見い出され、選択の余地など無かったものの一応は本人としも同意した上で、このノーフォーク王国のキンバリー伯爵家を訪ねて来た、のは事実だ。
しかし。話半分の認識で人違いという可能性も大いにあると想定しながらも、ロンズデール伯爵家お抱え騎士団の団長さんであるハロルド氏に連れられてノーフォーク王国の王都であるノリッジの街にあるキンバリー伯爵家の邸宅を訪れてみたら、現当主だという矍鑠たるご老人との数分の面談で次期領主と認定され、そのまま問答無用で更にキンバリー伯爵家が治める領地の中心都市であるウッドハウスの街へと強制送還される、というのは全くの想定外だった。
そう。
今、俺は、ノーフォーク王国に属するキンバリー伯爵領の領都であるウッドハウスの街にある屋敷で、キンバリー伯爵家の家令であるというリーズデイル男爵との会談のまっ最中なのだった。
ただし。俺の存在などは、そっちのけで、話し合いが粛々と進む。
ロンズデール伯爵家の名代であるハロルド氏と、キンバリー伯爵の実務責任者でもあるリーズデイル男爵。この二人のみの、緊迫した会話によって...。