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Risk

ちゃんとしたデータを基にしてない


私は幼少期から病がちだったから、腹立たしく思うんだが、予防医学、とくにワクチンの類を軽んじる阿呆が世には多くいるらしいな。病には罹らない方がいいというのはまず、流石に前提として共通認識だと思うんだが…病の危険性というやつを、いわゆる健常者だの健康優良児だのと呼ばれる連中は軽視しがちじゃないだろうか。私なんて、ちょっと不摂生するとすぐ体調崩すんだぞ。病そのものだけじゃなく、病にかかるリスクもだ。

断言しよう。予防医学の概念を無くしたら…予防接種をしなかったら、病にかかる人間は今より大幅に増えるし、苦しむ人、死ぬ人が大量に出る。そもそも、病に罹ったら死ぬ人がいるから、それを防ぐために予防するんだ。前提を間違えてはいけない。予防接種に死亡リスクがあるのではなく、病に罹る事に死亡リスクがあるのだ。予防接種は、病に罹るリスクがあるのだ。そこを短絡してはいけない。

そして、病にかかる危険性というのは、本人だけの問題ではない。周囲の人間に感染することの危険性も考慮するべきだ。お前が病気に罹ることで、すれ違った他人が死ぬことだってありうるのだ。まあ、それは流石に極端な話…と言いたいところだが、これは無視できない類のリスクだ。二次感染が深刻な懸案事項になるのは、本人が直接予防対策をとれない層だからな。体質によって予防接種を受けられない人間というのもいる。そして、受けられないからといって、病に罹らないわけではない。寧ろ、罹ったら深刻なことになる。死亡リスクがあったり重症化したりする。

わかるか。予防接種というのは、それを受ける者自身の健康のためだけにあるわけじゃないんだ。周囲の、あるいはただすれ違うだけの相手にも影響があるんだ。そいつだけの問題では済まないんだ。これは人間に限った話ではない。

注射が怖いとか嫌いとか面倒くさいとかを理由にするやつは反省しろ。予防注射にかかる時間より、病に罹った後それで苦しむ時間の方がはるかに長いんだからな。金がかかるとかはまあ…頑張れ。

現代では滅多にお目にかからない病、昔は深刻な死の危険があったが、今は治療法が確立している病、というのがある。それはリスクのない病というわけではない。SCPのオブジェクトクラスsafeと同じだ。対処法がわかっているだけで、それを破れば死人が出る可能性はある。収容違反をしておいて、safeも何もない。

再三言うが、病に罹ると苦しい。場合によっては死ぬ。病というのは、全人類に共通したリスク、不幸、苦しみである。どんな文化でも、病を善きものとは捉えていない。当然だ。他者が苦しむことを喜ぶ人間はいても、己が苦しむことを喜ぶ人間はいない。いや、余程特殊な人間であれば喜ぶケースもあるのかもしれないが、それは苦しみそのものではなく、苦しみに付随する要素を喜んでいるのだろう。

人生に苦痛は少ない方がいい。実際、一つの苦しみも感じることにない人生なんてものはないだろうから、避けられる苦痛は避けた方が良い。苦しむのは避けたくても避けられないものだけで十分だ。病も勿論しかりである。特に何もしなくても病を避けられる連中は運が良かっただけである。

ところで、感染についてだが、これに関しては大層厄介で傍迷惑なパターンがある。確か、具体例を言うと、腸チフスのメアリー、とか言ったか。本人は発症しない保菌者(キャリアー)というパターンがあるのだ。あれは、人的災害の類である。そこまで極端ではなくても、病の潜伏期間や治りかけの時に感染するパターンもある。己が苦しくないからと甘くみないでもらいたい。

また、狂犬病…古くは恐水病と言ったのだったか。アレは基本的に、罹ったら助からない。そういう認識で見るべきものだし、罹ったペットは殺処分を命じられる。人に二次感染を起こせば取り返しがつかないからだ。少なくとも現在の秩序において、人の命はペットの命より優先されることになっている。家畜や野生生物も同じく。性質の悪い感染症に罹った動物は殺処分で、助命は叶わない。死んだあとの死体にも適切な処理が求められる。

予防接種を受ける苦痛よりも、病に罹った時の苦痛の方が大きく、長い。これが全てだ。





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