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名の知らぬ色 自然の色

作者: 赤月

 よく君の人生の主役は君だ、と自信を持たせて励ます?みたいなこと言う人いるけどさ、自分はあんまり分からないんだよね。なんだろ、人から注目されるのが苦手だからかな。まあもともとクラスメイトからも「影薄いね」ってよく言われるから目立つことなんてないけど。

 んー。主役って言ったらなんだか責任重大に感じるじゃん。みんなの期待に応えないとがっかりさせちゃうし、きらきら輝いていないとなんか主人公って感じしないし。自分の勝手な偏見だけど、そう思っちゃう。

 話がちょっと変わるけど、自分は自然に囲まれるのが好きなんだよね。公園とか山が大好き。整頓されていないアンバランスなのが特に好みでさ、なんとなく木や草花たちが自己主張したり遠慮しあったりしているように見えるのが面白い。例えばさ、気持よく枝を伸ばしている木(人が伸びをしてるみたいでかわいいよ!)の横にいる木は枝がちょっと邪魔で延ばされた枝をよけて成長するからちょっと遠慮して縮こまっているように見えるんだよね。でもその木々を見つけた後同じような構造の組み合わせをまた見たんだけど、そっちでは遠慮するんじゃなくてなにくそって感じで枝をはねのけるように伸ばそうとしているのが分かんの。不思議だよね。あぁでもおんなじ生き物だから当たり前なのかな。

 下手したらそこら辺の人より素直に喜怒哀楽を感じれるからなんだか落ち着く。人が常に周りにうそをついているとかそんなことを言いたいんじゃないんだけど、なんだかね。外歩いている時すれ違う人よりも道端にひょこっと生えている草の方に目が行くし。殺風景な灰色の世界のほんの一角だけでもマイナスイオン感じる色があったらちょっと安心するってのもあってついつい見ちゃうな。

さりげないのが好き。ありのままが、いい。

それってわがままなのかな。

(名の知らぬ色 生きた色―)



 周辺が赤褐色でも、その生きた色がくすむことはない。本当に小さな蔦、小さな赤い花がそこにいる。派手な主張をするわけでもなく、何か工夫を凝らすわけでもなく。ただ己の緑の葉を揺らし、花の赤をほんの少し誇っているだけだ。

電車のドアが開く音、車掌さんの声、発射の合図、人々の喧騒。たくさんの人が乗り降りを行い、入れ替わって、そこにいた記憶など数秒後には忘れてしまうぐらいせわしなく時間は進んでいく。僕はそんな忙しい世界を必死に生きているというのに。油断したらすぐにでも周りの流れに流されてしまいそうなのに。

ホームの壁際、線路のすぐ近くににひっそり生きている草花の周りだけは、とてもマイペースに時を刻んでいた。

(名の知らぬ色 路傍の緑―)


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