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ジェットコースターはお好きですか?


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m

 


 お父様とレイが語った事の次第をまとめて、順を追って話していこう。


 まずレイは、私にパーティーを抜け出したいと言われた時思ったらしい。『疲れたって言って抜け出せばよくない?』と。


 衝撃である。そんな簡単な問題だとは思わなかった。

 しかし実際、令嬢が、疲れたからパーティーを早めに抜ける、というのは珍しいことでは無く、加えて私は昨日帰って来たばかりで、その昨日の夜には倒れているところを連れ帰られているのだ。途中でパーティーを抜け出しても強く問いただす人はいないだろう、というのがレイの見解だった。


 だからパーティーを抜け出すだけならば、とても簡単なことだったのだ。

 しかしその後の私の話を聞いていて、そんな理由ではクレアは神の泉には行けないだろうなと思ったらしい。

 というのも、「疲れた」と言えばパーティーを抜け出すことはできるが、お父様含め公爵家の人間を心配させてしまい、その後外出なんてさせてもらえるわけがないからだ。


 なのでレイは私と別れた後すぐ、会場準備の指示を行っていたお父様のもとに行き、言ったらしい。"クレアが神の泉に行きたがっている"と。


 ……確かにその通りなのだがバカ正直にそんなことをお父様に言うとは思わず、私は驚きを隠せなかった。しかしレイ曰く、無理に全部隠す必要はないでしょ? とのこと。

 現にレイは理由は話さず、私が神の泉に行きたがっている。という事実だけをお父様に伝え、それを聞いたお父様も、これから私が忙しくなるということを知っていたため、私はパーティーが始まって少しすれば体調が優れないということで帰らせるよう、というふうな話になっていたらしい。

 もちろんそれは仮病というもの。その事は公爵家の全員に伝わり、心配されることも無く、私はスムーズに神の泉に向かえたのだ。



 ……本来ならば。



 しかしレイもお父様も知り得ぬ所で問題が発生していた。

 すべてはレイが自分の知名度を見誤っていたことが原因だと言えるだろう。


 恐らくパーティー会場に入るときにでも誰かが見たのだ。……レイ(勇者)の姿を。

 そして本人が知らぬ場所で、予想もつかぬスピードで広まった。「あそこに勇者様がおられるぞ」と。


 気づいたときには遅かった。パーティーにはまだまだ時間があるにも関わらず、貴族が会場に訪れ、市民も一目勇者の姿を見ようと会場付近に集まる始末。

 パーティー会場の周辺は人の波でごった返し、混沌と化した。


 そして現在、グラディウス家にも人が波のように訪れており、とてもじゃないが帰れない。

 というか自分が帰ったら屋敷が壊れそう。……ということでレイはこっそりとお父様に着いて公爵家に来たのだ。

 私はその話を聞いてグラディウス一家を魔法でここに避難させた。家がそんな状態だったら皆休めないだろうと思ったのだ。



「ありがとうクレア、ごめんねせっかくの誕生日なのに……」


「別にいいよ。大きなパーティーあんまり好きじゃないし」



 レイは申し訳無さそうに謝るが、私としてはパーティーが中止になったこと自体はむしろ嬉しいくらいだ。

 ダンスも踊れるか微妙なところだったし、公爵令嬢の微笑みを顔に張り付けておくのは疲れるし。

 それにグラディウス一家に「おめでとう」って言ってもらえたからね。満足すぎる。




 そしてレイも着替え、皆落ち着いたところで、私は予定通り、神の泉に向かうことになった。

 どうやっていくのかだが……レイに抱えられて、となる。

 あれだ……俗に言うお姫様抱っこというやつで、だ。

 凄い軽々と持ち上げられて反論する暇も与えてもらえなかった。

 なんだろう、嬉し恥ずかしい。…………いや、やっぱり恥ずかしい。


 こんな格好で町を走るくらいなら魔法で行った方がいい。

 絶対人に見られるし、恥ずか死ぬ。そう思い抱えられた後、下ろしてもらおうと騒いだ。


 しかしまぁ、押しきられてそのまま進むことになるわけだが、その人にみられるという考えは杞憂に終った。

 ただし……



「うきゃぁぁぁああああーーーーー!!!!」


「あははははっ、そんな騒がなくても大丈夫だよ。落とさないってー」


「落としやがったら一生恨んでやるーー!!

 うぉうっ、いやぁぁあああ゛ーー! Gが! Gがかかってる! ……ぅうぉおおお!」


「あっはっはっ、クレアの反応が超面白いんだけど」



 私を抱えた人外は笑う。

 それは目にも止まらぬスピードで町を走り抜け、ただ一直線に関所に向かう。

 そこを通ればもう誰に止められることもなくただ真っ直ぐに走り抜ける。木が、建物が、岩があろうともすべて飛び越え、一瞬にしてそれらは遠く、小さくなっていく。


 少しでも気を抜けば空中に置き去りにされそうな気がして私は彼の首を締め付ける勢いでしがみつく。

 人外は笑う、ただ楽しそうに走り抜ける。


 それはまさしく懐かしのジェットコースター(しかし安心の安全バーは無い)

 ジェットコースターはどちらかと言えば好きな方だったが、久しぶりのあのフワッとした感覚とスピードに叫び声が止まらない。



 そしてそんなこんなで、家を出てからものの数分後、私達は人里離れた場所にある山の間にある大きな湖に着いた。


 じんが……レイはそこで一度私を下ろし、冷たい水の中に手を入れてチャプチャプと音を鳴らしている。

 なんだか水遊びをしているようで可愛いが、私はそれどころじゃない。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……レ、レイの鬼畜っ、ドS野郎め。いつの間にかそんな奴になったんだ、お母さんそんな子に育てた覚えありませんよっ……!」


「あははっ、ごめんって。クレアの反応が面白くてつい。今なら好きな子苛めたくなる奴の気持ちわかるわー。でもクレアも途中から楽しんでたでしょー?」



 何度も肩で息をしてやっと恨み口を叩いたのにレイの口から出るのは楽しそうな笑い声、くぅっ! 悔しい!


 そうは思いつつも、私は少し気を鎮め、目の前の湖を見る。広がるのはどうみても"泉"というより"湖"。それはこんなところにあるのが不思議なくらい大きいものの、普通の湖と変わらず、神秘的な何かが感じられると言うことも無かった。



「……神の泉ってここなの?」


「いや、もっと向こう。ちょうどこの泉の真ん中くらいに透明な小島があって、その中央にあるのが神の泉。

 行ったらわかると思うけどそこの水だけ虹色に輝いててきれいなんだ」



 ……? 透明な島? 虹色に輝く水……?

 何言ってるの? と思いながらその言葉は飲み込んで、ついでに「じゃあそこまでどうやっていくの?」とも聞いてみる。


 こんな寒い時期に泳ぐとも思えないし船とか?

 しかし周りにそういうものは見当たらない。



「どうって……」



 レイがこれから当たり前のことを言うような雰囲気で振り替り、手についた水をはらう。


 私はじゃあ魔法かな? と思った。私なら魔法を使う。空を飛んだりね? でもレイは魔法にあまり頼らなそうだ。どうせ使うなら最初から私に頼んでるだろうし……

 そう考えて私はふと嫌な予感がした。

 まさか……と思った。

 そして……



「……走るけど?」



 そう当たり前のように言う幼なじみを見て、もう人外確定ーー! と私は心のなかで叫んだ。


 レイがゆっくりとこちらに歩いてくる。しかし私にとってそれはもう悪魔の足音にしか聞こえない。



「よし、じゃあ水龍も入って良いって言ってるから行こっか」


「いつ水龍と話したの!? いや、もうそんなの今はどうでもいい!

 待って、人が水の上走れるわけ無いじゃん、何言ってるの!?」


「さっき俺、水触ってたでしょ? ここの湖の水は全部水龍の意識と繋がっててやろうと思えば水龍と話せるらしいんだ」



 ジリジリと後ろに下がっていく私に対して、あえてなのか私がどうでもいいと言ったことにだけレイは答えを返す。

 そしていつの間にか彼は私の後ろに周り、再び私の体をひょいっと持ち上げた。



「なんで!? 待って、下ろして! 無理むりムリ! 魔法で行く! もう魔法使っていいからっ、レイも連れて行くから!」


「ちょっ、暴れないでよ。大丈夫だって、走れる走れる。

 出した足が沈む前に次の足出せばいいだけでしょ? 行ける行ける」


「まぁ確かにそ……いやいやいや、そうだけどそういう話じゃな……」


「よし、行くよ」


「待って、「行くよ」じゃない! 待って待って、待ってくださいお願いしますっ、まっ…………きゃぁぁぁぁぁあああ!!!」



 そして私はその日……今まですべての人生の中で初めて水の上を走ったのであった。




人間が水の上を走るためには時速何キロで走ればいいんでしょう?

まぁ、何キロにしても水の上を走れる時点で人間離れしてますねー。

あ、ちなみにジェットコースターは最速時速180kmいくやつもあるとかΣ(゜Д゜)


今回のお話も読んでくださりありがとうございました。次回の投稿は2月1日を予定しています!

もう2月になるんですね……2月もよろしくお願いしますm(__)m



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