神の泉
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~クレア視点~
私がなるべく素早く着替え、寝室から出ると、レイが疲れた様子で場所を変えることを提案してきた。
体力お化けのレイを何がそうさせたのか知らないが、異論はないので一緒に中庭まで向かう。
こんな寒い時期に公爵家の中庭を使用する人はいない。しかも今日は荷物(私の誕プレ)が大量に届いているため、そこにいる人もいないだろう。魔法で音を遮断できるとは言っても、何を話しているのか不思議に思われることもあり、人目は少ない方がいいだろうと考え、私たちはそこに向かった。
そして現在私は自分達を中心に2,3mの間の音を遮断し、魔力も有り余っているレイに"ウォーム"という魔法をかけてもらって昨日なぜ倒れていたのかを話していた。
ちなみになぜレイにウォームをかけてもらっているかというと、ご存知かとは思うが、私が火の魔法を召喚魔法? に置換したからである。
しかしレイにこの魔法と役割を聞くまでの私の間抜けさったら無かった。
『"ウォーム"って何?』状態だったのだ。置換したことによって魔方陣や詠唱が思い出せなくなることはわかっていた。しかしそれだけではなく存在自体が思い出せないとは思わなかった。
もう不自由極まりない。不自由にも気づけないだなんでどうしようもない。
……早く魔法を覚えなくてはいけない。……なんか目標が永遠に同じものになりそう。
まぁ、そんなことは置いといて。
魔法がなぜ使えなくなっているのか不思議そうにしているレイには、創造魔法を使うためにはどれかの系統の魔法を犠牲にしなければいけないことと、異世界の友達を呼び寄せるための魔法を創れたかも知れない、という話を重点的に行った。
そして私が魔法を創れたという話を聞くと「じゃあステータスをみてみよう?」というレイの言葉に背を押され、ステータスをレイにも見えるようにして展開する。
神様が一体どんな力を授けてくれたのかドキドキしながらそれをレイと一緒に目を通していった。
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name:クレア・フロワール
job:公爵令嬢 セヴェールの弟子 王宮魔導師
HP:35,101
MP:2,417,091
火魔法(-)
極水魔法(特∇)
大地魔法(上∇) [限界値]
風魔法(上∇) [限界値]
無属性魔法(上∇) [限界値]
極氷魔法(特∇)
錬成魔法(特∇)※下・中・上級をクリアしていません。
聖魔法(中∇) [限界値]
闇魔法(下∇)
従属魔法(下∇)
空間魔法(上∇) [限界値]
創造魔法:リンク∇(錬成魔法・特級に分類します)
称号:水魔法を極めし者
氷魔法を極めし者
譲渡スキル:神の言霊∇
異世界への招待状∇(new)
送迎せし者∇(new)
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異世界への招待状∇
・・・招待された者は招待者のいる世界へと行く権利を得る。
送迎せし者∇
・・・招待状が送られているものを送迎する役目を担う。
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「あ、本当に火魔法が使えなくなってるね。……錬成魔法も。
……うんうん。なるほど? この"送迎せし者"だけで異世界を行き来させられるのか……
パッと見クレアがやりたかったことが出来そうだけどね。……ねぇ、クレア?」
「……」
「クレア?」
異世界への招待状……招待された者は招待者のいる世界へと行く権利を得る。
送迎せし者……招待状が送られているものを送迎する役目を担う。
頭の中でスキルの詳細が何度も流れていく。
レイの声なんて聞いちゃあいなかった。ただ、自分の中で何度も何度も繰り返し呼み、ようやく私はそのスキルを理解した。
そして……
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
それはもう、傍目も気にせず叫んだ。
後に竜の雄叫びのようだったとレイは語った。
その後レイに「まだクレアの友達が来た訳じゃないんだから落ち着いて」と言われ、半ば強制的に落ち着きを取り戻した私は、レイにある相談をした。
一つは今日行われるパーティーを抜け出す方法について。
まぁこれはなんとか出来そうなのだが、問題は次だ。……というのも。
「え? 召喚する場所がない?」
二人をこちらに呼ぶことを"召喚"と言っていいのか悩むところだが、今まで召喚といい続けて来たのでそう呼ばせて貰う。
して問題のそれだが……そう、そうなのだ。二人を召喚する場所がないのだ。実に由々しき問題である。
更に細かく言うと、魔物に襲われないような安全な場所兼、"異世界人"という人物が突然現れても騒ぎにならない場所が無いのだ。
今さらとか言うなかれ、まぁまぁ前に気づいたけど結局どうすればいいかわからなかった問題なのだ。
「城は論外だし、街中の公園とかも誰がくるかわからないし、この家で呼ぶわけにもいかないし……レイの家も無理でしょう?」
「……あぁ、セキュリティに引っ掛かるもんね」
そうなのだ。
城はもちろんのこと恐らく王都にいる貴族の屋敷のほとんどに言えることだか、セキュリティがしっかりしているのだ。
この公爵邸なんて昔私が拐われたせいでその精度は城並かそれ以上。登録者以外が突然現れるだけで厳戒体制に入ると考えられる。
そんな中でも落ち着いて話せる訳がない。
そしてその点から考えると、もちろん城は論外、レイの家も無理。
なにより人を召喚するところを見られてしまったらどう説明しようかと考えるとなかなかいいところか無い。
城下町にある公園とかもダメだろうなぁ、誰が見てるかわからないし……王都はどこも人が多いから……真夜中だったとしても油断できないんだよね。
しかも暴発とかしたらそこがどうなるかわかったもんじゃないし。
しかしそう考えれば考えるほど……
「人目が無くて、何が起こっても大丈夫な場所って言ったら……王都の外が無難じゃない?」
そう、レイが言った通りなのだ。考えれば考えるほど外でやる方がいいのだろうと思えてくるのだ。
「うん。それに一回王都の外に出て、ちゃんと検問通らないとダメでしょ?」
「あぁ、そっか……」
あぁ、また王都の外でやらないといけない理由が増えた……確かにそうだ。
王都にはそれがあるんだった……身分証明書は無くても大丈夫なのが救いだなぁ……でも通るだけ通って、記録に名前を残してもらわないと不法入国ならぬ不法入都になっちゃう。
じゃあやっぱり外で呼ぶかぁ。でもそうなると魔物がなぁ……危ないなぁ。
あ、でも今はレイがいるから見張っててもらったら大丈夫かな?
でも初めてやることに変わりはないし、魔力も使うんだったらリバウンドとか起こったら怖いなぁ……聖魔法が使える人も近くにいた方がいいかな?
でもそうなったらもう師匠に頼むしか……来てくれるかなぁ。
……うーん。面白そうって簡単に着いてきてくれそうだけどなぁ。でも一応あの人筆頭魔導師だし……私情で連れ回す訳にも……
そう私がぐるぐると頭を悩ましているとレレイがある提案をしてきた。
「"神の泉"でやったら? あそこだったら魔物も近づかないし、怪我も治るし、魔法が暴発しても周りに危害も出ないよ?」
と。
「…………ん?」
聞きなれない言葉だった。
神の泉? なんだそれは、なんだ魔物も近づかないし、怪我も治るし、魔法が暴発しても周りに危害も出ないって。有能すぎるだろその泉。行ったことも聞いたことも無いんだけど……
私とレイの間に不思議な沈黙が流れる。
「え、もしかして聞いたこともない?」
そう驚いた表情を浮かべたレイは「えー、結構有名な伝説なんだけどなぁ」と次の瞬間には困ったような顔を浮かべて神の泉について話してくれた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回の投稿は28日(月)の予定です。
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