事件発生(3)
ブクマありがとうございますm(__)m
今回はクレア視点に戻ります。しばらくの間視点がコロコロ変わるかも知れないのでクレア視点の時も~クレア視点~みたいなこと書いときますね!
~クレア視点~
…………どこだここ
目を覚ますと私は草臥れた小屋のようなところの床に手と足をロープで縛られ転がされていた。こんなところに寝転がるなんて初めてだ……砂が頬について気持ちが悪いし痛い。
私はなんとか上体を起こし辺りを見回す。
あ、そういえばメイドさん……は、ここにはいないみたいだ。
辺りを見回しても誰もいないことから余計不安になる。
メイドさんは大丈夫だろうか?
パパさんママさんは?
ガラスが割れる音がして、悲鳴が聞こえた……怪我した人はいない?
私と同じように拐われたひとは?
……少なくとも今は周りに誰もいない。連れ去られた人も私だけと考えるのが妥当?
口にはなにもされてないから大きな声を出すことも出来るけど、周りに助けてくれるひとがいるとは思えない……
…………うーん、
どうしよう。
外では雪が降っている。
今日は12月25日、地球ではクリスマスといわれる日がクレア・フロワールの誕生日だ。
そんな意味で二重にめでたい日(まぁこっちの世界はクリスマスなんてないが)に拉致されるとはなんと不運な……
というか今さらだけど悪役令嬢なのにクリスマスが誕生日とか……
まあそれは置いといて今の状況をどうにかせねば。
ちなみに私を連れ去った人は今ここにはいない。外に見張りはいるのかもしれないが。
ここには火とかも焚かれていない。しかも古い小屋っぽいからすきま風がすごい……というかほぼ外。
雪ちょっと入ってくるし……
このままでは私が凍え死んでしまう……
そんな窮地に立たされて私は今、悩んでいる。
もしかしたら魔法を使えば逃げられるかもしれない……と。
今まで沢山本を読んできたのだから、こういう時使えそうな魔法なら心当たりが沢山ある。でも今までどんな魔法があるのかや、その発動方法を見るだけで実際に発動したことなど一度もない。
でも実は呪文のいらない魔力の基礎の基礎、魔力制御はすでにできるのだ。
本に"体内にながれる魔力を感じとり発動箇所に集める"
としか書いていなかったが失敗しても副作用や危険なことはなかったのでやってみると、以外と簡単に出来たのでそれからは毎日時間があればやっていたのだ。
という事で試してみる価値はあるかも?
もちろん発動しない可能性が一番高い……ただしそれ以上に最悪なことがある。
本に書いてあったのだが、無理やり自分に不相応な魔法を使用すると"リバウンド"という現象が起こることがあるらしい……発動条件は不明……
"リバウンド"は足りない魔力を術者の血肉で補う現象のことで魔法は成功するけど場合によっては死に至る……
だからどんなに優れた魔導師も使ったことのない魔法を使うときは治癒師を近くに付けるのだそう。
でも……今までに記録されているリバウンドの例は中級か上級の魔法の場合。
だからおそらく初級の魔法なら……リバウンドは起こらない……と思う。
魔法が発動しない可能性の方が大いに考えられるけどね
でもそれだけじゃない。もうひとつ問題がある。
初級の魔法の発動方法は知っているのだが、実際どんなものなのか、実際の魔法をみたことがないのだ。
もっと言えば私がどれくらい魔力があるのかも魔法の発動時にどれくらい魔力を注ぐものなのかもわからない。
うーん。
で、でも寒い……
ど、どうしよう……
たしかに暖をとる魔法で"ウォーム"という魔法があったはずだ……
た、ためしにやってみようかなぁ……
でもやっぱり危ないかなぁ……
…………。
………………。
……………………。
……寒い!!
やる!やってやる!
失敗なんて知ったことか!
「た、たしか……"ウォーム"の呪文は……」
私は本に書いてあったことを思い出し唱えようとした、
その時。
私の体から何かがぬけたような少しの倦怠感を感じ、驚いて私は目を瞑った。
その後、特になにもないので恐る恐る目を開けると私の身体をもやが包み込んでいた。
そして何より……あったかい……
……え、もしかして……魔法が発動した?
え、今呪文唱えてないけど……
あ、魔法名は呟いた……
ただ私は本当に呟いただけだったんだけど……
え、詠唱頭に思い浮かべただけで発動した?
…………。
…………これ、すごいことなんじゃない?
試しに隠蔽魔法のひとつ"ミュート"も使ってみるとこれも呪文を頭の中で思い浮かべるだけで発動出来た。
…………。
これはすごい発見だ。転生者補正だろうか?
いやー、正直呪文いちいち言わないといけないの恥ずかしいなぁって思ってたんだよね、長いし。
あ、でも魔法名は言わないといけないらしい。まぁそれくらいなら全然いい。発動までの時間も十分おさえられる。
ちなみに現在かけた"ミュート"は音消しの魔法で、自分がたてる物音を無くすことができるのだ。
本当は自分の身体を隠してくれる"ハイド"とか私の"レプリカ"ができればよかったんだけど、残念ながらそれらは中級以上なので知ってるけど今回は使わない方がいいかな……
さて、これからどうしようか。
とりあえず"ウォーム"をかけてるから今なら外に出ても寒くない……
というか"ウォーム"も"ミュート"も持続系の魔法で少しずつ私の魔力を削っていってるから私の魔力がつきる前にさっさと脱出しないと……
まずはこの手と足を縛ってるロープをどうにかして……
でも脱出したところでどうする?
外に何人見張りがいるかもわからないし途中で見つかったら余計逃げにくくなる……
…………。
……あーっもう!
めんどくさいなぁ、考えるだけ時間の無駄!
さっさと出よう!見つかったら"ファイア"でも何でもぶっぱなしちゃえ!!
きっとパパさんとママさんも心配してる。早く帰ってあげないと……!そこそこ激しい戦闘になったら目印にもなるでしょ!
そう思い私は縄抜けに取りかかった。
……え?どうやって抜けるのかって?
刃物?
ナイナイ。
刃物の代わりになるもの?
ナイナイ。
ふっふっふ……
力業で抜くんだよ!
いや本気で!これはいけるかもしれない!
だって拉致犯がバカなんだもん!
なんで手袋の上からロープ縛ってるの?!
しかもいま着けてる手袋結構分厚いけどっ……
そんな理由で力一杯手を動かし続けて数分、私の手首からロープがとれた。そして足のロープもほどき、私は無事縄脱けを終了した。
お読みいただいてありがとうございます、今後もよろしくお願いしますm(__)m