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疑問


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m


 


 ヴァールハイト領に着き、畑を耕し、道路を整備し、井戸を整備し、ミミズを克服し、畑を耕し、ステルが倒れたことに慌て、呪いについて学び、領内を走り回り、マナー講座を開き、畑を耕し、耕し耕し、マナーやダンスの講座を開き、畑を耕し、耕し、耕し……と気づけばこの領についてから2ヶ月がたっていた。


 やっと先週畑が耕し終わり、現在種まきをスタートしすると、領の皆さんとも協力するようになった。

 ヴァールハイト領の領民は先の疫病で多くが亡くなってしまったものの、疫病が収まった9年ほど前からは少しずつ人口も増えているそうで、5,6歳の子供達が楽しそうに種まきをしているのがとても印象的だった。


 また、神玉を解呪してからというもの、魔物が出てこなくなったことで領の人たちも本来住んでいた場所まで出れるようになり、少しずつ自分達の手で簡単な小屋を建てたりする人も現れだした。

 仕事の合間にその小屋を家を建てるのを手伝ったり、古くなった家々や神殿、男爵邸を手直ししたりしていると、いつの間にかさらに2ヶ月という時が過ぎようとしていた。


 そして季節は初夏、あと半月もすれば梅雨が来るという頃。

 種まきも一通り終え、家々の手直しも目立つところは終えることが出来た私たちは、今日王都へと帰省することとなった。



「長い間邪魔して悪かった。

 作物が無事実って収穫できるいいな、遠くからだけど祈っとくわ」


「そんな、邪魔だなんて……!

 皆様には感謝してもしきれないのです。この心をどう伝えれば良いか!」



 隣でイグネイシスさんと男爵が別れの挨拶を交わしている。

 少し離れたところではベルさんが領民の人たちに。


 そして私はステルに抱きつかれ、何度も感謝言葉を言われていた。


 嬉しいのだが、天気もよく日差しが燦々と照りつけているなか、そして日焼け防止のため長袖を着用している時に抱きつかれているのは中々に暑い。しかしなぜそれをほどかないかと言うと、



「だってもう会えないかも知れないじゃないですか」



 と、そういうことである。

 私はそんなこと一言も言っていないのだが、どうやらステルは私が魔法学院に通わないということは察してしまっているらしい。



「そうなのかなって思ったんです。以前魔法学院のお話をされたときにまるで自分はその場にいないような話し方でしたから」



 そう言って泣かれてしまえば、もうその細腕を無理やり解こうだなんて思えない。



「うん、黙っててごめんね。一応王宮魔導師だから行かなくていいんだよね」


「謝らないでください!

 た、確かに……寂しいです、一緒に学校に通いたかったなって思います……でも、でもそんな時間があったら、きっとクレア様は何人もの人達を助けることができますから……私のそんな小さなわがままを聞いたりしたらダメなんです!」


「いや、そんな買いかぶりすぎ……」


「私、クレア様に会えてよかったです。本当は私王都になんていきたくなかった……知らない土地に一人だなんて耐えられないって……でもクレア様に会って王都に行くのが楽しみになりました。

 私、頑張って学校に通います。折角皆さんがレッスンしてくださったんです。ク、クレア様に会えなくても私……!」



 そんな風に言われて私はとても不思議な気分になる。

 目の前にいるステルは知るよしも無いが、『私は貴方をいじめていたんだよ?』と。


 今回だって最初はただ、死なないために近づいた、ステルに怖がられないように、仲良くなれるように。自分の将来をステルの将来を見据えた選択だった。

 まぁ、かわいいこと仲良くなりたいという欲も無かったことも無く無く無いけども。


 でも、自分の身勝手な理由で仲良くなろうとしたことに違いは無い。

 それなのにこんなに別れを惜しんでくれて、もう会えないかも知れないと泣いてくれるだなんて……



 嬉しいではないか。



 その思いのまま私はステルをぎゅーっと抱き締めて言葉を紡ぐ、「また会えるよ」と。

 耳元でステルが小さく驚きの声をあげるのが聞こえる。



「仕事の合間に学院に遊びに行ってもいいし、ステルが王都に来たら私の誕生パーティーにも招待する。

 仕事の合間に学院に遊びにいくのもいいね」


「え、でも、そんなこと……学院は普段関係者以外立ち入り禁止なのでは……」


「友達に会いに行って何が悪いの?

 私、これでも公爵令嬢だよ? どこへだって行ってやるわ!」


「クレア様……」



 私はゆっくりとステルから身体を離す。

 あー、もう。目の周りが真っ赤……可愛い顔が台無しだ。ステルの頭をポンポンと撫で、袖を伸ばして涙を拭う。



「元気でね」



 そう言って、私は馬車へと乗り込む。馬車にはすでにベルさんとイグネイシスさんが乗っていた。

 どうやら待たせてしまったようだ。

 私が乗り込んだことで、馬車が帰路に着くためにゆっくりと動き出す。


 窓から身を乗り出すとステルが「お元気でー!」と泣きじゃくりながら手を振っていた。

 折角涙を拭ったのに全くもって意味がない。しかし、それを見ながら私も少し目が潤む。


 いい子だった。本当に、友達になれてよかった。会えてよかった。

 心の底からそう思う。


 そして私は思った『あんないいこをどうして私はいじめていたんだろう、……殺そうとしたんだろう』と。

 まだ、思い出すことの出来ない一周目の記憶。数少ない一周目の記憶から感じるゲームのクレアへの違和感。謎は深まるばかりだ。


 あ、そういえば……一周目の私も王宮魔導師になっていたはずなのになんでゲームのクレアは魔法学院にいたんたろう。行かなくてもいいはずなのに。


 私の頭の中に新たな疑問が浮上する。

 しかしこの疑問はすぐ結論に至らせた。一周目の私は学校というところに憧れもあっただろうし、入りたいとお父様にお願いしたのだろう、と。

 学院には婚約者の殿下もいたのだし、友人もいたはずだ、行ってはいけないわけではないのだから、不思議ではない。と、そう深く考えることはしなかった。



次回の投稿は10日しようと思います。よろしくお願いしますm(__)m

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