師匠と弟子
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神玉にかかっていた呪いは丸一日かけてようやく解くことができた。
その後気絶してしまったベルさんとイグネイシスさんは丸2日一度も目を覚ますことなく眠り続けた。
そして二人はようやく目が覚めて、現在ベルさんの部屋にあつまっている。しかし、ベルさんは気持ち悪いのか手で口を覆い、イグネイシスさんは頭痛がするのか頭を押さええている。どうやら二日酔いのような症状が二人を襲っているらしい。
ちなみに丸二日二人が眠り続けていたのも、現在の二日酔いのような症状も魔力回復する魔法(私が二人にかけ続けたやつ)の副作用である。
まぁ、こうなることを私も知っていたので、眠り続ける二人をそんなに心配することもなかった。
しかしなぜ副作用があるとわかっていたのにその魔法を使ったかと言うというと、呪詛というのは特殊で途中で解呪をやめてしまえば呪詛を解こうとしている人、今回で言えばベルさんとイグネイシスさんに呪いが移ってしまうらしいのだ。だから魔力が無くなったからと言って止めるわけにも行かず、副作用があると分かっていながらも魔力を回復させ続けるしかなかったのだが、私も魔力がギリギリだったので後一時間でも解呪が延びてたらヤバかった。
二人にあのどす黒い魔力が移ってもいないし、本当に無事に終わってくれたらしい。二人が無事でよかった。
「久しぶりに魔力回復の魔法なんて使ってもらったわ……
こんなに強い呪いだなんて思わなかったから一時はどうなることかと……」
「頭いてぇ……」
「大丈夫ですか? これ一応お水と、軽食も持ってきたんですけど……」
「ありがとう。そこに置いといてもらってもいい?」
「わかりました」
「俺は今食う、よこせ」
「どうぞ」
水と軽食を二人に渡したところで、本題に入る。
「昨日目が覚めてから領の外側をぐるっと回ってきました。前まで結構魔物が入ってきたのに全然見かけませんでした。やっぱり魔物が領内に入ってきていたのはあの呪いが原因かなって思います」
「そう……」
「あと一応ローボさんに神玉について聞いてみたんですけど呪われているなんて知らなかったって……」
「そうか……まぁ、成人の儀以外で神玉が出ることねぇからな。俺らでも神玉を見るのはこういう問題が起こってるときくらいだし」
ローボさんとはステルの魔法の先生のことである。この領で唯一神玉の異変に気づけたであろう人だ。
二人より早く目が覚めた私は何もしないのも悪いと思ったので、領の外側を見て回り、神殿や神玉は普段ローボさんが魔法で守っていると聞いていたのでもしかしたら異常に気づいていたかもしれないと思って話を聞いてみたのだ。でも魔法をかけた時も神玉と対面はしなかったらしく、用もなく神玉のところまで行くことなんて無いということだった。
「教会の人達は?」
「昨日帰られました」
「そう、クレアちゃんもお疲れ様。あの人達の相手とかもしないといけなかったでしょう?」
「あー……まぁ。でも私が皆さんの前にいくと凄く畏まられてしまって。
教会の方々の方が大変だったかもしれないですよ?」
「俺たちとの扱いの差がひどいな」
そう。教会の人達はベルさん達が寝ている間に帰った。
ベルさん達への当たりは強かったのだが、私へはもう人が違うのかと思うほど柔らかく、何人かには媚びへつらわれた。
それはそれで嫌だったのだが、そんなことを口に出すわけにも行かず、久々に令嬢らしく振る舞った。
「教会の人達は今回のことどう思ってるんでしょうね? 事の重大さをわかってるのかしら?」
「うーん……でも、クリスティナさんを含める数人はベルさん達のこと凄く心配してましたよ。
魔術については私も知らないことばかりなのであまり話せなかったんですけど……」
「そう……早く世代交代してほしいものだわ。
魔術については私たちも知らないことが多いからあまり話すことも無いんだけど……今回のことだけいうなら正直あんなに強い呪いだなんて思わなかったのよね。まるでいくつもの呪いが凝縮されているようだったわ。
術者はこの領に何の恨みがあったのかしら……?」
「さあ? ただ、呪詛自体は何度もかけたら強くなるって聞いたことがある。
呪詛は自分にも返ってくるから一人でやったこととは思えねぇな……」
「魔術が使える人ってそんなにいるんですか?」
「そんなわけないわよ。私は会ったこともないし……知識を持ってるだけでも牢獄行きだって聞いたことがあるわ」
「らしいな。でも魔法の才能とか関係ないからな、取り締まり切れないのが現実だろ」
「私どうやって魔術師が育成されるのかも知らないわ」
その後は昨日聞いたことを詳しく教えてもらったりしたのだが、結局ベルさん達も魔術については知らないことが多く、王都に帰って調べることになった。
誰が、何のために、いつ呪術を使ったのか。その魔術師が今もなお生きていて、これからも同じことが繰り返されてしまうのかどうかすらわからない。
ただわかるのは、誰かが神玉を呪ったということと、神玉の呪いが解けてから魔物がこの領に魔物が入ってこなくなったという事実のみである。
そして二人は本格的に気持ち悪くなってしまったらしく、解散になった。これから二人は爆睡するのであろうと言うことが推測できる。
二人に私も休んでいいと言われてしまったので、私は現在男爵邸の地下にある小さな訓練場に向かっていた。
最初はそんなところに訓練場があることに驚きを隠せなかったのだが、聞いてみればローボさんが、ステルの鍛練のためにわざわざ作ったらしい。まぁ、夜とかも鍛練してるみたいだから危ないもんね。
ただ、そういうことを聞いて思うのはローボさんって結構凄い魔導師だよなぁということだ。多分上級魔法もいくつか使えるんじゃないかな?
そんなことを考えながら訓練場に近づくと、激しい戦闘音が聞こえてきた。
覗いて見ると、ステルとローボさんが模擬戦をしていた。
ステルは倒れてから数日しかたっていないのに元気に働き、昨日から魔法の鍛錬も再開させた。
ステルが楽しそうなので私は止めないが、ベルさんは止めそうだ。しかも目の前で行われている戦闘は結構激しい……
ローボさんの鍛練は魔導師にしてはとても珍しいものなのだ。どこかの誰かさんと同じように実戦で役にたつことに重きを置いていて、どこかの誰かさんと同じように弟子に対して容赦がないのだ。
しかもステルも聖魔法が使える……使えてしまうようで私と同じようにぼこぼこにされている。
あぁ……! かわいい顔に傷がー!
こんな暴力的な鍛錬をする人が師匠以外にいるなんてしらなかった。そしてそれについていく弟子が私以外にいるなんて思わなかった……
確かに効率的なのかもしれないけど、ただの暴力だよね、あれ。弱いものいじめだよね?
日本だったら許されんやつだよ、身体についた傷は直せても心についた傷は直せんのよ!?
……まぁそのステルの心が傷ついてないのがまた問題だとも言えるんだけどね。
投稿遅くなってしまってすみません。
次回の投稿は1月6日(日)の予定です!




