病人は休みましょう、休ませましょう。
ブクマ&評価ありがとうございます!
そして明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたしますm(__)m
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夜、雨雲に月すら隠され、辺りは暗闇に包まれる。
そんな中、ある建物の廊下を一人の男が灯りもつけず歩いていた。月明かりも無く辺りは暗闇、ステンドグラスで作られた窓がガタガタと音を立てている。
しかし男の足取りに迷いは無い。
男がゆっくりと廊下を進み、階段を上がるとそこには大きな扉がある。その中には一つの大きな石があった。
それは通常、領主家にいる魔導師が作った結界によって夜間も守られているが男にとってそれは全く意味をなさない。
男はその石を部屋の中央へと移動させると、長い詠唱を始めた。魔方陣と共に空中に亀裂が走り、そこから痩せ細った一人の少女が現れる。
少女は眠らされているのか何の抵抗もなく石の横へと横たわる。ただ規則正しく胸が上下に動くのみだ。
しばらくするとその部屋にもう一人男性が入ってきた。男が入ってきた扉とはまた別の場所……先ほどまで石がおかれていた場所の後ろ、この国で崇められる神々が象られた石像が壁ごと回転しそこから出てきたのだ。
「そこから来たんですか……」
「私がこんな時間に屋敷から出るのは怪しまれるだろう。
そんなことはどうでもいい、"術"の準備は出来ているんだろう。早くしてくれ」
「まあ、そう焦らないで下さい。今はただ寝ているだけなんでしょう?
にしても驚きですねぇ、今回はいつもと比べて期間が短い、これからどんどん短い期間になっていくんですかね? 今は客人も来ていると言うのに全く……」
「どうでもいいと言っている。
必要なものはいくらでも、何度でも用意する。お前も研究を続けるためには場所がいるんだろう」
「はははっ、そうですね。研究場所を提供してくださっていることはとても感謝していますよ。私の研究は理解者が少ないですからね」
夜はふけていく。
大きな石……神玉と少女を中心として怪しい光が放たれた。
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~クレア視点~
夜が明けた。
しかし私の準備が終わった頃に呼びに来てくれるステルの声が今日は無い。
まだ目が覚めてないのだろうか。
いやまぁ、目が覚めていたとしてここに私を呼びに来たものなら私は「休んでて」と怒るだろうが。
部屋をでていつも通り隣にあるベルさんの部屋にいき、ノックをするが今日は中からベルさんの声がしない。不思議に思ってイグネイシスさんの部屋に行ってみるもそこからも声がない。魔力も感じないのだからいないとみていいだろう。
仕方がないので一人で食堂に行くと二人はすでに朝食を食べていた。どうやら早めに起きて朝食を作っていたらしい。
……それは嬉しいのだが、私にも伝えて欲しい。やっぱり二人には二人の世界があるんだよな、私の場違い感がすごい時あるもん。
と、ちょっと拗ねるのは後にして、ステルはやはり目を覚ましていないらしい。
そして、私も朝食を食べ終わった後、食堂には王宮魔導師組と男爵とクレアの先生が集められていた。
なにやらベルさんから大切な話があるようだ。
重苦しいほどの暗い空気が部屋を埋め尽くし、その暗い空気を放っている張本人であるベルさんが話出そうとした。一体なにを話そうとしているのか。
しかし、「皆に話しておかないといけないことがあるの……」とそこまで言った時、人払いしたはずなのだかドアがノックされた。
一体誰だろうと思っていると、ステルが恥ずかしそうに顔を覗かした。その後はもうてんやわんや、男爵は起きて来たステルに走りよって涙を流すわ、話があると集めたベルさんも脈拍? とかを図ったりと忙しく動く。かく言う私もステルのところに行ってわちゃわちゃ。もうベルさんの話どころでは無い。
後でなんだったのか聞いたが、「なんでもないわ~」と笑って誤魔化された。いつもはベルさんがイグネイシスさんを呆れた目で見ていることが多いのだが、その時はイグネイシスさんがじとーっとした目でベルさんを見ていてなんだか不思議な感じだった。
ただ、ステルが元気そうだったので私も安心して仕事が出来る。
ベルさんたちはステルにしばらくは休んでいるように言い聞かせ、今日は1日ぶりに畑を耕しに行った。
そして忙しいことにその日の夕方に教会の人たちが来た。待ちに待っ……というわけでも私たちは無いが、領としては待ちに待った人達だろう。
そうなのだが、なにせ人数が多かった。祈りを捧げる巫女さん? みたいな人はまぁいいとして、そのお付きの人とか全員会わせて20人くらい……
夕食などは、私たちも手伝うことになったのでいいとして、なぜ食料が足りんと言われている領にそんなに大人数で来るのか……しかも食料とか全然持ってなかったんだよねこれが。
イグネイシスさんは隠すことなくイライラをぶつけるしイグネイシスさん以外には温厚なベルさんからも怒りが滲み出ていた。
ただ、来ちゃったものも、持ってなかったものも今さら言ったってどうしようもないし、食料などは途中飢えている人にあげたのだとかと言われたら怒るにも怒れない。
ヴァールハイト領は食料不足ではあるものの餓死者が出ている訳ではないし、今回私が大量に持ってきているということもあるし。ただイグネイシスさんが言うには食事はあの人達用にちょっと豪華……というか最低でも普通の食事? いわゆる主食・主菜・副菜・汁物が揃っている食事を出さないと、後から礼儀やらなんやらと後からグチグチ言われるらしい。
ハイ、フザケンナー。
……まぁまぁ、落ち着け私。
どうやら教会の皆さんはお祈りだけ終わったら帰ってくれるらしい。とりあえず今日はもう夜になるので1日は我慢するとして、明日中にお祈りをしてくれれば後は私たち魔導師の仕事。
それに実際にお祈りをする巫女さん……? みたいな人は普通にいい人だった。
領民と話してみた時に知ったことなどを伝えながら、今日中に打ち合わせをする。
イグネイシスさんは教会の人に対してさっさと帰って欲しいと思っているだろうし、ベルさんも正直そう思っているだろう。私もなのだが……で、教会の人は教会の人で早く帰りたいと思っている人が多いことがなんとなく伝わってくる。
ということで、その……儀式? は明日の早朝からすることになった。
そして夜明け前、まだ辺りは暗いのだが朝食は作らないといけないため、少し気を抜いたら落ちてくるまぶたをなんとか見開き、ベッドから起き上がる。
朝食を作ると言っても私は料理をあまりしたことがない。……ないな。家庭科もずっと皿洗いしてたし。
ということで、主な調理担当はイグネイシスさん。その補助をベルさんが、そして私たちと一緒に来ていた騎士さんたちはパンを捏ねまくり、私とベルさんは材料の皮を剥きまくるという役割で食事を作っていた。
出来上がった料理をみるとどうしても驚きを隠せない。私たちの料理はほとんどいつも通りなのだが、教会の皆さんの食事は公爵家で出てもおかしく無いようなものだった。もちろん特殊な食材は使っていないのだが。
今さらだが、このメンバーの中で一番料理技術が高いのは断トツのイグネイシスさんである。
さすがもと従者……いや、従者は料理を作る人ではないはず。なのだがなぜこんなに料理技術が高いのか。
私はイグネイシスさんが何気に何でもできるということに驚きをかくせないのだが……教会の皆さん知らないだろうなぁ、この料理イグネイシスさんが作ったって。
……私もちょっとは料理作れるようにならないとな。……切り刻むだけだったらできると思うんだけど。
出番の無い騎士さん達、忘れないで上げてくださいね(笑)
今回は投稿遅くなってしまいまして申し訳ありません。次回の投稿は1月2日にする予定です!




