事件発生 (2)
ブクマありがとうございますm(__)m
「事件発生」がしばらくの間続きます。
あ、今回はクレアのお父さん、アルバート視点でお送りします。
~クレア父~
会場が何者かに襲われた……
怪我人数名
死者0名
行方不明者……1名
行方不明になったのは……私の娘……
最後に一緒にいたメイドはトイレから会場に向かう道の途中で倒れていた。
娘をトイレにつれて行ったその帰りに襲われたそうだ。
なぜわざわざ人が多くいるパーティー会場なんかを……しかも私の娘を拐うとは……
「……今日はクレアの誕生日だぞ、何でこんな日に、なぜっ……」
守ることが出来なかった。
何が公爵だ、権力など何の意味も持たぬ
何が父だっ、娘ひとり守れぬくせに
私は娘がいなくなったとわかったあと、すぐに城に連絡し警備隊に娘の捜索を依頼した。メイドが魔法によって眠らされていたことから相手は魔導師だと考えられる。
しかも拐われたのは公爵家の一人娘、国の総力を挙げての捜索だ。
すぐに見つかるはずだ、そう思っていた。
しかし、もう会場が襲撃されてからすでに3時間が経過した。
今は雪が降っている。怖くて寒い思いをしているに違いない……
はやく見つけてあげなければ、はやく……はやくっ。
そんな時、部屋にノックの音が響いた。
見つかったか!?
「入れ!」
「公爵様……!」
「……娘は!?」
「……っ」
なんだ、どうしたと言うのだ。
入ってきた兵士はなにか口を開けたり閉めたりしている。
「早く申さぬか!」
「……っ、…………た、大変申し上げにくいのですが、近年まれにみる積雪量でっ……
こ、これ以上の捜索は、き、危険と、判断致します……っ」
目の前が真っ暗になるような衝撃だった。
------
そしてクレアの捜索は打ち止めとなった。
娘ひとりのために隊員達の命を危険にさらすことは出来ない……という"公爵"としての考えだ。
しかし父としては、娘の命以上に大切なものなどない、それこそ私の命よりも大切なのだ。それに私には魔法がある。雪が降っていようと相手が少々強かろうとなんとかなるはずだ。
そう考えて私は簡単に準備をし出立しようとしたのだが、その前に使用人や部下に止められてしまった。
「旦那様お待ち下さいっ……」
「雪中では何が起こるが予想がつきません……! いくら旦那様でも危のうございます」
「公爵様お考え直しください! 拉致したということはなにか目的があるのでしょう今すぐ殺されるようなことはありません」
「その通りです。お嬢様はきっと無事てすのでせめて雪がやむのを……いえ、夜が明けるのをお待ちくださいませ!」
「殺されることはない?
お前たちはなにを根拠にそんなことを言っているのだ……少なくとも今あのこの命は敵が握っているのだぞ!」
……やはりこうしてはいられない。今すぐにでも出立してクレアを探さねば……
今すぐにでも外に出ようとする私の目の前に小柄ななにか……
……妻が飛び出してきた。
「なりません、旦那様っ」
リリアナ!?
なぜこんなところに……リリアナはクレアが拐われたと聞いて驚きと恐怖で気を失ってしまっていたはず……
しかし今はそれよりも……
「なぜだ!お前はクレアのことが心配ではないのか!?」
口に出してからしまったと思った。
そんなわけがない。
目の前には目一杯に涙を溜めた妻の姿があった。
「そんなわけないでしょう!!
今までっ……今までずっとっ、毎日っあの子の成長をみてきたんです!」
「ではなぜ……」
なぜ行かせてくれない?
クレアが心配なら今すぐにでも探してあげないとっ……
「それは……あなた様が公爵閣下であられるからです……
いつもの、威厳はどうしたのですか?旦那様……あなたはおっしゃっていたはずです"公爵たるものどんなときでも毅然としているべきだ"と、今がその時でございます。
公爵閣下、
あなたは……どんなことがあろうとも王族のひとりなのです。娘を助けるためとは言え、自ら命を落とすかも知れぬところへしかもひとりで向かわれるなんて、言語道断でございます!」
「……っ」
私はその場に膝から崩れ落ちた。
「クーは、クーはきっと無事です。
私たちの子供ですもの」
そういってリリアナは私の手を握った。その手は冷たく、震えていて……
心配なのは、不安なのは私だけではないのだ。みんな本当は探しに行きたい。
もっと自分に力があれば、地位のようなしがらみなんてなければ今すぐにでも探しにいくのに……!
あぁ、クレア……
どうか、どうか無事でいてくれっ
今後もよろしくお願いいたします。