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初仕事初日


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m

誤字報告も助かりました! 

 


 そして一夜があけた。


 差し込む朝日に二度寝したい思いをなんとか抑え、身なりを整えはじめる。

 しかしこのウェーブのかかった長い髪が……なかなかきれいにとけないのだ。家のメイドさんたちがやったらすぐにできるのになぜ。

 引きちぎってやりたい思いを抱きながらなんとか身だしなみを整えると、タイミングよく部屋の扉が叩かれる。



「し、失礼いたしますクレア様!

 起きていらっしゃいますか?」



 そして聞こえてきたのはステルの声。

 私は急いで扉へとかけより扉を開ける。



「はーい!

 起きてるよ、ちょっと待ってねー。

 ……どうしたのー?」



 扉を開けると予想通り、ステルがたっていた。

 理由を聞いたところ、朝食が出来たので呼びに来てくれたらしい。


 ベルさんたちを呼んでから行くと伝えて、私はベルさんが泊まっている部屋へと向かう。


 旅中にわかったのだが二人は幼なじみなのだそう。

 毎日喧嘩はしているのだが、付き合いが長いからなのかなんなのかお互いがお互いのことをよく理解している。


 私はベルさんの寝室の扉を叩く。

 そして扉が開き……



「……あぁガキか、なんだ?」



 中からイグネイシスさんが出てきた。

 ……もう一度言うが、ここはベルさんの寝室である。もちろんイグネイシスさんとは別の部屋だ。


 なぜこの部屋に……なんて驚かない。私は出てきたイグネイシスさんに朝食だと伝え、中に入れてもらった。


 イグネイシスさんがなぜベルさんの部屋にいるのか説明しよう。お、ふたりが恋人で『まさか昨日……』とかそういうことじゃない。


 そうではなくてただ……



「あらぁ~、クレアちゃんおはよぉ~Zzz……」


「おい、着替える途中で寝んな!」



 部屋に入ると、洋服をかかえたまま床に座り込み今にも寝そうなベルさんがいた。

 入って来た私には気づいてくれたようで挨拶だけはしてくれたのだが、その次の瞬間にはガックンと夢の世界に旅立ちそうだった。


 そう、なんとベルさん。寝起きが超絶悪いのである。

 どれくらいかというと、大声で呼んでも、大きく揺さぶっても、ベッドから落としても寝続けるほど。

 正確には一瞬目を開けるが次の瞬間には目を閉じて夢の世界に旅立つのだ。


 しかしコツがあるのか、イグネイシスさんだと揺さぶるだけで動き出す。

 夜営していたときは何も感じなかったのだが、一週間前にベルさんと同じ部屋になったときにベルさんを起こ(そうと)してみて思った。

『これは無理だ』と。


 しかも起こしたとしても覚醒するまでに相当な時間がかかり、待っていると準備に相当時間外かかってしまう。


 なので……



「ベル、さっさと着替えろ。

 ……よし、髪とかすから座れ。おい、寝んな。……はい次、化粧」



 凄まじい勢いでダラー……っとなっていたベルさんが、いつものしっかりしているベルさんになっていく。……見た目だけは。


 そう、ベルさんはいつもイグネイシスさんに起こしされた後、そこから一式の準備を手伝ってもらっているのだ。

 というか着替え以外はすべてイグネイシスさんである。その着替えも本当に起きないときや時間が無いときは手伝っているんだとか。


 ただ、ベルさんにとってこの時間は半分……いや8割方眠っている時間のようで、あとからこの時間のことを聞いても何も覚えていない。

 イグネイシスさんはベルさんの準備がすべて終わると、ベルさんが完全に覚醒するまでの間に一旦部屋を出て、何事も無かったかのように後程呼びにくる。

 イグネイシスさんなりの優しさなのかはわからないが、イグネイシスさんがそうしていることもあり、ベルさんは朝の準備は寝ぼけながらも自分がしていると思っている。


 完璧そうな人でも欠点はあるんだなぁと思った。



 ……その後一度退出し、覚醒したベルさんとイグネイシスさんを呼びに行き、昨日夕飯を食べた食堂に向かった。

 昨日のメニューに小さなパンがついていたのだが、なんとこのパンはステルが焼いたらしい。

 来るのが遅くなってしまったが、パンはまだ温かく、サクサクとしていておいしかった。きっと朝早くから起きて作ったのだろう。

 ステル達は質素で申し訳ないと言っていたけれど、作ってくれるだけでありがたい。



「ではヴァールハイト卿、昨日お話したけれど、今日から領内の畑を耕していこうと思うのだけど、その前に領内の皆さんとお話をしてみたいの。人は集まりそう?」


「はい、昨日中に皆に伝えておきました。今すぐがよければ広場に集めましょう」


「お願いするわ」



 完全に覚醒したベルさんはとても頼もしい。

 そしてそんな話をしてから約30分たった頃には広場にはたくさんの人が集まっており、ベルさんがその人たちに私達がなぜ送り込まれたのか、これからどうしていく予定かを説明してくれた。


 大まかな説明が終わると領民全員と……ということは出来ないが、何人かに直接話を聞いて、領が、住民がどういう状況なのかを調べていく。


 ヴァールハイト領の人口は10年前の疫病等によって半分になってしまったらしい。

 長年放置されてしまった畑を耕すほどの人力はない。


 しかも……



「え? 畑のところまで魔物が出てくるんですか?」



 この話を聞いたとき、正直信じられなかった。ベルさんたちもそんな様子だった。


 確かに魔物が領内に入ってくることはある。その理由としては神殿にある神玉にひびや傷が出来たことが考えられる。

 しかしそれくらいだったら効力が弱まったとしても数十メートルほど。

 ヴァールハイト領は畑がある場所からさらに山2つ分くらいを領地としている。なので直線距離だとしても優に一,二百メートルはあるだろう。

 それなのに、畑まで魔物が出てきているとなれば神玉はひびや傷なんてレベルではなく。素人が一目見ただけでもわかるほど壊れているだろう。しかし……



「ステルちゃんは神玉に傷は見当たら無かったと言っていたわよね」


「さっき神官の方にも聞いてみたんですが、やっぱり傷なんて無いって……」



 そう、神玉に傷なんてないらしいのだ。



 神玉は基本月に一度しか持ち出されない。持ち出されるのは月末の成人の儀の際だけ。しかもだれが作ったのか知らないが持ち出せるのは神職者だけという決まりがある。

 持ち出せない理由は神様が力をためているためだとかなんとかと言われているが、緊急時には許される。それこそ神玉が壊れたときとか。


 しかし月末でもない今現在。私たちは神玉を持ち出して壊れているか確かめることは出来ない。

 ただ、傷があるかどうかは見なくとも確かめるだけならば、見たひとに聞いてみればいい。


 私たちははまず最初に、成人の儀を終わらせたステルに聞いてみた。

 そして返ってきたのは先ほどもいった通り、「そんなものは無かった」と言う回答。ただ、ステルが神玉を見たのは少しの間だけだし気づかなかったとしても仕方がない。

 しかし、だ。ヴァールハイト領の神殿の管理を勤める神官が傷に気づかないはずがない。



「なんでそんなことになっているのかしら……

 でもこれ以上の判断は直接神玉を見てみないことには分からないわ。教会の人が来てから少し話してみましょう。

 私たちは私たちにできることをやらないと」




次回の投稿は27(木)の予定です!

よろしくお願いいたしますm(__)m

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