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今日も引き続きベルさん視点です。ご注意ください!
~ベル視点~
でもね、私が知らないイグは相当頑張っていたみたいなのよ。
高等部では普通、お金持ちで家庭教師をつけていた人達の方が魔法の勉強が進んでるから中等部に通っていた人たちとは別々になるのに、イグは貴族ばかりの上位成績者のクラスに入ってたからね。
あ、突然だけど、みんなは"天才"って聞くとどんな人を思い浮かべるかしら。
魔法の天才でいうと、王都ではアルベルトさんが有名ね。今ではクレアちゃんも天才って言われてるわ。
確かにどちらもすごいわよね、子供の頃からずっと魔法の鍛練をしてきたんでしょう?
そして誰よりも早く王宮魔導師になっている。
すごいと思うわ。天才だと思う。
でも私の中での"天才"ってね……
イグなの。
もちろん、才能だけじゃなくてイグが頑張ったからっていう要素が強いんだけど……
知ってる? 王宮魔導師になってる人ってイグ以外の全員が成人の儀よりも前から魔法の師をつけてもらってるのよ。
魔法学院の中等部に通ったのはイグだけ。
誰よりも遅く魔法について学びだしたのに、王宮魔導師まで上り詰めたの、過去にもそういう人っていなかったんですって。
年を重ねるほど魔力操作を会得するのに時間がかかるって言われてるからね。
イグが王宮魔導師になったのは20歳の時、基本魔法すべての上級を使えるようになったことで王宮魔導師に任命されたわ。
みんなのいう"天才"とは違うかもしれないけど、それでも私はイグを天才だと思ってる。
自慢の幼なじみ。
王宮魔導師になって従者でなくなってもずっとそれは変わらない。
ただ、バカは天才と紙一重っていう言葉を聞いたことないかしら?
本当にその通り。イグは天才なのよ。
実はイグって王宮魔導師になったばかりの頃、基本魔法の下級、中級でも使えない魔法がたくさんあったの。
え? それがどうしたって?
どうしたもこうしたもないわ。
本来ならそんなことあり得ないのよ。
魔法を覚える道のりっていうのは大体決まっているわ。
一言で"下級"とかっていってるけど、下級は下級でも、そのなかにも難易度が高い魔法と低い魔法があるの。
例えば私が得意な聖魔法の下級には、痛みを軽減する魔法と、かすり傷を治す魔法とかがあるわ。
さて、この2つ。同じレベルだと思う? そんなわけない、かすり傷だろうと傷を治すことができる後者の魔法の方が、高度だし、魔力も使うわ。
こんな風に一言で下級とかっていっても、色々レベルがあるわけよ。
で、私たち魔導師はそれをある程度順序よく学んでいくの。これはなにもその魔導師の強さを分かりやすくするため、とかそういう理由じゃなく、身体を高度な魔法を使うことに慣らしていくためよ。
リバウンドっていうのは知ってるわよね。自身の血肉が魔力に変換される現象。
順序よく魔法を学んでいかずに無理やり高度な魔法を使おうとするとリバウンドに似た現象が起こるの。"ブレーク"……と呼ばれているんだけど、原因としては身体が高度な魔法を発動すること慣れていないからだと言われているわ。
魔力の暴発により、身体が大きく損傷するの。
その状態はなんとも悲惨よ。
ええ、悲惨だったわ。私はその現象を目の当たりにしたことがある。
イグがそれを起こす瞬間を、溢れ出す血飛沫をこの目で、弱くなっていく脈を冷たくなっていく手を私はこの身体で感じたわ。
イグはそれまでに使ったこともない火属性の上級を……中級すら使ったことがなかったのにいきなり使ったの。
魔法は発動したわ。発動してしまった。
魔力は足りてからリバウンドは起きなかった。
でもその魔法に身体は慣れていなかった。
死んでしまうと思ったわ。
『バカなの!?』と怒りたくても怒れなくて、初めて目の当たりにする死への恐怖にただただ震えるしかなかった。
結局そのときは助けに来てくれた人のなかに聖魔導師がいてなんとかなったんだけど……
それからね、私があいつを監視するようになったの。
監視よ、監視。放っておくとなにするかわかったもんじゃないから監視してるの。
だって、イグったらそれまでにもそういう方法で魔法を習得して来たみたい。
ちなみにリバウンドを引き起こした回数も一度や二度じゃないって言ってたわ。
命を落とすかもしれないほどになったのは私が見た一回きりらしいけどなんでそんなに急いで高度な魔法を習得する必要があったのか謎なのよね……
きっとイグなら、そんな危ないことをしなくても上級まで学べたでしょうに。
でも、その出来事があったから私は聖魔法をもっと早く伸ばしたいと思ったわ。
ただ、私が基本魔法を放置して聖魔法に専念し始めたらイグまで、聖魔法の魔法の書を読むようになって驚いたわ。
結局イグは聖魔法の中級までしか覚えれなかったんだけど、私が診療を開くって言ったら、もう王宮魔導師として働いてるくせに手伝うっていうし……暇だったのかしら? もしかしたら従者としての感覚が残ってるのかもしれないわね。
まぁ、それからは特に大きな変化もなく……あ、5年前に私が王宮魔導師になってからは一緒に遠征に行くことも多くなったけど、それでもず――っと一緒にいることに代わりは無いわね。
なんだかんだであいつも私と離れるのが寂しいんじゃない?
あ、私がこんなこと言ってたってイグには内緒よ、思いっきり否定されるのが目に浮かぶわ。
「さて、クレアちゃん!
長い間話しちゃっただけあって私たちのことはなんとなくわかったかしら?
明日も朝は早いわよ! 早く寝ましょう」
長い間興味深そうに話を聞いてくれていたクレアちゃんをベットに押し込む。
なんだかまだまだ聞きたそうだけど、本当に明日も早いから早く寝ちゃいましょう!
せっかくのふかふかベットが勿体ないわ。
クレアちゃんも私の話にまだまだ興味こそあれ、やはり疲れていたのか、幾分もしないうちに寝息が聞こえて来た。
あ、そういえば。
「イグがなんでクレアちゃんのこと『ガキ』って呼ぶのか教えてあげたらよかったかしら?
うーん。いや、クレアちゃんには言わない方がいいわね。ばれたら怒られるわ」
イグに。
つい先日、気になったから聞いてみたのだ。
クレアちゃんはもう成人の儀も終わってるし、実戦に出しても問題ないくらいしっかりしているのにどうして? と。
『成人の儀が終わっていようが、強かろうが、しっかりしてようがガキはガキなんだよ。
あれくらいの年頃の奴はよっぽどの理由がない限り、誰かの保護下にいるのが普通だろうが!
魔法の才能があるっつって親から引き剥がされた奴でも、王都に来たら教師が守ってくれるんだぞ!』
結構まともなこと言われて逆に笑っちゃったわ。
でもせめてもうちょっと別の言い方無いかしら。
お子ちゃま? お嬢ちゃん?
……うーん。どっちも変ね。難しいわ。
でもやっぱり根はいい奴なのよねー、イグって。
『……っ、ベルどけ!!』
『えっ……』
『……っ、くそ! 使うとしてももうちょい慣らしてからって思ってたんだけどな……!
ベル! 俺が死んでも文句いうなよ!
……"古より蘇りし炎よ、太古より伝わりし神へと繋がる道しるべよ、その業火にて万物を焼き払え" ……"業華炎帝"!』
……ほんと、根はいい奴なのよ。良すぎるくらい。
正義感もあって、優しくて。
……バカなくせに。
その口調と同じくらい悪い奴だったら……あいつの事しか考えられなくなるこの無駄な時間をもっと有効的に使うのに。
次回の投稿は12月17日(月)を予定しております。
時間は早ければ18時頃……頑張ります!




