騒がしい
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「おいっしぃーー」
うまぁぁぁあい!
さすがお城の料理だね、美味!
盛大にお腹がなってしまった私は料理を皿に盛り、周りのどんちゃん騒ぎも無視して黙々と料理を食べていた。
もう時刻は昼。本気でお腹がすいていたのか、口に運んだ料理が美味し過ぎて無心でパクパクと食べ続ける。
そこに公爵令嬢としての気品は無い。
というか最初はちゃんと令嬢らしくしようと思ったのだ。
でも周りはどんちゃん騒ぎ、喧嘩でも起こってるのか時々魔法が飛んでくる。
……そんな中でも令嬢らしく振る舞う必要があるのか、と。
ベルさんは今ヴァールハイト領へ行くもう一人を呼びに行ってくれている。
ただ向かった先が現在どんちゃん騒ぎ真っ只中の場所なのでちょっと心配。
といっても、ベルさんも王宮魔導師、いらない心配なのだろうと、黙々と料理を食べ続ける。
「クレア」
黙々と食べていると、後ろからよく知った声が私を呼んだ。
「お父様!」
「騒がしいだろう。料理は食べれて……いるな」
食べてます、食べてます。
もうせっかくの機会なので食べれるだけ食べさせていただきますとも。
「お父様、このローストビーフなんて最高ですよ」
「そうか」
私は絶品中の絶品だと思ったローストビーフをお皿に取ってお父様に渡す。
というか私の心配より、お父様の心配をした方がいい。
絶対料理も食べれてなければお酒も飲んでない。
苦労しますねぇ、真面目な人は。
「驚いたか?
王宮魔導師と聞くと、ずいぶんと大層なものに聞こえるからな。
想像とだいぶ違っただろう」
「そうですねぇ……でもまだ皆さんと全然話せていませんから……
先ほどベルさんとお話させていただいたんですけど、やっぱりすごい人なんだろうなって思いました」
「クラーレか、そうだな。あいつがクレアの側にいてくれるなら、私も少しは安心できる……」
クラーレ? あ、ベルさんのファミリーネームかな。
「お父様は私がこの仕事を受けるって知ってたんですね……」
「あぁ、しかし王宮魔導師の仕事というのは陛下から直々に、というのが普通だ。
しかも初仕事だからな私から伝えるわけにも行かず……驚いただろう」
「うん……なんだかいきなり大仕事? ですね」
「そうだな……しかもヴァールハイト領は随分と遠いところにある。
やはり今からでも……」
「お父様」
私はお父様が言おうとした言葉を遮る。
きっと『今からでも誰かに変わってもらおう』とでも言おうとしたのだろう。
それは私を心配してこその言葉、王都を出たこともない。魔物と戦ったこともない、親元を離れたことも無い私を。
でもいつかそういう日が来るのだ。確かにお父様たちから離れるって言うのはとても不安だけど、精神的には私はもういい大人。
今さら未知の世界にはビクビクなんてしていられない。
それに……
「私、実はちょっとワクワクしてるんです!」
初めての外!
ちょっと怖いけど魔物!
そんなところを旅するなんてまさしくファンタジー!
これをワクワクせずにいられようか!
その初めてを、お父様やお母様と一緒に経験出来ないのは残念だけど。
「精一杯頑張ってきますね!」
記念すべき私の初仕事。
どちらかというと楽しみの方が大きかったりするのだ。
「……そうか」
お父様が小さくそう呟くと同時に、どんちゃん騒ぎが起こっている方向から"ガシャーーンッ"と大きな音が鳴り響いた。
向こうはお父様がいなくなったことで止める人がおらず、さらに激しいものとなっている様子。
「お父様……」
早くいかないと、きっと城がこわれてしまう。
そう思ってお父様をみると、お父様は『はぁ……』と大きなため息をついてそちらに向かった。
……ベルさんは大丈夫だろうか。
お父様がそちらに向かってしばらくは、騒がしさが続いた。私はその騒がしさを尻目にお手洗いへと向かった。
しかし数分後。お手洗いから帰って来た私が見たのは応接間にそびえる大きな氷の塊だった……
一体なにが。
「あら、クレアちゃん。
探したわー。どこ行ってたの?」
部屋に入り、目の前の光景に固まっていると向かいからベルさんが歩いてきた。
どうやらベルさんは無事な様子……
その手に引きずられている男性が気になるけども。
「ちょっとお手洗いに……
あの、これは一体」
「アルベルトさんよ。もう言葉だけじゃあ収集がつかなくなっちゃって。
アルベルトさんは今向こうでどんちゃん騒ぎの筆頭をしてたセヴェール様をお説教中よー」
王宮魔導師の筆頭はどんちゃん騒ぎの筆頭でもあったのか……
いや、でも、確かに騒がしかったけどさすがにこれはやりすぎでわ……
「いつものことだから気にしなくていいわよ。
むしろこの氷がお開きの合図だわ。バカどもはさっさと帰らせましょう。
あとこれ、今度一緒にヴァールハイト領に行くイグネイシス・ハイレン。
ほら、イグ! いつまで寝てるのみっともない!」
ベルさんは手に持っていた男の人をズルルッっと引き寄せ。
そしてその頭を叩くきれいな"スパーンッ"という音が鳴り響いた。
引きずられて来た彼は、眠って? 気絶して? いるようで、スパーンッと叩かれても起きなかった、なので結局水魔法で出した水をバシャッとかけられて目を覚ました。
「改めて、今度一緒にヴァールハイト領まで行くイグネイシス・ハイレンよ」
「よ、よろしくお願いし……」
「チッ、今度の仕事はガキの子守りかよ」
私の挨拶はそんな言葉に遮られてしまった。
……ガキとな。
いや、ガキだけど、子守りされるほど子供じゃない。
ちょっとイラッとしつつもガキはガキ。一応すみませんとでも言っておこうかと口を開こうとしたのだが。
「あんたみたいなアホ猿の世話を押し付けられるよりよっぽどましだわ」
今度はベルさんのそんな言葉に遮られてしまった。
「あ゛ぁ!?」
もちろんそんなことを言われたイグネイシスさんは怒る。
その額には青筋が。
「もっぺん言ってみろ!」
「なんたみたいなアホ猿の世話よりましって言ったのよ。
あぁ、いいえ、比べるのもおこがましいわ。むしろあなたの方がお世話される方なんじゃない?
お猿さん?」
「俺のどこがアホ猿だ!」
「頭が足りないって言ってるのよ。いっつもいっつも考えなしで突っ込んでいくあなたを止める私の身にもなってちょうだい!
猿の方がよっぽど考えて動いてくれるわ!」
「てめぇが勝手にやってることだろうが!
こっちは一切頼んでねぇんだよ、ババァ!」
「ババァ!? あなたと私同い年じゃない! 私がババァならあなたはジジイよジジイ!」
えぇー、いきなり喧嘩が始まってしまった。しかもすでに私関係ないし……
こんなチンピラみたいな魔導師もいるんだなぁ。
ベルさんそんな怒り方するんだなぁなんて思いながら、私は二人の喧嘩を眺めるばかりだった。
氷魔法の説明!
氷魔法・下級→冷気を出す、氷を出すなど。(整形も可能)
氷魔法・中級、上級→氷や冷気による攻撃、防御。上級の方が威力や固さ、範囲が広くなる。
氷魔法・特級→永遠の氷(なにやっても溶けない、壊れない)
現在この国で氷魔法特級を使えるのはクレアとアルベルトのみ。




