任命式の後で
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場所は変わって応接間。
あの後任命式は終わり、私は流されるままにここに来た。
応接間には立食形式で準備された、美味しそうなお菓子や飲み物。そして料理とお酒……
と、まだお昼にもちょっと早いくらいの時間なのにも関わらずちょっとしたパーティーが開けそうなほどの準備がされていた。
というかこれもパーティーといえばパーティー。
なんでも任命式が終わった後は王宮魔術師たちで、こんな感じの宴会を開いているらしい。
まぁ、一応名目は歓迎会なのだが、もう一応主役であるはずの私をほっといてどんちゃん騒ぎ。もうすでに何人か出来上がっている。
現在私はジュースをもって壁の花。
お父様は王宮魔術師の中でも真面目……というかストッパー役なのか、公爵とかという地位など関係なく、あっちにタッタ、こっちにタッタ、とても忙しそうだ。
ちなみに師匠はどんちゃん騒ぎ勢。
『飲め飲めー、タダ酒じゃー!』とか叫んでいる。
あれ、ここってお城のなかだよね。いいのかこんなに騒いで、陛下ー、宰相さーーん……誰でもいいのでお父様を手伝ってあげてくださいー。私はあの場に入っていく勇気がないですー。
この世界では成人もしたんだし私もおお酒飲んでもいいのかもしれないけど、やっぱり抵抗があるし。あぁ、早く帰りたい……と少しうつむいていると、大きく入ったスリットから見える、細く真っ白な生足がこちらに向かって来ているのがわかった。
「こーんにちは」
こんな中でも話しかけてくれる人がいるのかと、少し喜びを感じながら、そちらをむいて固まった。
とても艶めかしい声を発したその人はその声に似合ったとてもグラマーなお姉さま。
向いた瞬間、目線的にも、ドーンッと大きなお胸の谷間が目にはいり、 『わーー!!』と思って顔を見たらお酒のせいかほんのりと赤くなった頬ととろんとした目がなんとも扇情的で同性であるはずなのにドキドキする……!
しかし、目線をそらそうと下を向いても大きなスリットから覗く生足。
え、サキュバスかなにかですか!?
なんというけしからんお姿!(そういう型のドレスを来てるだけ)
「え、あ……えあっ……」
ついつい、しどろもどろな意味の無い言葉が口からでる。
すると、
「やーん。やっぱりクレアちゃんかーわいぃわぁ~」
そう言ってお姉さまは私をギューッと抱き寄せた。
そしてそのまま私の顔はお姉さまの大きな谷間にin……
みゃーー!!!
脳内パニック、でもグッジョブ神様仏様お胸様ー!!
なんだこの幸せ、この夢いっぱいなクッションは!
うらやま!
しかし、息はできない……!
「むむーっ、むーむーー!!」
私は行き場を失っていた手をバタバタさせ、命の危機を訴える。
「あらー、ごめんなさーい。
かわいくってついー
大丈夫ー?」
「ぷはっ……!
だ、大丈夫です」
素晴らしいものをお持ちで!
「いきなりごめんねー。私ベルって言うのー、ベルさんでいいわぁ~。
実は私ね、今度クレアちゃんと一緒にヴァールハイト領に行くことになってるの。
だから少しでも仲良くしたいなって思ってぇ……」
「まぁ、そうだったんですね!
お気遣いありがとうございます」
さすがに初仕事が私だけどいうことは無いらしい。
よかった。
「いいのよー、あともう一人一緒に行くんだけどねー。まぁ後で紹介するわぁ。
そういえば、クレアちゃん。さっきはごめんねぇ、意地悪しちゃってぇ」
「意地悪?」
「任命式の前よ、王座の間に来にくかったでしょう?」
あ! あの魔力のことか。
意地悪って……まぁいいや。
「あの魔力ってベルさんのものだったんですか?」
「そうよー。なんでも現役の宮廷魔導師の中でも新参の人がちょっと意地悪をするのが習わしになってるらしくて……」
あぁ、そんなのがあるんだ……
よかった、嫌われてるとかじゃなくて。
こんな美人さんに初対面、むしろ会う前から嫌われてるとかやめてほしい。ほんとに。
「ってことは、ベルさんが私の前に宮廷魔導師になったんですか?」
「そうよー。初めての後輩ちゃんにあんなことしなきゃいけないなんて……変な決め事しないでほしいわぁ。
でも、我慢すれば通ってこれくらいの魔力量にしてたけど、まさか押し返されるとは思わなかったわぁ。結界魔法を使ってもよかったのに。
クレアちゃん魔力多いのね~」
「あ、結界魔法使ってもよかったんですか?」
「もちろんよー。せっかくの魔法ですものぉ」
あぁ、なんだそれだったら使えばよかった。
結構大変だったんだけどなぁ。
「ただ、あれくらいで結界なんて使うようじゃあ実戦では役に立たないでしょうねぇ。
あれくらいの威圧さえ、いちいち魔法を使わないとどうにか出来無いなんて、いくらたくさんの魔法が使えてもただの足手まといよぉ、絶対一緒に仕事したくないわぁ」
「……え、」
結界、使わなくてよかった。
結構重要な分かれ道だった、私の直感ナイス。
「その点、クレアちゃんは合格よー。アルベルトさんはまだしも、セヴェール様までべた褒めしてただけあるわぁ。
今回のお仕事ではよろしくねぇ」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
「ふふふっ、アルベルトさんには悪いことしちゃうわぁ。
すっごい心配してたのよぉ? たぶん自分が行きたかったでしょうに、セヴェール様に止められたのよ『初仕事に保護者がついてくなんてことがあるか』って」
「あはははは……」
あ、お父様が暗い顔してたのってそれが理由か。まぁ、心配もするよね。
ただでさえ過保護なのに、加えて、私が王都の外に出るとか初めてだしな。
ふう、ヴァールハイト領かぁ。
どんなところなんだろう。遠いのかな?
なんだかどこかで聞いたことがあるような気はするんだけど、なんにも思い出さないなぁ。
王宮魔導師が送り込まれるなんて相当なことがあったんだろう。
いつか家庭教師の先生に聞いたのかもしれない。
「ベルさん、ヴァールハイト領ってどんなところなんですか?」
「あら、知らないのー? って仕方ないのかしら、もう10年も昔の事だものねぇ」
「10年?」
「そう。あそこはねぇ、捨てられた大地って呼ばれてるのぉ」
「捨てられた大地?」
それから私はベルさんにヴァールハイト領について色々教えてもらうことになった。
お酒は二十歳になったら、ですよ!
(日本では)




