創造主の資格
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もう、半分我が家のように、来慣れた師匠の部屋。
私が成人式を迎えたとからと言って、師匠からは特に祝いがあるわけでもなく。
「ではお主のステータスでも見てみようかの」
正直魔法のこと以外に話すことも無いため、私が入ってから2,3言目その言葉は発せられた。
まぁ、聞かれることはわかっていた。
だから、私は、すっとステータスを師匠に見せ、聞かれるより先に、ダダーーーッと一方的に師匠に必要そうなところだけ簡単にをお伝えした。
ゲームのことは言わなかった。師匠にはあまり関係の無いことだし。
だから、私が話したのは自分は転生者で一周目の頑張りを引き継いているだけでなく、神様から恩恵をもらったのだ ……と。
そこら辺をこと細かく。
そして少し長い沈黙の後。
「 …… ……ほぅ?」
師匠が、そんな、半分以上理解できていなそうな声を発した。
……まぁ、一気に話されてもわかりませんよね!
「よくわからんが、このステータスはその、『転生者』だからなんじゃな」
「まぁそうです」
そして師匠は『ほー、ほうほう』とかと言いながらわたしのステータスをじっくりと見て。
「なるほどのー、実に面白い。
で? この事は内緒にしておけば良いのじゃな?」
「えっと ……信じてくれるんですか?」
「ほっほっほ。なかなか信じがたいがの。お主は本当に面白い娘じゃのー。
まぁ、信じてやるわい。何よりお主、3歳の頃からわしの弟子になっておるが、後から考えてみればみるほど3歳とは思えんからの。
今の話を聞いて納得じゃ」
「師匠 ……」
おう、結構簡単に信じてもらえた。
そして師匠は私のステータスを見ながらしばらく笑い続け。『やっぱり化け物じゃったの』と言った。
嫌われてはいなそうで何よりだけど、化け物ではない。
ただ一周目の私が頑張っただけなのだ。
「しかしそれなら手加減する必要もなかったのー」
「 ……へ?」
「いやー、お主が既に大人じゃとわかっておればもっと早くからびしばし鍛えてやったものを、もったいないのー」
し、師匠、それは ……
「走り込みにしても、もっと増やしたのにのー。課題を出してもよかったんじゃが」
「 ……や、やめて!
身体は、身体は子供だからー!!」
よかった今話して。もっと早くに言っていたらさらにスパルタ教育になっていた。
あ、そういえば。
私は気になっていたことを師匠に聞いてみることにした。
「師匠。そういえばこの"リンク"って言う魔法はこの世界にもうあるんですか?」
「あるぞ」
おお、そうなのか。
師匠の話によると、どうやらこの魔法をは12年前の12月後半。すなわち私が産まれた頃に神殿に本が置かれていたらしい。
「12年前までは錬成魔法の特級は無かったからの。昔、錬成魔術師が騒いでおったわ。
お主はあの火の花を打ち上げたときにこれを使っとったんじゃな。
この国には使える者がおらぬからわからんかったの。
あれが"リンク"か、面白い」
「 ……え、誰も使えないんですか?」
「そうじゃ、お主は創造主じゃから何もせんでも無意識で使えるが、使いすぎたらさすがにおかしいと思われるぞ。気を付けよ。
それとなるべく早いうちに錬成魔法を覚えた方が良いの」
「なんでですか?」
「錬成魔法の特級が使えるのに下の級が使えんなんぞ、『創造主です』って言っとるようなもんじゃぞ」
おう。それはヤバイ。
0歳の時に魔法を創ったと言うことになってしまう。
「気を付けます ……」
「ほっほっほ。して、クレア、お主、創造魔法が使いたいと言っておったな」
「あ、 ……はい」
「先ほどの話によると ……わざわざわしが教えんでもその方法は知っとると考えてよいか」
私はその言葉に小さくうなずく。
そう。リンクのことを思い出した時に一緒に魔法の創り方も思い出した。
……師匠が私に創造魔法はどれかの系統を極めてからって言ってたけどその理由がわかった。
私は唯一"極"とついている氷魔法の∇を押してどんどんリストの下に降りていく。
下に行けば行くほど魔法のクラスが上がっていく。
そして、その一番下。
そのにはこう書かれていた。
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『極氷魔法を創造魔法に置換しますか?』
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「これですよね」
「そうじゃ、それでどんな魔法を創りたいか強くイメージしながら『します』とでもといえば良い。
あえて言うならその言葉が創造魔法の詠唱のようなものじゃ。
……それで? やるのか?」
「 ……氷魔法を創造魔法に置き換えるということは氷魔法はもう使えなくなるってことですよね」
「そうじゃな、一生では無いがの。知識が飛んでいく感覚じゃ、思い出そうとしても思い出せんから、本をもう一度読んで学んでいかんとならん。その感覚はまさしく初めて本を読むときのように難しい」
「そうなんですね ……」
一周目の私が"リンク"を創った時には極火魔法から置換した。
だから私は今回、火魔法が苦手であるように感じられたのだ。
魔法を極めれば、創造主となる権利が与えられる。長い年月をかけて覚えたその系統の魔法すべての知識と引き換えに。
今まで当たり前に使えていた魔法が使えなくなる。なるほど、創造魔法を使える人間が少ないはずだ、そもそも上級や特級を使う才能が必要であることに加えて、今までの頑張りを捨てる勇気が必要なのだから。
私はどうしよう、創りたい魔法がある。
美羽と翔を呼び出す魔法と帰す魔法。すでに極めている氷魔法を使えば残るはあと一つ。集中して鍛練できる。
でも ……
「 ……まだ、やりません」
「ほう? なぜじゃ?」
「 …… ……この氷魔法は、大好きなお父様の魔法ですから」
『氷』
それはまさしく、お父様の象徴である。
この魔法が使えなくのは嫌だと、例えこれからまた頑張れば習得できるとしても一度たりとも捨てたくないと、一周目の私が叫んでいる。
私はこの思いを汲み取らなければいけないだろう。この魔法を極めたのは他の誰でもない、一周目の私なのだから。
「そうか。
まぁ創りたい時に創れば良い、お主はまだ若いんじゃしの」
「はい」
元々予想だにしなかった拾い物だったのだ。
現時点で一周目の私が上級まで覚えてくれている系統もあるのだから、残りくらい自分で頑張ろう。
「さて、今日はこの後また模擬戦でもしようかと思っておったんじゃがな。
ちと野暮用が入っての、まぁ今日は好きに過ごせ」
「わかりました」
「それとクレア、明後日に任命式があるからアルベルトと一緒にこい」
「わかりまし ……え?」
任命式?
「ではの」
「あ、ちょっ、師匠!」
任命式ってなんですか、初耳なんですけど!




