事件発生 (1)
ブクマありがとうございますm(__)m
始まりましたパーティー。
私は今緞帳の裏にいる。実はパーティーは正確にはまだ始まっていない。すでにホールでは色々飲食されているけども。
しかし正確には、主催者であるパパさんがまずあいさつをし、その後今日の主役である私があいさつをして正式に開会となるのだ。
緊張して心臓がばくばくいっている私の肩にそっと温かいものが触れた。
振り向くとそこには笑うパパさんとママさんの姿。
「クレア、沢山練習したんだ、自分を信じなさい」
「大丈夫よ、クーならできるわ」
パパさん、ママさん……!
そうだ、今日の日のために沢山練習したのだ。
大丈夫、大丈夫。
「はい、おとうさま、おかあさま、わたしがんばります」
わたしの出番はパパさんが来賓の方々に挨拶をして
名前を呼ばれたら出ていく……!
そして少し長めの父の言葉が終わった。
「クレア、こちらに」
そういってパパさんがこちらに手を伸ばしてくれている。
「行ってらっしゃい、クー」
後ろからはママさんが応援してくれている。
そして私は背筋をのばし、覚悟を決めた。
ゆっくりと歩きだし、パパさんの隣に着くと一度深くお辞儀をする。パパさんから音声拡張の魔法のかかったマイクを受けとる。
目の前の沢山の人たちがこちらをみている。前世の記憶を合わせてもこんなに注目されたことはない……
足がすくむ。
その時そっとパパさんの手がわたしの背中に触れた、パパさんに目を向けるとパパさんがわたしを見る優しい目があった。
"頑張れ、大丈夫だ"
声に出していなくてもそんな言葉が伝わってきて……
大丈夫、わたしならできる。そんな勇気が湧いてきた。
「……本日は、わたくしの誕生パーティーにお集まりいただき、ありがとうございます。
今後とも、フロワール家を皆様のお力でお支えしていただけますことを、強くお願い申し上げます。
以上でわたくしのあいさつをおわらせていただきます。どうか、ごゆるりとおくつろぎください」
よし……言い終わった……
そして言い終わったら、もう一度深くお辞儀をして、
マイクをパパさんに渡して退場する……と。
「…………ふぁぁぁ……」
緞帳の裏に入った私はついに崩れ落ちてしまった。
「お疲れ様クー、立派でしたよ」
何て言いながらママさんがわたしの頭をなでてくれる。
なんとか無事におわったーーーー。
ママさんとパパさんがいなかったら絶対できなかったよ……
いや、でもまだ気は抜けない。はじめてのパーティーという事で今日は各家へのあいさつにはいかなくてよくなったらしいのだが王様にはあいさつをしなければいけないらしい……
でもまだ到着されていないようだ……
じゃあちょっと休憩できる?
………………ほ、ほっとしたらトイレにいきたくなっちゃった……
ど、どうしよう。
一人でも行けるんだけどドレスがなぁ……場所もわからないし……
頭を撫でてくれていたママさんは今しがたパパさんの同僚の人に呼ばれて行ってしまった。
うーん……
「お嬢様お疲れ様でございました。
あちらのお部屋で王様がこられるまで休憩いたしましょう?」
悩んでいると家付きのメイドさんが声をかけてくれた。
ナイスタイミング!
「あ、あのね。私お手洗いに行きたいの。どこにあるかわかる?」
「あら、そうだったのですね。
少々お待ち下さい」
そう言ったメイドさんはママさんのところに優雅に素早く歩いていき、なにかを話したあとこちらに戻ってきた。
「それではお嬢様、私と一緒にお手洗いに行きましょう。
あちらの方向にございます。
少し距離がありますのでお抱えいたしましょうか?」
「ううん、大丈夫!」
おそらくトイレに行くことをママさんに伝えてくれたのだろう。
にしてもあの優雅かつ素早い歩行、私も見習いたい。
……いつかできるようになるのかな……
少し離れたところにあったトイレに向かい、
重いドレスのために手こずりながらもなんとかトイレを終らせた帰り道……
……事件はおこった
パリーンッ
どこかでガラスが割れる音が聞こえ、いくつもの悲鳴と共に明かりが消えた。
いったい何が起こったのか。
訳もわからずその場にいると……
ドサッ
私の隣にいたメイドさんが倒れた。
しかし私の「どうしたの!?」という声が出ることはなかった。
次の瞬間には私も、意識を失っていた。