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ちょっと待って!


ブクマ&評価ありがとうございます!


 


 私は気づくと公爵家の自室のベッドの上にいた。



 あぁ、私は、



『……また気を失ったのか』



 どこかから声が聞こえる。頭に流れ込んでくるその声と、自分が思っていたことが重なる。


 ……え、なに? また?

 私そんなに気絶したことなんてないよ?

 なんでそんなこと思うの?


 そんなことに戸惑いながらも私は身体を起こす。



「いっ……」



 身体を起こすと、鈍く頭が痛んだ。

 一体何が……あぁ、そうだ。今日成人の儀があって、それで……石を触ったら、何かが流れ込んできて。突然頭が痛くなって、それで気絶したのか。


 なんだったんだろう、あれ……何も起こらないって聞いてたのに。



 周りには誰もいない。その事にひどく恐怖をおぼえる。


 ……いやいやいや、私もう12歳だよ? 前世も合わせたら20代も後半の大の大人ぞ、起きたときに周りに人がいないなからって恐怖おぼえるとか、どれだけ寂しがりやだよ。


 ……と自らに突っ込んでみるが、恐怖は拭えない。

 いつもはこんなことないのに。


 うーん。なんだか、気絶している間、長い……長い夢を見ていた気がする。

 ……それが原因か。


 この夢が石に触ったときの流れ込んできた物の正体かな。

 一体どんな夢を見たんだっけ、思い出せ……

 あぁ、頭痛い。


 頭を押さえ、鈍く続くその痛みを我慢しながら考える。


 落ち着いて考えて見ると、徐々にどんな夢を見ていたのか思い出してくる。


 しかし思い出せば思い出すほど、あれは本当に夢だったのか?

 そう思えてくる。


 夢にしては鮮明すぎる。自分に向かって飛んで来る火の熱さ、凍えるような寒さまで伝わってくる様だ。


 それに……あの小屋。

 あれは私が誘拐されていたときに入れられていた小屋ではないだろうか。


 ……もしかして"ifの世界"?

 もしかしたらこういうことが起こっていたかも知れませんよーって、そういうこと?


 でも、今みた夢は……その時の私の思いまで伝わってくる様だった。

 もしかしたら……の世界の夢でそんなことまで分かるものなのだらうか……


 さっきまで見ていた夢はそんな、『もしかしたら起こるかもしれない』なんて、軽いものではなかった。

 なんていうか、既に起こったことのような……誰かの、自分の記憶のような。

 そんな感じだった。



 そんなことを考えていると、こちらに近づく足音が聞こえてきて、扉が開いた。



「まぁ、クーちゃん目が覚めたの?」


「お母様……」



 部屋に入ってきたのはお母様だった。

 その手には水桶とタオル。

 熱ではないから効果があるかはわからないけど、何もしないということも出来ず、持ってきたのだろう。


 お母様は私の体調を聞いて、頭が痛いのだと言うことがわかると、今日は1日休んでいなさいと言って部屋を出ていってしまった。

 水桶とともに。……入れたけど要らないと判断したのかな。


 あ、でも誰かにいてほしかったなぁ。でもお母様も忙しいだろうし……


 するとまた、私の部屋に足音が近づいてきた。お母様が戻ってきたのだろうか? いや、でも今度は一人じゃなさそう。

 お父様? いや、外はまだ明るい。お父様は今日も仕事だと言ってたし……あ、でも私が倒れたって聞いたら即効帰ってきそうだな。

 いやでも、さすがに今日は無理だろうな。だって明日1月1日だから。新年であり、何てったってオリエット殿下の誕生日。毎年準備大変そうだもんな。



 誰だろうな、そう思っていると今度はきちんとノックがされた。



「はーい」


「クレアー、俺なんだけど入っていいー?」


「駄目に決まってるよ」



 うわ、即答された。とドアの外で笑う声は間違いなくレイのもの。


 なんでいるんだこの人。というか普通にレディの寝室に入ってこようとするなよ。

 3歳の時は許されても、もう無理だからね。



「じゃあレイ君、お願いしてもいい?」


「わかりました」


「え、ちょ、お母様?」



 何言ってるの、何、『お願いね』って。



「ごめんなさいねクー、本当は一緒にいてあげたいんだけど明日の準備が終わってなくて……!

 すぐに終わらせて帰ってくるからね!」



 お母様のそんな言葉が聞こえたと思うと。パタパタと足音が遠ざかって行く。

 お、お母様ー!



「ってことで、お願いされてしまったので入っていいですか」


「駄目です」



 というか、結局『お願い』って何。

 お母様のレイへの信頼感が凄いんだけど。


 いや、私もレイのことは信頼してるけど、今部屋着だし、髪ボサボサ。

 嫌だよ。



「と、とりあえずちょっと待って」



 とりあえず髪をとこう。あと着替え……もこの部屋に何着かあるからそれを着て。


 そう思って動こうとすると。



「あ、クレア動かなくていいよ」



 制止の声がかかってしまった。

 いやいや、君が入ってこようとしているからですね。



「俺さっきね、公爵夫人から少しの間クレアと一緒にいてあげてほしいって頼まれたんだ」



 え? 一緒に?



「なんかクレアが寂しそうだったから……って、本当は公爵夫人が一緒にいたかったみたいなんだけど、さっきも言ってた通り準備が……ね」



 そうだったんだ……お母様……

 私が寂しいって思ってたこと気づいてくれてたんだね。



「一緒に……って言うくらいらだから、部屋に入ろうかと思ったんだけど……

 別にこのままでも話は出来るみたいだしここでいいや」


「え、」


「いっぱい話そう。

 顔が見えない分話そう。俺がここにいるってこと忘れないでね」


「うん……」



 どうやら入って来るつもりが無くなったのはいいのだが、いっぱい話そうと言っても、何を話そう。

 別に今さら話すようなことも……あ。



「そういえばなんでレイはうちにいたの?」


「なんでって……今日は何曜日でしょう」



 え、……あ、日曜日か。



「いつも通り来てみたら、クレアが倒れたって聞いてもう、何事かと。

 オリビエ嬢も凄い心配してたんだから……」


「ごめん……え、今オリビエは?」


「オリビエ嬢も明日の準備。女性は大変だね、パーティーの度に……

 でも凄い心配してたよ、メイドさんが一生懸命引っ張って馬車に乗せてた。

 とりあえずオリビエ嬢にはさっきクレアが目を覚まして、大丈夫そうだ……っていう知らせはしといたよ」



 そうなんだ、ありがとう……

 心配させてごめんね、オリビエ……

 次会ったとき……いや、明日か明後日にでもハンス家に行って、直接元気だと知らせよう。



「ねぇ、クレア。一体何があったの?」



 レイがそう、静かに聞いてくる。


 まぁ、尤もな質問である。しかし、自分でもよくわかっていないので、なんとも言えない。


 レイには石にさわった瞬間、誰かの……なにやら記憶のようなものが流れ込んできたのだと伝えた。

 すると本当に一生懸命考えてくれているのだろう。

 ゆっくりと、途切れ途切れに、



「うーん……そっか。よく分からないんだったら仕方ないね。

 もう一回神殿に行ってみたら何かわかるかな……」



 という言葉が帰って来た。


 ……なるほど確かに。

 もう一回神殿に言ってみれば何かわかるかもしれない。



 …………そう考えいたってからは早かった。

 思い立ったが吉日。


 私は痛む頭を押さえながら立ち上がり、身だしなみもきにせず扉を開けた。



「うおっ、びっくりした」


「レイ、行こう」



 いきなり扉が開いて驚いているレイを気にも止めず、私はそう告げる。



「……は?」


「いざ、神殿へ!」


「え、ちょ、クレア?!」



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