緊張より勝るもの
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と、まぁ、レイもオリビエも成長しているわけだが、私も成長しているのだ。
特筆すべきは魔法についてしかないけど。
だって、週3日……いや読書も合わせれば4日も魔法に費やしている訳だし。
既に私、火魔法以外の基本魔法4つと氷魔法は、上級に突入し半分以上制覇!
なんとか苦手な火魔法も中級後半……上級まであと少し。
……と、いうことで王宮魔導師のなるための条件、最低5系統の魔法で上級を使えることをクリアいたしましたので、私クレア・フロワール、先日、王宮魔導師の内定いただきました!
基礎魔法4つと氷魔法の計5系統ね。
正式には成人の儀が終わってからになるらしいんどけど、これで私は学校に行かなくてすむでしょう!
いやぁ、ここまでの道のり長かった。9年だよ9年。
いや、異例だし、これで本当に王宮魔導師になったら最年少記録なんだけどね。しかも成人してない人間は城で働けないから必然的に永久的な最年少記録。ちょっと荷が重い。しかたないけど。
でもギリギリ最低ラインを越えたばったりだからもうちょっと頑張りたいところなんだよね。でも最近は氷魔法と水魔法以外がちょっと難しくなったなぁ……って思っている。なんか火魔法を勉強してる時と同じ感覚。
何が違うんだろう。別に特別難しく書かれてるとか、一気に難易度が上がったとかじゃないと思うんだけどな……
こんなこと言ったら一生懸命勉強してる人に殴られそうだけど、なんか今までは一回勉強したことがあってそれの復習をしている感じに近かったんだよね。それが無くなったの。
……転生者特権の期限切れ? え、期限制なの転生者特権。
あ、でも未だに全部詠唱破棄は出来るんだよな。
まぁいいや、ちょっと難しくなったと感じているとはいえ、こんなにハイスピードで魔法を覚えていっているのだ。少なくとも基本魔法(火以外)と氷魔法が特級に挑戦する日は近い!
……ちなみに聖魔法はちょっと停滞中……これは火魔法とかと違って魔方陣がおぼえられないとかそういうのじゃなくて、魔方陣とか詠唱とか必要なものは一通り覚えてるはずなのに上級が使えないんだよね……
師匠はこれが私の聖魔法の限界なんじゃろう。って言ってた。
なんか最近の研究によってこの魔法が上のランクの魔法が使えない理由が提唱された。ちなみに提唱者は師匠。
私は思った。あ、ちゃんと仕事してるんだ……と。
師匠は気まぐれだろうとなんだろうとやる時はやるということだろう。
私に魔法を教えるってことは、この9年間忘れることなくやってくれているんだし。
で、師匠が唱えている説を簡単に説明しよう。
その説は俗に”フィルター論”という。
この説を話す上で大切なのが魔力の粒子の形と大きさだ。
なんでも魔法の属性によって使用する魔力粒子の形が異なり、下級、中級、上級とレベルが上がっていくにつれて粒子の大きさが大きくなっていくらしい。
そして私たちの体には魔力が流れる経路があってその各所にフィルターがあり、そのフィルターを通過できる粒子の魔法のみを私たちは使うことが出来る……という説である。
で、そのフィルターおそらくは生まれたときに決まってるので、もうそこからは自分の才能の信じて頑張りましょう。
……結局才能かい。と、思わないでもないけど今そのフィルター論を信じて色々研究してるらしい。師匠達が。
ちょっと私はノータッチ。そんな頭使いそうなこと無理。疲れる。
あ、でもその魔力の粒子っていうのはなんとなくわかるようになった。
師匠いわく魔法を鍛練し続けたら自ずと見えるようになるんだって。一人前の証って言われた。嬉しい。
なんでも魔力の粒子が見えるようになった魔導師じゃないと人に魔法を教えたりも出来ないらしい。
よく考えてみればそうだよね、魔力の粒子が見えなかったら弟子が魔力操作とか出来てるか分からんもんね。
まぁ、一人前と言われようとも私まだ師匠の弟子で居続けますけど。
まだ創造魔法のやり方教えて貰ってないので。
師匠早く教えてくれないかなぁ……もう私12歳になっちゃったよ。
ゲーム開始まであと何年? 15歳の時って思っていい? あと3年しかないやん……
いや、本気で早く教えて……でもどれかの属性の魔法極めるまで教えてくれそうにない……
何でだよー……どうせあとちょっとなのに、基本魔法と氷魔法が限界の壁にぶち当たったらどうしてくれるんだ。特級の粒子がフィルター通ってくれなかったらどうしてくれるんだ。
まぁやってみないことにはどうしようも無いんだけどさ……
とりあえず早く教えてほしい。
さて、これだけ長々と話してきたが……半分現実逃避である。
ガチャ
「クー、そろそろ準備しましょう」
「おぅふ……」
「頑張ってくださいクレア様!」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
ただいま現実。
私はコルセットに絞め殺されてくるよ。
それから私はありとあらゆる部位をピカピカに磨かれ、それはもうきれいきれいにされた。
今日のドレスもふりっふり。
ただお茶会の時と違うのはガッチガチのコルセット。
試着した時死ぬかと思った。これが……これがパーティー。これが夜会……
……逃げたい。
それでもパーティーは無くならないし、逃げ出すことも出来ません。
……逃げ出しでもしたら、さすがにお母様に怒られる。
しかも公爵家の面目が丸潰れ。
……逃げれない。
そしてついにやって来てしまった誕生パーティー……
流れは3歳の時とあまり変わっていなかった。
ただし、最初の挨拶はあのときの数倍。
……なんで誕生日にこんな思いをせんといけんのだ。
例年同様小さなホームパーティーでよかったのに。
その怒りを誰に押し付けることも出来ずパーティーは始まった。
なんだか直前に怒りを溜め込んだせいか、あれほど緊張していたのにすらすらと挨拶できた。
そして長ったらしい挨拶を終えればあとは挨拶回り。
この挨拶も苦痛以外の何物でもないよね。なんでこんな重いドレス着てガッチガチにコルセット巻いて、高いヒールはいてるのにこんな広い会場を歩き回らんといけんのか。
そんな苦しい状況なのに顔はずっと笑顔。仕草はおしとやかにだよ。
ふざけてるのか。
……と、また怒りを溜め込んでいたらいつの間にか全部終わっていた。
あ、でもまだ終わらない。ここからが成人したものならでは。
ダンスである。
ダンスもそれはそれは長い間特訓してきたのでお手のもの。相手がちょっと下手だろうとちゃんと踊れるし、むしろ相手が自分がリードして上手く踊れていると錯覚させるテクニックを持っていると思っている。
しかし、だ。先程も言ったが、なんでこんな重いドレス着てガッチガチにコルセット巻いて、高い……(以下略)
……とかとまた怒ってるといつの間にか、お開きの時間となっていた。
……あれ、私パーティー始まってから怒ってた記憶しかない。なんかに緊張してたのに、緊張どこいった。
まぁいいや、さっさと帰って寝よう。
……あ、でも今日は来賓者が全員帰るまで帰れないんだった。
早く帰ってください皆さん。
そして私は最後の来賓者を笑顔で送り出すと即効、自室に戻り、さっさとドレスを脱いで寝たのだった。




