初めてのお茶会(5)
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悪役令嬢オリビエ・ハンス
彼女は"一応"悪役令嬢という役所に名を連ねる。しかしクレアのように処刑されたりはしない。
私はレイリストを攻略していないため、美羽から聞いた話のみとなるのだが、なんでもレイリストを攻略しているときにも姑息ないじめをしてくるのはクレアのみ。
なぜクレアがでしゃばってくるのかは不明だがそれは置いといて。
オリビエもクレア同様、礼儀のなっていないヒロインに何度も詰め寄るのだが、クレアと違っていてその言葉には愛と優しさがあるらしい。
ゲームでのヒロインとオリビエの関係性を一言で言うのであれば"師弟"。
オリビエが師で、ヒロインが弟子ね。
時にはダンスレッスンを行い、時には勉学や作法を教え……と、ライバルキャラであるにも関わらずヒロインを見るに耐えかねてついつい世話を焼いてしまっているような感じらしい。
悪役令嬢クレアに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
スプリットの許嫁はまた違う感じらしいんだけど、こっちの許嫁も処刑とかはされないんだよなぁ……処刑されるのクレアのみ。
……なんで私はクレアなんかに転生したんだろう。まぁなっちゃったもんは仕方ないんだけどさ。
あれ、スプリットの婚約者の名前なんだったっけな、確かシ……シャン……いや、シンなんたらだったかな。……だめだ思い出せない。美羽はわざわざ婚約者の名前まで覚えて無かったから、全部"◯◯の婚約者"呼びだったしな。
……まぁいいや、いつか思い出すだろう。
とりあえず今はそんな話しも置いといて。
今私の側にいるオリビエはレイリストの婚約者な訳だ(ゲームでは)。
今現在レイには婚約者はいない。……ということはこれからそういう話が出てくるのか?
「あれ……オリビエ嬢? ……ご無沙汰しております」
近づいてきたレイがオリビエに気付き挨拶をする。
その顔からは戸惑っていることがありありとわかる。
「ご無沙汰しております、レイリスト様。……レイリスト様はクレア様と仲がよろしいのですか?」
「あぁ、はい。昔からよくあそんでいるので」
オリビエもなんだか戸惑……いや、疑惑をはらんだ目をしているような気がする。言葉にするなら『なんで?』っていってる感じ。
ハッ! やっぱりオリビエとレイリストの婚約の話が出ているのだろうか!
婚約者でもない女の子と頻繁に遊ぶとは何事か……と、そういうこと!?
いや、でもレイは、レイはね!
「オリビエ! レイは私のただの幼なじみだよ!」
「……ただの」
そう、だからそんな婚約者がどう、とかって話しに結びつけなくていいから、気にしなくていいから!
そう言うと、オリビエはレイを一度じっ……と見て一言。『大変ですね』と笑い。
「ではクレア様、また来週楽しみにしておりますわ!」
そう言って帰ってしまった。
あぁ、もっと話していたかったのに……
というか大変とは一体。
別に今のところ大変なこととか特にないけど……
レイもなにやら複雑そうな顔でオリビエが去っていく姿を眺めている。
そうだよね、もっと話していたかったよね。婚約者になるかもしれない人だもんね。オリビエ可愛いもんね。
やっぱりもうちょっと引き留めとけば良かったなぁ。いや、でもオリビエを困らす訳にも……
「ねぇ、クレア……なんでオリビエ嬢といたの?」
なんだなんだ、嫉妬か?
「オリビエが話しかけてくれたの!」
「……あぁ、そうなんだ。ところでオリビエ嬢がスプリットの妹だということは?」
「知ってる」
「……また来週って言うのは?」
「来週二人で遊ぶことになったの」
「…………」
「…………」
あぁ、これ嫉妬とかじゃないな。
さすがの私でもわかるよ、目線が痛い。
多分あれだ。『スプリットと関わりたくない、とか自分で言ってたのになんで自分から近づいていってるの?』……とかそういうやつだ。
レイが小さくため息をつく。
「まぁ、いいや。オリビエと仲良くなってもスプリットと会う機会があるかどうかはわからないもんね」
「そ、そうだよね!」
そうそう! オリビエとスプリットはセットじゃないから!
大丈夫、大丈夫!
「でも今度、オリビエ嬢が来るときは俺も来ようかな……」
「え、なんで?」
「もしかしたらスプリットも来るかもしれないでしょう?」
え、えー……来るかなぁ。
保護者代理とかでかな? スプリットもまだ9歳……いやもう10歳かな? でもまだまだ子供でしょう?
……来ないと思うけどなぁ。
……ハッ!
そこまで考えて私は気づいた。レイの思惑に。
『オリビエと話したい』ということだと!
そっかー、なんだー。
何だかんだで気になってるんじゃないか。
いいね、いいね。
レイには幸せになってもらいたい!
オリビエはいい子だし可愛いわけですよ。お似合いだ!
美羽いわく、ゲームではレイリストは婚約者を愛してはいないよう。とのことだったけど、そんなのが私が許さない。オリビエ可愛いんだぞ、悲しませるとか絶対無しだからな。
私の家で会うようになったらオリビエとレイの接点にもできるし、オリビエの良さをレイが知って自然と婚約の話しになっていくかも!
あ、でも次オリビエと会うときに既にレイが居るっていうのはどうなんだろう。
ガツガツしすぎ? せめて許可をとるべきだよね。今回は何も言ってないし……うーん。
「あ、スプリットが来なかったら俺は勝手に帰るから気にしなくていいよ」
そんな私の思いが通じたのかレイがそう言ってきた。
え、そうなの?
「でもいいの? 全然話したりできないけど……」
オリビエと。
「別にいいよ、いつでも会えるし(クレアと)」
そっか、そっか!
だったらいいや。ごめんね、レイ、お願いします!
いやー、にしても『いつでも会える』かぁ。
じゃあ、オリビエとレイの婚約の話しは結構順調なのかな?
さっき『ご無沙汰しております』とかすごい他人行儀だなって思ってたけど、二人とも恥ずかしがってただけか!
そうか、そうか。じゃあ、オリビエとレイが婚約するのも時間の問題かも?
二人の婚約発表はいつになるのかなぁ。楽しみだなぁ。
というかだったら余計、レイと私結構頻繁に遊んでるけど大丈夫なのか!?
ただの幼なじみだけど!
婚約を控えているというのに……オリビエもそりゃあ疑心めいた目になるよ。
レイと私はただの幼なじみなんだけど!
……いや、でも私二人の友人代表として結婚式では挨拶したい!
うん。レイと遊ぶ時は出来るだけオリビエも呼ぼう。
そしたら私はオリビエと話せるしオリビエとレイは仲良くなれるね!
ナイスアイディア!
早速今度からそうしよう!
今度オリビエが家に来たときに空いてる日聞いてみよう。
「あ、そういえばレイはお茶会中どこいたの?」
「…………スプリットがクレアのところに行くかもしれないから行かないように、スプリットとずっと話してたよ……」
わぁ、ありがとう。




