初めてのお茶会(4)
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私たちはその後なんとか顔の赤みを引かせ、落ち着きを取り戻した。
「ほ、本当にごめんなさい……
勝手にクレア様の絵を書いたり、追いかけてきたりしてしまって……」
「それはもういいよ!
私もオリビエの書いてくれた絵好きだから……いくらでも描いていいよ」
「い、いいんですか?」
「うん。……ちょっと恥ずかしいけど。
あ、そういえばオリビエが私に話しかけたのは話したいことがあるから……というより近くで私を見たかったからなんだよね?」
「そ、そうなんです……」
「なんか……あの。私実はこんなのでごめんね」
「……? こんなのというと?」
「全然令嬢らしくないし、天使でもなんでもないでしょ?」
余裕で敷物もないのに地面に座るし、必要とあればゴロゴロと地面を転げ回るような令嬢なんだよ。
この前師匠と模擬戦してるときはは勢い余って池にダイブした経歴を持つ令嬢なんだよ。
オリビエ……そんなのがモデルでいいのか。
……と、まぁ簡単に、池にダイブしたことまでは話さなかったけど、そんな理想通りの令嬢では無いと伝えたところ。
「そうですね……最初は驚きましたが……元気なクレア様も可愛らしいです」
とのこと。オリビエの目に私はどういう風に写っているのだろう……恥ずかしい。
というか私からしてみればよ、さっきみたいなことを言ってるときに恥ずかしそうにはにかむオリビエとかの方が可愛いわけですよ。
いや、ほんと可愛いオリビエ。もっと話していたいなぁ……
そして私は考える。
オリビエはスプリットの妹である。
オリビエと仲良くなってしまうとスプリットと繋がりが出来てしまう可能性が高いのではないか。
うん。まぁ確かにそれはあるんだけど……
別に妹と仲良くなったところで兄と仲良くなる必要はないよね?
…………
……オリビエと仲良くなっても良くない?
オリビエと友達になりたいなぁ……
まぁ、スプリットのことは……なんとかなるでしょう。……と信じて。
「ねぇ、オリビエ! 今度お茶会とかじゃなく、私の家に来ない?
私もっとオリビエが描いた絵みたい!」
思い立ったが吉日。
私はその言葉通り、オリビエの予定の空いている日を聞き出し、また会うこととなった。
私がオリビエに友達になりたいと言ったときのオリビエの表情と言ったらもう、可愛かった!
私に絵がかけたらその一瞬を残してしまいたかったよ。
くっ、カメラさえあれば私もこの一瞬を後世に残せたのに……!
「クレア様、早速ですが今絵を描いてもいいですか?」
「うん。いいよ、見ててもいい?」
「は、はい……!
緊張してしまいます」
そう言ってオリビエはノートにペンを走らせ出した。
その顔は先ほどまでとは違っていて真剣そのもの、でもどこか楽しそうで、絵を描くのが好きなんだなぁと、見ているこっちまで出来上がりをワクワクと心待ちにしてしまった。
お茶会が初めての私に、絵を書きながらこの前行ったお茶会をはどうだった、とかも色々教えてくれて勉強にもなった。
オリビエがいるなら色々なお茶会に参加するのも良いかもしれない。
あ、でもそうなったらオリビエと二人きりになかなかなれないなぁ……
オリビエみたいな可愛お友達がたくさんできたら嬉しいけど、そうなったらそうなったで私の心臓がもちそうにない。
成人の儀が終わったら、否応にも夜会に参加することになるのだしそんなに急がなくても良いかもしれない。
お父様とお母様にも今日友達が出来たと伝えよう。
こういう催し物に参加させなかったことで、私の世界が狭くなってしまったことを結構気にしてるみたいだったから……
ふふふ、今からオリビエが家に来るのが楽しみだなあ。
どんなものを書いてるのかな。今度は時間もたっぷりあるし絵を見ながらどんなことがあったのか話してもらいたいな。
そして、楽しい時間は早く過ぎるものでいつの間にかお茶会が終わりそうな時間になっていた。
「……そろそろ出て行かないと心配されちゃうね」
「そうですね、いつの間にかこんなに時間がたっていたんでしょう」
ほんとに。
私たちは地面に座ったことで汚れてしまった服を綺麗にして誰もこちらを見ていないか見渡して、ささっと物陰から出た。
「クレア様すごいですね、もう魔法が使えるだなんて……」
「そ、そうかな? オリビエはまだ鑑定とかは受けてないの?」
「いえ、去年受けてMPは結構あったので少しずつ訓練はしてるんです……でも最近やっと魔力操作が出来るようになってきたくらいで……」
「そうなんだ……」
まぁ、私は特殊だしな。転生者だし……
でも私が師匠の弟子になってから結構たつのにその事はあんまり知られていない感じなのかな。
宰相さんは私が師匠の弟子になったこと絶対知ってるのに……まぁ、わざわざそんなこと言って回らないか。
「……クレア!」
そんなことを考えていると前方から名前が呼ばれた。
そちらの方を向くと私を見つけたレイがこちらに走ってきていた。私の姿が見当たらないから探してくれていたのかもしれない。
どんどんレイが近づいてくるのを見ながらふと思う。
あ、違う……
……あ、違うって目の前から来ているのは確かにレイだよ。
そこではなく、私が言ってるのはもっと前、時間にして1時間以上前のこと。
…………
……私は最初はオリビエとどこかであったことがあると言った。
それについてなのだが……その時私はオリビエがスプリットの妹だと聞いて納得した。
でも違う、そうじゃないのだ。
私はスプリットに会ったことがあるからオリビエとどこかで会ったことがあると思ったんじゃない。
私は確かにオリビエを知っている、私はオリビエ本人を見たことがある。
ただ私が知っているのは……もう既に成人の儀を終え、魔法学院に通っているオリビエだが。
なぜ気づかなかったんだろう。
いや、確かに名前を聞く機会は少なかったけど、かつて私はこの世界の人物になれるならこの人になりたいとすら思ったのに。
……そう、私は前世でオリビエを見た。今私がいるゲームのパッケージで。
そしてオリビエの役所は……
” 騎士団長子息レイリストの婚約者 ”
……である。
"一応"私と同じ悪役令嬢だ。




