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初めてのお茶会(3)


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m



 



「あ……そ、そうなんです。

 申し訳ありません、クレア様とお話しているのにこんなものをお待ちして……」


「いや、それは全然いいんだけど、ちょっと気になってたんだ。

 何が書いてあるの?」


「えっと……あの……

 ……ぇが」



「絵?」


「……はい。あの私を描くのが好きで……それで……」



 ……描いてるの!? すごい!

 絵を描ける人ってすごいよね。暇な授業とかでさらさらっと、私から見たら力作と思えるものを書くじゃん。

 私の場合落書きしようと思っても描きたいものが全然思い付かなくて、延々と丸を書き続けるか寝るしか無かったからね!

 ……って、オリビエが描いてるのはそんな落書きとかじゃないか。どんな絵を書くんだろう。



「ねぇ、オリビエ! そのノート見てもいい?」


「え……?」



 と、興味本意に聞いてみるととても戸惑ったような顔をされてしまった。

 あ、こんな簡単に頼んだりしたら駄目だったか。



「ご、ごめんね!

 嫌ならいいんだよ!」



 ちょっと残念だけど……



「あ、いえ……そんなに興味津々に聞かれたことがなかったものですから……どうぞ」



 そう言ってオリビエはノートを渡してくれた。


 えー、みんな気にならないのかな。

 と、そんなことを思いながらページをめくる。するとそこにはとても繊細に談笑する着飾った女性たちが描かれていた。



「上手……」


「あ、ありがとうございます」



 オリビエが恥ずかしそうにはにかむ。


 あ、笑うと可愛い。


 にしてもすごいねこれ、私と同い年の子が書いたとは思えない。

 さらにページをめくると、また別のご婦人方が談笑をしている姿や、美味しそうな御菓子が並べられた机などや、美しい庭が描かれていた。

 おそらくこの絵を書いたのもお茶会でなんだろう。

 なるほど、みんなと楽しみ方が違うってそういうことか……



「オリビエはいつもお茶会では絵を描いて過ごしてるの?」


「……そうなんです。華やかに飾られたお庭は圧巻ですし、……その、ご婦人方やご令嬢の皆さんが来ているドレスが私には花のように見えて……どうしても絵書き留めておきたいと……」


「あ! 私も皆さんのドレスがお花みたいだなって思った!

 そっかぁ……すごいね。私、絵なんて描けないから憧れちゃう」


「そ、そんな。憧れるだなんて……!

 こんなことが出来ても誰にも認めてはいただけませんし、笑われてしまうだけです」


「え? そうなの?」



 オリビエは悲しそうにそう言ってうつむいてしまう。


 笑った方が可愛いのに……


 でも、こんなに綺麗な絵が描けるなんてすごいことなのになんで?

 全然誇って良いことだと思うんだけど……


 私が小首を傾げているとオリビエがうつむいたままゆっくりと話し出してくれた。



「……よく言われるんです。『そんなものを描いている暇があったら勉学を積め』……と。

 もちろん勉学を疎かにしているつもりはありません。

 ……でも絵を描いているだけで怠けていると思われるようで……」



 そんな……



「でもオリビエは絵を書くことが好きなんでしょう?

 私オリビエの絵好きだなぁ、なんだが見てると心が落ち着いてくる」



 そう言いながら私はノートのページをめくる。

 となりでオリビエが顔をあげるのがわかった。


 そして次のページに描かれているものをいるものをみて手が止まる。



「これ……」


「……あ!」



 そこにはなんとも令嬢らしく微笑む私が描かれていた。

 自分で言うのもなんだけど可愛い。

 いや、ほんと自分でいうのもなんだけど。

 そう、描き方。描き方がね、すごく可愛く描いてくれているの。



「ク、クレア様それは……!」



 なんだか隣でオリビエがあわあわしだしたので私はすっとそちらを向いて"にこーっ"っと笑って、再びノート目を向けページをめくる。

 そしてその次のページにも私。今度はお菓子をまさに食べようとしている図だった。


 おーおー。綺麗に場面を切り取るね、すごい。

 さっきの微笑む私もだったけど、私だけを大きく描かれている。さっきまでオリビエとはこんなに近づいて話して無かったのによくこんなの描けるなぁ……



 隣ではさらにオリビエがさらに慌て出したのがわかる。


 でもごめん、手を止めるつもりはない。

 ……と心のなかでニヤニヤ。

 その思いは『絵のモデルになれるなんて最高』みたいな感じだ。



 そして次もその次のページも私だった。

 なんかここまでピックアップされてると恥ずかしいな。


 そしてさらに次のページ……



「あ、今度はひきの絵だ」



 そこには今までとは違い、私だけでなく回りの風景も書いていた。急いでかいたのか今までのものと比べると少し大雑把な感じがするけどそれでも上手……

 ……でもこの絵には今までと違っていて風景も描かれているものの、回りに人はおらず、お茶会らしい道具もない。


 ……あ、これこの物陰か。



 …………



 ……これ私の犯行現場(隠れる瞬間)じゃない?



「私をずっと見てたのでってそういうことか……」



 でもこの犯行現場を目撃してからそんなに時間たたずにオリビエここに来たよね。

 ……すごい短時間でこれ書いたんだな。



「す、すみません勝手に……」


「いや、いいよいいよ。むしろこんなに可愛く書いてもらえて嬉し……」


「いいえ、そんなことはありません! クレア様は元々とても可愛いのです!

 今の私の画力ではクレア様の可愛さ、美しさをとらえきることができず、本当に悔しい気持ちでいっぱいでございます……!

 その可愛さ、美しさのあまり、クレア様を初めて見た瞬間、クレア様を描きたくて描きたくて仕方なくなってしまって。そして書き出したらその手が止まらなくなってしまって……!

 一目惚れでした。そのきめ細かく白い肌、大きな瞳、つやつやと輝く髪……! まるで天使様がここに舞い降りたのかと錯覚してしまいました。

 そしてずっと観察していると指先や髪の一本一本にまで神経が通っているのではないかと思わせる完璧な作法と動き……

 この物陰に入られていく様子はまさに森の妖精が帰って行ってしまうのではないかと……

 是非とも、是非とももっと近くでお話ししてみたい、見ていたい、描きたいとこのようにお一人になられたところに押し掛けてしまったのです…………って私はなにをいっているのでしょう。申し訳ありません突然……」



 そう勢いよく語ったオリビエは、ふと我に帰ったのか、顔を真っ赤にしてうつむく。



「あ、いや、ううん……」



 は、恥ずかしーーー!!


 なに、天使様とか森の妖精って私そんなんじゃないし、天使と森の妖精とか両立無理だよねって思うし……あ、あと完璧な作法にはまだまだだなって思うし……って、もーーっ!


 私は隣のオリビエ同様、顔を真っ赤にしてうつむく。


 恥ずかしい、ずっと見られてたっていうのも恥ずかしいし、そういう風に見られてたっていうのも恥ずかしいけど、なによりそんな風にみてくれたのに、この物陰に入って話そうとした瞬間地面に座ったり、おしとやかには程遠い話し方をしてその幻像を壊してしまったのがなにより恥ずかしいーー!



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