誓い
ブクマ、そして評価本当にありがとうございますm(__)m
これからもよろしくお願いします。
レイに私が転生者であることを話してから数日。
私はレイのお家にお邪魔していた。
あ、ちなみに初めてではない。もう何度も来させてらっている。
レイのお家はルミリアおば様が植えた花が庭いっぱいにあって、お部屋もロココ調っぽくてとても可愛いのだ。
……まぁ、やることは公爵家だろうと侯爵家だろうと基本変わらない。お菓子を食べたり本を読んだり。
「ワンワンワン!」
「いらっしゃい、クレア」
「お邪魔します!
ジョンー、元気にしてた!?
ちょっと大きくなったねー」
扉をあけると、中からレイとグラディウス家の愛犬、ジョンがお出迎えをしてくれた。
ジョンは今年グラディウス家にやって来た、チョコレート色の毛並みがきれいな子犬だ。
今はまだ小さいけどこれからまだまだ大きくなるらしい。
「元気過ぎて困るくらいだよ。よかったねジョン、クレアが遊びに来てくれて」
可愛いレイと可愛いわんちゃん……いい。目の保養。
あれ、そういえばいつもはこれに可愛いルミリアおば様も加わるのだが今日はどうしたのだろうか?
「今日ルミリアおば様は?」
「ハンス家でお茶会が開かれてるらしくて、今日はそっちに行ってるよ」
あぁ、そうなのか……じゃあ……
「クレア、客室にお菓子準備してあるから食べながらちょっと話そっか」
この家には今、ジョンと使用人さんたちと……私とあなたしかいないわけですね。
レイはジョンを使用人の皆さんに預け、『あとは自分達で出来るから誰も居なくても大丈夫』と人払いをして私を客室に引き入れた。
あぁ、私の逃げ場はどこに。
いや、まずここに私一人で来てしまったのが間違いだろう。
忘れていたわけでは無い、ほんの数日前の話だ、次会ったときにとも言われたし。
そう、忘れていたわけではない。
……お仕置きのことを。
でも前世のことをレイに話したばっかりだし、その話を聞きたくても私のお付きの人たちが居たら聞けないだろうなと思ったのだ。
そんな気遣いまで出来る私ってすごい。
だから今日お仕置きのことを言われるのは必至なのだが、なんだか変に緊張してしまう。
使用人さん達が着いてきていないことを確認して、扉を閉めたレイがこちらに歩いてくる。
お仕置きってなんだ。何をやらされるのだ。いつ言われるのだろう。
「お仕置きなんだけどさー……」
いきなりきたー!
「な、なな、ななな、なにすればいいかな!?」
「そんな慌てなくてもいいよ、一応考えはしたけど、やらないことにしたから」
え、なんで!?
「よく考えてみたら様付けしたらお仕置き……って言ったけど、敬語は後から提示したから、お仕置きの対象外だなって思って。
(やり過ぎて嫌われたくもないし)」
あぁ、そっか、確かにそうだったような……
ほっとするべき所なのになんだろう、この喪失感。
「ちなみにお仕置きってなんだったの?」
「あぁ、クレア今体力づくりのために騎士団の訓練場の周り走ってるでしょう? あれの回数を増やそうと思ってた」
「え、なんだそんなことかー……」
お仕置きなんて言うから、もっとこう……ねぇ?
「なんだ……って、クレア今一周走るだけで疲れてるのに20週以上やっても大丈夫だったの?」
あ、それはだめ。死んじゃう。
よかった、お仕置き無くなって。
「でもレイはいったいお仕置きなんて言葉どこで習ったの……?」
「え? あぁ、父さんが……」
ギルおじ様?
え、まさかギルおじ様、ルミリアおば様に!?
そ、そんな、そんなアダルティなっ……!
「よく物を壊したりするから、母さんがそのお仕置きで一日中荷物持ちとかさせてるんだよね」
…………
全然ちがった。
「あ、あー……それでー……」
誰か、誰か私の薄汚れた心を洗い流してはくれないでしょうか。
そうだよね。ギルおじ様だもんね、そんなことしないよね……たぶん。
でもギルおじ様は物を壊しても荷物持ちで済んでるのに、私は敬語の使っただけで走り込み一周追加って割りに合わなく無いですか。
いや、1,2周だったら頑張ったらなんとか終わるし、お仕置きのレベル的に優しくなってる方なのか? でも走り込みより辛い荷物持ちっていったい……
「クレア」
そんなことを考えているとレイに名前を呼ばれた。
「この前俺に前世のこと話してくれたでしょう?」
「うん……信じてくれるの?」
「えぇ? 信じるよ、まぁ確かに信じがたい内容ではあったけど、作り話にしては出来すぎてるし、そんな作り話クレアが作れるとも思えないし」
あれ、信じてくれるののは嬉しいけど、今なんか私貶された?
心外なんですけど。
「それでね、クレア。これからのことなんだけどね、俺になんか手伝えることとかあったら言って?」
「え?」
「もしクレアが言ってたゲームっていうやつがハッピーエンドになったら、クレア死んじゃうかもしれないんでしょ?
そんなこと聞いたのにじっとしていられないよ……俺だって何か役に立てるかもしれない、だから……」
「レイ……」
「……それに言ったでしょ? ゲームのレイリストなんかより強くなってクレアを守るって。
近くにいなきゃ守れない……なんてカッコ悪いこと言うつもりは無いけど、それでも少しは近くにいたい、クレアが危ない所に行くなら俺も着いていきたい」
そして、『……ダメ?』と、不安げなつぶらな瞳がこちらを見つめ……
……たと思ったらその次の瞬間には顔が下を向き、さらに手によって隠されてしまった。
「え、レイ!?」
今一瞬天使が見えたんだけど!?
光輝く天使が見えたんだけど、なんだ今の!?
え、かわっ。もう一回やってくれないかな。
「ごめん、ちょっと今俺の顔見ないで。
(だめだなこれ、恥ずかしすぎる……おかしいな、父さんには出来たのに)」
え、えー……なんだそれ。
でも可愛かった、とにかく可愛かった。え、夢かな。
そんなことを思っていると、レイが突然首をふって、バッと上を向いた。
「とにかく! 聞いたからには俺も手伝うから、なんかあったら言うんだよ!?
わかった!?」
「はい!」
そして、大きな声でそう言われたので思わず返事をしてしまった。
でも確かにこれは嬉しい申し出だ……私が転生者だという事を知っているのばレイだけな訳だし、いつも私を助けてくれるレイがこれからのことも手助けしてくれるなんて嬉しいことこの上ない。
「でも私レイに助けてもらってばっかりで何も……」
「いいよ、そんなの。聞いてたのに何もせず、クレアが死ぬなんてことになったら俺が後悔するし……だから、ほら 」
そう言って、レイが私の前に手を差し出した。
それは私に『俺の手をとれ』と言っているよう……
「うん……ありがとう。よろしくお願いします」
私がそっと差し出された手に、自分の手を添えると、レイは私の手をギュッと握って、
「うん。絶対守るからね」
真剣な瞳を私に向けた。




