閑話:考えた結果
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視点がギルバートに変わります。話は昨日の続きです。
~ギルバート視点~
「最近息子が冷たい……」
「今さらだろ」
レイリストにふられた俺は仕方なく仕事に戻った。
そして呟いた言葉に対するアルベルトの相づちがこれだ。
ちょっとは慰めろや……
しかしアルベルトは俺が何を言っても書類から目を離す様子は無い。
いや、やってくれてるの俺の手伝いだからそんなに強く文句も言えないんだけどさ……
あ、そういえば……
俺はアルベルトにふと、気になったことを聞いてみた。
「そういえばさ……」
「手を止めるな」
あ、はい。
「そういえばアルベルト昔、『娘は誰にもやらん』……とか言ってたけどさぁ、あれ今でも継続中?」
それを聞いた瞬間、アルベルトの手がピタッと止まる。
「いきなりなんだ」
「いや、ちょっと気になって……早い子達はそろそろ婚約者が決まりだすだろ?
クレアちゃんにはそういう話来てないのかな?……と思って」
「…………」
あ、だんまりですか。そうですか……
まぁ、実際……公爵家の令嬢にそういう話が無いわけが無いんだよな……
たとえクレアちゃんが公の場にほとんど姿を表さなくても。
おそらくアルベルトが全部断っているか、読みもせずに焼いてるか……
……後者っぽいわー……
まぁ、かく言ううちもそういう話全部断ってるしなぁ……
あ、読まずに焼いてないよ?
ちゃんと読んで断って焼いてるよ?
いや、一時期婚約者探しするかなぁ……とも思ったんだけどさ。
頻繁に遊んでいる令嬢にあんな美少女……しかも公爵家のクレアちゃんがいるものだからどうしても、他の家の令嬢さんたちが見劣りするというか……
言い方はあれだけど、そういう理由でレイリストには婚約者を作らないことにした。
しかもレイリストのさっきの様子を見る限り……
まぁ、こういうことに親が口出しても良いこと無いからなにもしないけどな!
俺はクレアちゃんが娘になってくれたら大歓迎だぞ! 飛んで跳ねて喜ぶぞ!
「婚約の話は……すべて断っている」
「だろうね」
「あぁ……
クレアには今のところ婚約者を作る気はないが……だが、クレアが認めた相手なら…………認めようと……思っている……」
歯切れ悪いなぁ……
想像するだけでも嫌なんだろうなこれ……
……あの、ちょっと寒いんですけど気のせいですかね。
にしてもアルベルトがこんなことを言うようになるとは。リリアナさんになにか言われたかな?
よかったね、クレアちゃん。一生独身は免れそうだよ!
まぁ、アルベルトとリリアナさんが大恋愛の末の結婚だったんだから、クレアちゃんに婚約者を早々につけるとは思えなかったんだよね。
……やっぱり最初はクレアちゃんの心を鷲掴みにするしか無いようだぞ、レイリスト!
頑張れ、レイリスト! 父は応援してるぞ!
まぁ、といってもクレアちゃんの心を射止めることも大変そうであれば、アルベルトに認められるのも大変そうだからな……
手出しはしないといったが、アルベルトと接点を持たせるくらいはしても良いかもしれない!
父としてちょっと手助けするくらい許されるよな!
そうと決まればどうするか……
今度アルベルトと一緒に剣術でも……いや、それだとアルベルトのプライドを傷つけそうだな……
うーん。なんかいい案ねぇかなぁ……
「失礼します……え、寒っ。
あ、すみません公爵様、少しお時間いいですか?」
そんなことを考えていると、レイリストが部屋に入ってきた。
あ、やっぱり寒いよね。
というか聞いてくれよって、声には出せないけど今俺はお前のために色々と考えてやってるんだぞ!
優しいだろう。
と、心のなかでどや顔をきめる。
「なんだ」
「以前課題に出された魔力操作なんですけどこの前よりは出来るようになりました。
見てもらえませんか?」
…………
今何やら聞きなれない言葉が聞こえた。
……え?は?魔力操作?
「え?なに、レイリスト魔法の訓練してんの?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
と、本当に覚えてないような。
というかこの顔は半分どうでもいいと思っている顔だ……!
「お前よりセンスあるぞ」
「さらっと俺を陥れんなよ!
俺だって頑張ってるんだからな!」
「公爵様、どうでしょう?
もうちょっと滑らかに動かせたらいいんですけど……」
「いや、最初の頃に比べたらよくなっている。がんばったな」
「ありがとうございます」
俺の言葉なんて完全に無視して、レイリストはアルベルトに近づき、魔力操作の様子を見せる。
……あ、あれ。そんな完全に無視されちゃうとお父さん傷ついちゃうなー……
「ギルバート」
「な、なんだよ……」
すると今まで無視していたくせにアルベルトが俺に話しかけた。
俺ちょっと今拗ねてるんだからな……!
「息子に"強化"の魔法教えてやれ」
「はあ?」
"強化"の魔法?
「え……もうレイリスト魔法使えるのか?」
「やっと魔力操作が合格点という感じだな。これから実際に魔法の練習だ」
話を聞くところによると、俺の息子は騎士団の訓練に混ざり出した頃。
アルベルトが俺に魔法を教えていることを知り、自分にも魔法を教えてくれと頼み込んだらしい。
……対価は書類整理。
子供なのに?とか言っちゃいけない。うちのレイリストはできる子らしいのだ。
俺が『子供になにやらせてんだ!』って言ったら、『団長より息子さんの方が優秀ですよ』という返事がたまたま書類を届けに来ていた団員から帰って来た。
……泣きそう。
というか、レイリストはアルベルトに魔法を教えてもらってるのか……
あれ? そしたら俺の根回しとか必要なくね? むしろ邪魔?
しかもレイリストか騎士団の訓練に混ざり出した頃って4歳くらいの時……結構長い間教えてもらってたんだな。
……俺とそんなに期間変わらないんですが、あとなにも知らなかったんですけど。
もうほんと……あの、俺その子の父親なんですけど……
誰か俺に教えろよ!
……まぁ大体の事の運びはわかった……俺、魔力操作ができるようになったの、12の時だったんだけどな……
「父さん」
俺の理解が追い付かずしばらく黙っていたから駄目だと言われるとでも思ったのかレイリストが話しかけてきた。
なんだ?
まあ、レイリストはこういう時『教えてくれたらこの前父さんがジョン(犬)と遊んでて荒らした花壇……あれのこと僕も一緒に謝ってあげようか?』……みたいに軽く俺を脅してくるのだが。
……俺今なんか疚しいことあったかな……
そう思って下を向くと、上目遣いでこちらを向くレイリスト……
……ん?
「俺、強くなりたいんだ。だから父さんに魔法教えてほしいな」
そして小首を傾げながら、いつもより少し高めの声でそう"お願い"をしてきた。
……んん?
「……だめ?」
そして極めつけの悲しそうな顔。
その姿はまさしく子犬……!
かわっ……じゃない!
幻!?
俺は今幻を見たのか!?
「ど、どうしたレイリスト!
お前可愛いの嫌だったんじゃないのか!?
それなのに、なに……なんだいまの!?」
普段のレイリストからは考えられない行動に、俺は頭を抱える。
しかし、今起こった現象を整理するまでもなく、レイリストから答えが帰って来た。
「……うん……さっきまではそう思ってたんだ。でもさっき走りながら色々考えてみて……」
「考えて……みて?」
そしてレイリストは先ほどまでの子犬のような姿を脱ぎ捨て、今度はルミリアそっくりな、大輪の花が咲いたような輝きを放つ笑顔を浮かべて。
「使えるものは使うことにした」
そう言い放った。
可愛いな、おい。
……じゃない。
…………
なんだ使えるものは使うことにしたって……
……あの……息子が怖いんですけどどうしたらいいでしょう。
「あ、そういえば母さんがエントランスに置いてあった花瓶探してたんだけど、あれこの前お父さん割ったよね?」
……あ!




