閑話:この鼓動をごまかすために
ブクマ&評価ありがとうございます!
今話はレイリスト視点になります。よろしくお願いしますm(__)m
~レイリスト視点~
俺の幼なじみは転生者らしい。
……といっても、初めて"転生者"という言葉を聞いたもので、ちゃんと理解が出来ているかはわからないけど。
まぁ、わからない単語はその場で何度も質問したから大丈夫だとは思う。
クレアは前世というやつで未来の俺を好きになったらしい。
"おし"と言っていた。
その未来の俺とは画面?の中の存在で実際に会ったことはないらしい。
なぜそんなやつを好きになるのかと聞いてみたところ。
『もう一目惚れでした……くりくりとしたかわいい瞳、男性にしては低い身長、華奢な身体……
でも……! ゲームを進めていくうちにどんどん引かれていったんです……!
可愛い顔に反して、一度剣を握れば他を寄せ付けない孤高の騎士!
しかも、王子に近づいて居ることでいじめられているヒロインを何度も救うんですよ!
その姿のなんとかっこいいこと……!
これが惚れずにいられましょうか!
一番簡単とはいえ、なぜ私は、第一王子を攻略せねばならなかったのか……!
レイリストを攻略してみたかった。レイリストにたくさん声をかけて欲しかった、たくさん話して欲しかった、レイリストがささやく愛の言葉を聞いてみたかった!』
という答えが帰って来たわけだが……
正直ちょっと怖かった。
でも……
「それだけ好きなところがあるってことだよね……」
なんか悔しいなぁ……
なんだろうこの気持ち、すごいイライラするんだけど。
大体
『私には頭もよくて強くてカッコいい幼なじみと、絶世の美女でゲームのことをいっぱい知ってる友人がいるんです!この二人を呼び出すために今頑張ってるんです!』
って……いや、それはいい、女の友達の方は重要な情報を持ってるらしいし……
いや、でも。頭もよくて強くてカッコいい幼なじみって……十中八九、男だよな……
というかクレアの幼なじみは俺なのに……
わざわざそんな大変なことしなくても俺だって言ってくれたら手伝うんだけど……
そう思って今日の何度目かになるとため息をついた。
「暗い顔してどうした? レイリスト!」
「……今ちょっと父さんに構える気分じゃない」
「ひどっ! いやいや、父さんにちょっと相談したらちょっとは気が楽になるかもしれないだろう!?」
「…………」
俺はその話を聞いてから、なにもしないでいると、ずっとその事を考えていそうなので、訓練場に来て騎士団に混ざって身体を動かしていたわけだが……
実際、身体を動かしていてもさっき聞いた話を考えてしまっている……
そういえばクレアはゲームのレイリストに一目惚れした、と言っていたが、それは俺にも適応されるのだろうか?
……いや。クレアが俺に一目惚れ? 無いな……
確かに時々うっとりとした目で見られている気がするけど、あれは……
「絶対俺のこと可愛いって思ってる……」
実際声には出てないけどわかるんだからな。
あの目は好きとか思ってる目じゃない、人形とかの類いを見るそれだ。
今までいろんな人に言われてきた。可愛い可愛いと……
……男が可愛いって言われて嬉しいわけないだろ……!
「なんだ、レイリストは可愛いって言われるのが嫌なのか?」
「……あぁ、父さんまだいたの。……仕事貯まってるんだからさっさと仕事に戻れば?」
「ずっとお前の隣で筋トレしてましたけど!?
ちょ、レイリストお前、日に日に俺に冷たくなっていってないか!?」
父さんは、いいよね。パッと見、爽やかなイケメンなんだから。
俺、似るなら父さんの顔に似たかった。母さんの顔が嫌いな訳じゃない。
でも似るんだったら父さんの顔がよかった。俺、男だから。
「俺はレイリストの顔、母さんによく似てて好きだけどなぁー。
どうしたんだいきなり? クレアのちゃんになんか言われたか?」
「なんでいきなりクレアが出てくるの……
別にそんなことは言われてない……というか多分可愛いって思われてる……」
「あぁ、なんだ! それならよかったじゃねぇーか。お前の顔がクレアちゃんの好みってことだろ?」
「…………」
いや、確かに好みの顔なのかも知れないけど。
可愛いは心外なんだよな……
「うーん……」
「レイリストは母さんと一緒で外見より中身派か?
まぁ、確かに中身も大切だけどな……俺は外見も大切だと思うぞ!」
「何で?」
「まぁ簡単に言ったら、母さんがあの見た目じゃなかったら俺と結婚してなかったと思うからだな」
「そうなの?」
「いやー、だって俺が母さんに一目惚れしたから、母さんに何度も何度も話しかけて、母さんをつけ回したからな!」
……と、どや顔を浮かべる父。
…………いっそ清々しい。
「そっか……」
確かにそういうこともあるのかもしれない……
うーん……
それじゃあ俺もいっそのこと割りきった方がいいのかな?
可愛いって言われるのは嫌だけど。
クレアにとってこの顔がタイプ……なのかはわからないが、好きな顔であるのなら、可愛いと思える顔ならば。
……喜ぶべきなのだろうか。
「レイリストはクレアちゃんのこと大好きだな。
元々騎士団に来るようになったのもクレアちゃんを守れるほど強くなりたいから、だったもんな!」
「え?」
…………
「……好き?」
いきなりこの父は何を言っているのだろう。
確かにここに来だした理由はクレアを守れるくらい強く……だったけど、それは……いつも一緒に遊んでるクレアが知らないところで魔法の鍛練を始めてて、置いて行かれた気分になったからで。
今、こんなことを考えてるだってクレアにゲームのレイリストっていうのを聞いたからで別に……
……あれ? 途中からゲームのレイリストとか関係無くなってたな……
いや、でもだからってクレアが好きって訳じゃあ……
でも……
俺は考える。
好き?クレアのことを?
そう……そしてクレアが好きなのだと思うと……これまでのもやもやとした気持ちが腑に落ちた気がした。
そうか。
俺はクレアが好きなのか。
だからゲームのレイリストにもクレアが呼ぼうとしてる幼なじみにも……嫉妬してたのか。
うわ……それはなんというか……
「かっこわる……」
恥ずかしい。
あー……今日結構クレアに詰め寄ったけど嫌われてないかな……
「お、お?なんだ、なんだ?
なんかあったのか?」
「父さんうるさい」
「え、あ、ごめんなさい」
あぁ、緊張するな……次はいつ会えるだろう。嫌われて無いといいな。
今までこんなこと無かったのに。自覚したとたんにこんなになるのか……あー、もう。こんな顔誰にも見せられないな。
「俺、何周か走って来るから、父さんさっさと仕事戻れば?」
「えー……なんだよ。せっかくの親子水入らずなのに……って、レイリスト!」
俺はうつむいたまま、父さんにそう告げ、全速力で走り出した。




