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目をそらさないで


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m


 



「ねぇクレアさ……

 ……俺のこと……誰かと重ねてるよね?」


「……え?」



 一瞬で何を言っているのかわからなかった。

 誰かと重ねている?レイ……を?



「俺と似ている人……父さん、いや、母さん?

 ……違うね、もっとこう……俺に似ているひとかな。

 心当たりない?」



 レイに似ている人?

 いや、そんな人はいない。確かにレイは顔はお母様似だけど性格は全然違う、優しくて、かっこよくて…………あ。



 そこまで考えて思った。

 私はレイを『ゲームのレイリスト』と重ねているのだと。


 要は仮想の、ゲームキャラとしてのレイリストをレイに今まで見ていたかもしれない……

 いや、見ていた。『レイ様可愛い』『レイ様かっこいい』そんなことを思う度ずっと、目の前にいるレイリストとゲームキャラのレイリストを比べていた。


 これまで何度思ったことだろう。

『ゲームのレイリストもそうなのかな』『ゲームのレイリストと一緒だ』と。


 でも……



「き、気のせいではないですか?」


「うーん。気のせいかなと思って聞いてみたんだけどね」



 そんなこと言えない。話せない。


 師匠に説明するとかとは訳が違う。だって、レイは攻略対象なのだ。


 気のせいかもしれないと思って私に聞いているのなら、そのまま気のせいということに出来れば……ごまかせるかも。

 そう思って目を泳がし、再びレイの方をむくと、ばっちりと目が合ってしまった。


 そして……



「でも……その様子だと、俺の勘は当たってたみたいだね。

 誰? 俺の知ってる人?」



 そんなことを考えていたのに、レイはまるで確信を持ったようにそう聞いてくる。



「な、なんで……」


「クレアって隠し事するの下手だよね。

 問い詰めたらすぐに目が泳ぐ。

 ねえ、教えて? 俺のこと誰と重ねてるの?」



 その目はずっと私の目をみている。目が合ったまま……剃らそうと思っても剃らさせてくれない。

 ……そんな力があった。



 でも……



「言えま……「クレア」


 ビクッ




 いつもより大分低い声で名前を呼ばれ、思わず震える。



 逃げられない。



 そう感じた。



 でも……



「……はぁ、ごめん。クレアにも言えないことくらいあるよね。

 もう聞かないから楽にしていいよ。

 俺ちょっと頭冷やしてくるから、クレアはお茶でも飲んで待ってて」



 そう言って私を残して外に出ようとする。


 あれ、もっと問い詰めないの?

 そう拍子抜けすると同時に。



「待って!」



 なぜか引き留めてしまっていた。



「…………」


「…………」



「……ねぇ、クレア……今なにやってるかわかってる?」


「わかりません……」



 なぜ私はレイを引き留めているのだろう……


 耳に、せっかく逃がしてあげようと思ったのに……という声が入る。


 うん。本当にその通り。

 なに引き留めてるんだ私は。



「引き留めたってことは、話してくれるってことでいいのかな?」


「えっと……それは……」


「話して、くれるんだよね?」



 そう強く、強調して言われてしまい。私はついに折れた。


 元々逃げられないと思っていたし、せっかく見逃してくれたのに引き留めてしまったし……


 ほんとなにやってるんだ私……




「あ、適当にごまかしてもわかるからね」




 あ、はい。




 誠心誠意、正直に話させていただきます……



 信じる信じないはレイ次第だけどね!




 それから私はすべてを話した。


 私は転生者であること。転生前にやったゲームの舞台がこの世界だったこと。そのゲームにレイリストが登場していてそのキャラと今のレイを重ねていたこと。


 ……だけでなく、他にも色々。他の攻略対象はオリエット殿下とスプリット様ということ。

 私は悪役でハッピーエンドでは処刑されるのだとか、それを回避するために今頑張っているのだとか。

 ……あとゲームでの推しはレイリストだったとか……



 そう全部。ゲームの内容、その結末。私の知ってること全部だ。



 ……うん。ちょっと言いすぎたかな

 ……という気はしている。




 そしてすべてを話終わり……



「…………」


「…………」



 あ、ちなみに長い話になるから、と今はお互い部屋にあった椅子に座っている。


 その心は、テストで10点をとった後の面談のよう。



「……うん。まぁ大体わかった。ちょっと知らない単語がありすぎて時間かかったけど……」


「よかった……」



 もうへとへとである。

 言葉が通じないって大変だわ……



「大体わかったけどクレア……そのゲームってやつの俺のことあんまり知らないんだよね?」


「うっ……まぁそうですね」


「そんなよく知らないやつと比べられてたとか、ちょっと心外なんだけど」


「ご、ごめんなさい……」


「別に謝らなくてもいいんだけどさ……うーん……」



 そして部屋がシンと静まる。

 レイはなにかを考えるように腕を組んで目を閉じている。

 この状況でなければ眠っているようだ……



 本当にきれいな顔だなぁ……



 目の前の光景に、つい見とれていると、いままで閉じていたまぶたがゆっくり開き、その瞳がこちらを向いた。



 …………



 ……一瞬心臓が止まった気がするんだけど大丈夫だろうか。




「クレア……俺ちょっと考えたんだけどさ」



 な、なんだろうか。

 やっぱり、信じれないとかあり得ないとか……

 ……嫌われて……しまっただろうか。


 そんな嫌な考えが頭をよぎる。



「俺はね……クレアの幼なじみのレイリストで、クレアと一緒によく遊んでいるレイリストで、クレアのよく知るレイリストだ。

 クレアはそのゲームの俺のことより今の俺のことの方が知ってるでしょ?」


「それは……もちろん」



 そりゃそうだ。

 ゲームのレイリストと会ったのは合計してもほんの数分なのだから。


 いきなりどうしたのだろうか?



「そうだよね。じゃあちょっと長い時間一緒にいるだけじゃだけじゃ駄目ってことか……」



 え?なんのことをいっているの?



「ねぇ、クレア」


「は、はい」


「俺を見てよ」


「え……」


「俺だけを見てほしい。いるかいないかわからない男と重ねたりせず、俺だけを。

 今すぐじゃなくていい、少しずつでいい。

 でも絶対……そんな男より強くなって必ずクレアを守るから」



 そんな告白のような言葉を投げ掛けられた。


 そして、約束だよ。と言ってレイは私を残して部屋を出ていこうとした。


 でも途中で振り替えって。



「あ、そういえば途中敬語使ってたからまた今度お仕置きね」



 ……と。



 まるで告白のような言葉に固まっていた私は、その言葉を聞いてさらに固まる。



 そして、扉がしまった音を聞き、




 わ……うゎわぁあぁああぁ……!!!




 すっかり忘れてた、素で敬語使ってた。

 でも、いじわるなレイもいい! ちょっと強引なレイもいい!!

 きゃーー!!



 そう、この日、その時が。

『ゲームのレイリスト』ではなく、優しくて少しいじわるな『幼なじみのレイリスト』に初めて発狂した瞬間だった。



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