勉強は疲れる
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そしてしばらくするとお父様たちが帰って来た。
……今度はお父様がギルおじ様を引きずって……
あぁ、せっかく着替えたのに……
「クレア……」
「え、どうしたんですか、お父様?」
近くまできたお父様が神妙な顔で私を呼ぶので何事かと聞き返してみると、
「私のこと……嫌いになったか?」
と真剣な表情で聞かれてしまった。
あ、さっきのギルおじ様の言葉をまだ引きずっているんですね。
「嫌いになんてなってないです!」
「そうか! クレアに嫌われてしまったら私は……
あ、お腹がすいているだろう、食事にしよう」
今度は私の声が届いたらしく一気に元気になってくれた。よかったよかった。
でも、私に嫌われてしまったら……なんだ。
こわいなぁ、もう……
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それから更衣室かな?と思っていた場所に置いてあったお弁当をいただいた。
公爵令嬢にこんなものを……と持ってきてくれた騎士さんに謝られたけど別に全然気にしない。というか普通においしかった。
私が食べたら誰かのお弁当が無くなるんじゃないかと思ったけど、そんなことはないらしい。何でもたくさん食べる人が多いのでおかわりするやつがいることも考え、一応買っておいた予備がたくさんあるんだとか。
ちなみにあの更衣室だと思われた場所は更衣室でもあるが、シャワー等も取り付けられているし、ソファーなども置かれていた。
休憩室的な場所なんだそうだ。
そしてお腹が満たされた後は、お父様に抱えてもらい書庫にかえって来た。
「ありがとうございました、お父様。いきなり行ってしまってごめんなさい」
そう言って頭を下げると大丈夫だ、と言って頭を撫でられる。
「魔法の訓練頑張るんだぞ。6時頃になら迎えにこれると思えるんだが大丈夫か?」
「大丈夫です!」
そう言ってお父様が去るのを待とうと思ったのだが、立ち去る気配がない。
えっと……お父様、そんなに見つめられると緊張してしまいます……
「お、お父様?」
「なんだ?」
「えっと……それではセヴェール様が待っているかも知れないのでなかに入りますね?」
「あぁ、セヴェール様によろしく伝えておいてくれ」
「はい」
そう言って扉を開けてなかに入り扉を閉めようと……
ふとお父様の姿が視界の片隅に入った。
な、名残惜しそう……
そんなお父様の顔を視界の片隅にとらえながらも、遠慮なく扉を閉めた。
「よし、午後のお勉強も頑張るぞ!」
そして先程の部屋についたので扉をノックする。
「開いておる、入れ」
「失礼します、クレアです」
「おお、来たか。遅かったの」
ええ、お父様のところまで行っていたので……
今度から放置しないでいただきたいと後で言っておこう。
「ではさっそくじゃが、先程の続きをしようかの、次は魔法についてじゃ、アルベルトから魔法の書を読んでおると聞いたが何をどこまで読んだんじゃ?」
「えっと……基本魔法の初級を……何冊でしょう?結構たくさん読みました。最近は中級をしばしば。他は読んだことありません」
「なるほどな、公爵家にある基本魔法初級の書か……結構な量があるの。まぁ、魔法の書は多く読んどいて損は無いからの。
……使うとなると話は別じゃが」
たしかに、"リバウンド"のこともあるもんね。
「まず魔法とは……うむ。言葉だけでは伝えにくいの」
そう言って師匠は紙とペンを持ってきて、簡単な絵などを書きながら説明してくれた。
「まず魔法の発動原理からじゃ。書にも書いてあったと思うが、魔法には必ず魔方陣が必要となる。この魔方陣に魔力を注ぐことで魔法が発動する。で、この魔方陣を描いたり、魔力を注いだりする方法を詠唱と呼ぶんじゃ。時に魔方陣は手で書いたりもするがな。
で……お主が先日行った詠唱破棄は、その魔法を何度も行うことで習得できる見技での。魔方陣の形成と魔力注ぐ行程を思い描いただけで行っとる」
「へぇ……魔法ってそうやって発動してるんですね」
それにやっぱり詠唱破棄ってすごいことなんだなぁ……
なんで私は初めて使った魔法で詠唱破棄が出来たんだろ。
「そうじゃ、あ、少し話は逸れるが、お主魔法の書がどのようにして作られとるか知っとるか?」
え? 魔法の書?
「誰かが書いて、本にしてるんじゃないんですか?」
普通本ってそうやって出来るよね?
「やはり知らんかったか。こういうことは本には書いてないからのう……しかしこの国だけでなく他国でも当たり前のことじゃ、知らんかったら笑われるぞ。
まぁよい、では教えておこう。魔法の書はな、その魔法が出来たその日か次の日に神様が書いて神殿に置かれるんじゃ」
…………
はい?
神殿? 神様?
「魔法とは神の力の1片に過ぎん。作られた魔法は神によって分類され、神が書に記すことで世界中に平等に広まるんじゃ」
この話を聞いたとき私は思った。
そういえばここファンタジーの世界だったなって。
「まぁ、そういうひとつの見解じゃの。現にわしが新しい魔法を創ったときも次の日神殿に書が作られとった。
魔法を創った日から一日中寝ずに神殿を見張っておったんじゃがのう、本当にいつの間にか書が置かれておったわ」
神がおるなら捕まえて話してみたいと思ったんじゃがのう。
と、師匠は語った。
その時の師匠の少年のような笑顔といったら……
逃げて神様、超逃げて。
そんなこんなで時々休憩を挟みながら魔法について学ぶこと数時間……
なんか本当に色々教えてもらった。
やっぱり独学じゃあちょっと限界があるよね、私の場合公爵家内だけの狭い世界だし……
以前私が説明した"リバウンド"の原理についても教えてもらった。なんでもここ数年でその原理が解明されたらしい。
で、その原理というのが、本来魔法を使用するときの流れとしては魔法の選択→魔方陣の形成→発動。という流れで、この魔方陣の形成と発動の時に魔力が必要となる。
しかしこれが、術者が残りの魔力が少なかったり、身の丈に合ってない。要は自分が持っている魔力よりも魔力使用量が多い魔法を使おうとしたとき。
本来の通り、選択→魔方陣の形成→発動。の順番で魔法を行えば、魔力が足りず発動しないだけで済む。
しかし発動することに重きを置き、発動に魔力を注ぐ。要は、選択→発動→魔方陣の形成。の順番で魔法を打とうとしてしまうと、魔力足りないからと言ってすでに発動の準備は整っているので中止することも出来ない状況となる。
簡単に言えば手元の爆弾に火をつけたはいいけど大砲は無い。みたいな状況。
これは危ない、と無意識に判断した頭は無理やり魔方陣を構築しようとする、でも魔力は足りない。……ので結局血肉を魔力に変えて魔方陣を構築し魔法を発動させるわけだ。
そして今までに報告が上がっている事例はたしかに、中級以上のものばかりだが、正確にはそうではない。実際は初級の魔法でも"リバウンド"は起こっているのだが、魔方陣にかかる魔力量が少ないので軽い貧血くらいで済んでいるだけなんだそうだ。
うん。要は無理はするなよってことだね。
あと魔法の重ねがけについて。
そう私は誘拐されたときから普通にやっちゃっていた魔法の重ねがけ、要は"ウォーム"と"ミュート"とかそういうの。実際には自分に"ウォーム"をかけて他人に"ウォーム"をかける。これも重ねがけになるらしい。
で、その重ねがけは。魔導師全員出来ないわけではないのだが、それぞれのの魔法の魔力の使用量が2倍くらいに増えてしまうらしい。そんなことしてたら魔力がいくらあっても足りない。"ウォーム"と"ミュート"のような下級の魔法でもその魔力の使用量が半端ないらしく魔力が相当たくさんあるやつじゃないと魔法の重ねがけはしないんだとか。
そう、相当たくさんあるやつじゃないと……私は"ウォーム"と"ミュート"を重ねがけしたあと、さらに魔法をいくつも重ねがけしている花火を4発も打ち上げてるわけだが……私の魔力量とはこれいかに。
師匠になんか探るような目で見られたけど笑って受け流しといた。
それと朝の講義で魔力操作について伝え忘れていたことがあったらしくそれも教えて貰った。
内容としては魔力操作は使い方によってはバリアにもなるということ。というのも魔力で守りたい部位を覆うと少しだが衝撃が緩和されるらしい。
この前私が花火を打ち上げた時の爆音に師匠だけピンピンしていたのはそれのお陰。覚えておこう。
まぁそんなこんなで現在午後4時頃。
……休憩を挟んでいるとはいえちょっと疲れたなぁ。
こんながっつり勉強したのいつぶりだろう……前世ぶりじゃね?
そりゃ疲れるよー……3歳児的にそろそろお昼寝をしなければやっていけない時間なんですけど……
トイレと言って部屋を出た師匠が帰ってくるまで少しだけ寝させてもらおう……
そう思って座ったまま目を閉じるとすぐに夢の世界へと旅立ってしまった。




