魔導師の天敵
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そして私がつれられたのは奥の方にある小さな部屋。
書庫の中にまた扉があったからまだ奥に書庫があるのかと思ったけど違った。
どうやらここは師匠の自室というか研究室的なところらしい。
なぜこんなところに。
「これからは城に来たときはここに来るように。書庫の本も勝手に読んで構わんが魔法は発動せんように気を付けよ」
「え、読んでいいんですか!?」
「構わん。魔導師は書を読まんと魔法も覚えれんからな。ただし持ち出す時はわしに言うこと。持ち出し厳禁の物もある」
「わかりました!」
やった!
時間があるときにどんどん読んでいこう!
「あ、これからはいつ来ればいいでしょうか?」
城にいるメイドさんたちにも伝えとかないと……
「いつでも構わん。毎日でも良いぞ」
「え、毎日……ですか?」
「わしにアポを取る必要もない。わしがこの部屋におらんかったら魔法の書を読んでおれば良いしの」
た、確かに……
いやでも、そんなことしていいのだろうか?
いくら公爵令嬢とはいえ城に自由に出入りするっていうのもおかしな話だ……
「何を迷っておる?
……あぁ、城に来にくいのか。ならばこれを持っておれば良い」
そう言って渡されたのは金色の大きな石のようなものがついたネックレス。
……なにこれ。
「許可証じゃ、わしの弟子という証でもある。」
た、大切なものではないか!
なにさらっと3歳児に渡してるの!?
「こ、こんな大切なものもらえません!」
「よいよい、アースハイドにはわしから伝えておこう」
え、えーーー
「まぁ、そんなことはどうでも良いわい。
さて、今日はまず、軽く魔法についてお主に講義をしようと思っておる」
「そ、そんなことって……
っ、わかりましたよ……ありがたく使わせていただきます。
で……講義……ですか?」
あ、もうこれ受けとるしかないんだなっていう空気を感じたので私はあきらめてネックレスを受け取り、無くさないように首にかけてて服のなかにいれておく。
「そうじゃ、お主はすでに魔法の書は何冊か読んどるそうじゃが……それでは知識に偏りが生じやすい、手に取ったものしか読めんからの。
現にお主は魔力操作はできるくせにその使い方をあまり知らんようじゃしな。そういったムラが出来んようにするためにも師を持つということは大切なんじゃ」
なるほど、確かにそうだ。
「では……よろしくお願いいたします師匠」
「ふむ、ではそこに座れ」
そう言って差し出された椅子に座り、魔法について教えてもらった。
「まず魔力操作についてじゃが……お主魔力操作についてはどれくらい知っとる?」
「そ、それが……『体内にながれる魔力を感じとり発動箇所に集める』としか本には書かれてなくて……」
それだけしか知りません……
私は気まずくなってしまい、師匠から目をそらす。
師匠は、あぁ、あの本か……と呟き。
「よくそれだけでわかったの」
と感心してくれた。
そうなんです。よくあれだけでわかったなって私も思います。多分、転生者特権かなにかなんです。
でもそんなこと言えない。
取り敢えず笑ってごまかした。
「魔力操作に関する本はそれだけしか読んどらんのか?」
「はい……」
「なるほどのー……では、最初から丁寧に教えてやろう。
まず魔力操作とは言葉の通り体内に流れる魔力を操ることなんじゃが、その前に魔力について教えよう。魔力とは……生命力のことを指す」
「生命力……」
と言われてもピンと来ないなぁ……
「そうじゃ、魔力があった方が病気にかかりにくく、かかってもなおりやすい」
ほう……免疫細胞的なものが多いってことなのかな?
「しかし魔力が多すぎると暴走を起こしてその身体を蝕むんじゃ。これが魔力暴走。
で、その魔力の量を調節するのが魔力操作じゃ、魔力制御とも言う」
ん、んんー……?
「えっとー……」
「必要な時に必要な場所に必要な分だけ行くように魔力を操る。それ以外の場合は魔力は……殻に籠らせて休ませとるとでも思っとれ」
ほう。……よくわかんないけど、必要な時に必要な分だけ使えるようにするのが魔力操作なんだね。
そして使わないときは身体を傷つけないように押さえ込むこともそれにあたるってことか。
「じゃあ魔力が多くて魔力操作もきちんと出来る人は身体が丈夫なんですか?」
「まぁ、その通りじゃ。一概には言えんがな……」
「え?どういうことですか?」
「うーむ……お主魔力の量は体力によっても変動するという話を聞いたことはないか?」
「あります」
「そうか……しかしそれは正確には間違いでの。
体力によって魔力は増えたり減ったりはせん」
「え、そうなんですか?」
「しかしじゃ、体力が高ければ魔力の減りが遅い……要は生命力の減りが遅いということじゃ。
魔法を使うときはあまり感じんが……分かりやすいのは毒を盛られたり病気をしたりした時じゃな。
こういった場合はじわじわと継続的に身体を蝕んでいく。その時の魔力……生命力の減りが、体力の有るものと無いものでは顕著な差がでるのじゃ。
実際体力があるやつの方が、そういうのに強そうじゃろう」
た、確かに……
「実際に魔力はたくさんあるのにちょっとした病気で亡くなったやつもおる。要は魔法の才能があっても体力作りと自己管理は怠るなということじゃな。」
「なるほど」
「じゃが魔導師というのはどいつもこいつもこいつも体力が無い。」
え?そうなの?
「魔導師というのは書を読んでなんぼじゃ、先程も言ったが魔法の書を読まんことには魔法も覚えれんし、魔法をたくさん使って経験値を伸ばして魔力を増やすほうが効率が良いからの。
そうなってくると身体を動かそうとするやつなんてほとんどおらん。
魔法が使えれば武術何て出来なくて良い、という風潮も強いしの。現にアースハイドはアルベルトと比べて魔法が使えぬということを攻められておったが、アルベルトは武術の才がからっきしでも攻められておらんかった。
あと、この城には騎士がたくさんおるが、その騎士は魔法があまり使えぬやつがなると言われておる。まぁ、実際、魔法の歳がないから武術を極めた、というやつが多いからの。じゃから世の中では騎士は魔導師より劣るとかと言われたりもしとる」
え、そうなの?魔法に対する評価って高いんだなぁ……
武術ができる人すごいって思うけどな……ゲームのレイリストとか本気でかっこよかったし……
「しかしわしはそれは間違いじゃと思っとる。魔導師の天敵は騎士じゃというほどに……なんせ、近距離ではあちらのほうか圧倒的に素早いし、先程も言ったが魔導師は体力がない。長期戦に持ち込まれたら必ずこちらの敗けじゃからの」
「え……それなのに魔導師は騎士よりすごいって考える人が多いんですか?」
「そうじゃ……お主、自分が拐われたときのことをあれから誰かに聞いたか?」
え、拐われたときのこと?
「いいえ……」
私は小さく首を降る。
もう相当昔の事のように感じてしまう。
……そう、相当昔の事件のように、私の耳にはあの日のことが入ってこない。
それこそ自分から聞きに行けば違うのだろうが、周りの皆が私のためを思って隠しているのだからそれを無視して聞こうとも思えなかったし……
「では、少しだけあの日のことを教えてやろう」
「え、」
「まぁ、ちょっとじゃ、ちょっと。
アルベルトには言うなよ。怒られてしまう」




