○○になりたい
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宰相さんの後ろから出てきた男の子は私たちに向かって軽く頭を下げた。
「お久しぶりでございます陛下、公爵閣下。
またはじめましてクレア・フロワール嬢、スプリット・ハンスと申します。以後お見知り置きを」
「お、お初に御目にかかります……」
そう言って礼を取りながらも、私の頭はパンク寸前だった。
す、スプリット・ハンスー!!
そう、宰相の息子と言えば攻略対象の一人、なぜこんなところにいるんだ、いや、お父さんがここ勤務なんだから別におかしくもないかも知れないけど、会うなら王子だとばかり思ってたから私ビックリだよ!
「後で私の息子も来るように言っているのだが、まだ講義を受けていてな、スプリットと私の息子は君のひとつ上なんだ、またあとて紹介しよう」
そうなんですね、まだ小さいのに講義受けてるとかさすが王子!
そしてやっぱり私たちは遭ってしまうんですね!
そして不意討ちだったがいつか会うとは思っていた!
私はお前のことを知っているぞ、スプリット・ハンス!
宰相子息でありながらハンス侯爵家の第一子の跡継ぎであり、私よりひとつ上の4月27日生まれの牡牛座、血液型はA型で、紺色の髪で、黒縁のメガネから覗く瞳は深い青。
好きな飲み物はコーヒーで嫌いな食べ物は甘いもの全般、冷静沈着そうに見えて友情を大切にする一面も持っている。
確認できるほくろの位置は左の目尻にひとつ、首筋にひとつ、常時黒い手袋をしているため普段は見えないが、攻略が進み特別と言われるようになると手袋をはずしてくれるようになり、そして見える左手のその手の甲にもほくろがひとつ…………
……そう、そして美羽の推し!!
美羽が何回も言うから覚えてしまったではないか!
自分の推し(レイ様)より設定知ってるってどうよ
いいもん、私だってもう美羽に自慢できるくらいレイ様のことを知ってるし!
ちなみにレイ様は私と同い年5月19日生まれの牡牛座で、血液型はO、髪と瞳は柔らかい茶色の猫っ毛さん。
可愛くて、体力があって、かっこよくて、照れ屋さんで可愛くて、結構甘いものが好きで今はピーマンが食べれないの可愛い。
バレンタインデーの時に私がメイドさんやお母様と一緒に作ったチョコレートをあげると、はにかんで「ありがとう」って言ってくれたの!
あとね、あとね!その前私が階段を踏み外したときは力強く手を引いて助けてくれて……&#‘&(¥[(<-##¥)])’
思い付く限りのレイ様情報を頭で語った私は、とりあえず今日のところはこれくらいにしてやろう。と、一息つく。
でもまだまだあるんだからねレイ様自慢!
こっちに来たら思いっきり語ってやるんだからな! 覚えててよ美羽!
……ふぅ、にしても私の推し最高
……レイ様はここ来ないのかな……?
その後、宰相さんたちもソファーに座って陛下の入れた紅茶を飲んでいると扉が叩かれ、今度は王子が入ってきた。
『わぁ、相変わらず美形だなぁ。』
というのが私の感想。
それ以上でもそれ以下でもない。
ゲームの力みたいなのが働いて、一目惚れとかしてしまうかもしれないなぁ、と思っていたのに拍子抜けである。
……王子に会うって思ってすごい意気込んでいたけど、なんかさっきから驚くことが多過ぎてそれどころじゃなくなった感……
とりあえず一通り挨拶が終わったので王子もソファーに座って紅茶と焼き菓子を食べ出した。
「いやー、私は今日はクレア嬢に会えて満足した。このまま寝室に帰って寝たい気分だ」
「あ、ありがとうございます」
今日はいっぱい話したなぁと思っていたとき。陛下がそう切り出した。
そんなこといっていいのだろうか?
近くに座っている宰相からは『仕事残ってますよ』という声がかかっている。
ほらだめじゃん。陛下思いっきり平謝りしているではないか。
じゃあもうそろそろお開きかな……
そんなことを考えていると陛下から声がかかった。
「本当はね、前のクレア嬢の誕生日は同世代の子供たちや親との顔合わせもかねていたんだよ」
「そうだったんですか?」
「そう。クレア嬢はこの国で二番目に大きい家の一人娘だからね、色んな家の人たちが集まるんだよ」
そうだったのか、まぁたしかにそうだろうが、それなら王子の誕生日の方がもっとたくさん……
という私の心を読み取ったのか
「第一王子の誕生日ともなるとみんな顔合わせどころじゃないだろう?
他の家なんかほっといてオリエットに話しかけないと」
と陛下が笑う
確かにその通りだ。
「顔合わせなんて別に来年になってもいいんだけどねぇ」
そういって陛下は私のお父様の顔を見る。
どうかしたのだろうか?
「フロワール家はしばらくパーティーを開く気はない」
「え?」
なんでまた……
「……と、いうことなんだ。
しかも数年はクレア嬢をパーティーに参加させる気もないと言う……。
まぁ、別にそれはいいんだけど、そうなるとこの国の重鎮の子供たちとの交流も無くなってしまうだろう?
それはいけないということで、とりあえず今日はうちの息子...第一王子と,宰相の息子を合わせることになったんだよ」
あぁ、なるほどそういうこと。
今日私が呼ばれたのは誘拐されたときのことについて聞くためだとばかり思っていたのだが違ったのか……
「でもクレア嬢が人見知りをするような子でなくてよかった。うちの息子たちとも仲良くなれるだろう。
もう少しこうして話していたいところだが私たちは悲しいことに仕事が山積みなんだ……今日はこれでお開きにしよう。
クレア嬢、この後セヴェール様……あー、この国の筆頭魔導師様が君に話したいと言っていた。アルベルトと一緒に行ってきなさい」
そういってこの会はお開きになった。確かに第一王子と宰相息子……まって名前忘れそう。えーと、オリエット様とスプリット様とは会えたけど、正直話はあまりしていない。大体陛下が子供達に話しかけてそれに答える感じ。
ちなみに陛下には「仲良くなれるだろう」何て言われたけど正直真っ平ごめんである。
……にしても気さくな人だったなぁ、陛下。
「緊張したか?クレア」
「え?、うーん……」
確かに最初はすごく緊張してたんだけどなぁ……
「最初はすごく緊張してたんですけど、皆さんお優しくていつの間にかそうでも無くなってました」
「そうか、……今日はあんなだったが、陛下もちゃんとするときはちゃんとしてるんだぞ?」
「ふふふ、わかってます。
気さくな方で少し驚いてしまいましたが……」
少しと言うかだいぶ……
「これからお会いするセヴェール様も存外気さく方なんだ、ギルバートや騎士の人たちはあの人を見るとなぜか緊張しているんだが……
あとクレアが……」
「私が?」
「いや、うーん……クレア、おいで」
私の返事を聞く前にお父様は私を抱き抱えてしまった。
ま、回りの人の目がー!
「お父様!
恥ずかしいです、おろしてください!」
「みんな私のこんな姿を見るのが珍しいから見てるだけだよ、クレアは気にしなくていい」
気にするわーー!!
すっごい見られてますけど!?
私はお父様の体にぎゅっと抱きついた。
「ははは、可愛いなぁクレアは
…………本当に無事でよかった」
今にも泣きそうな声に私は顔を上げた。
見上げるとそこには本当に泣きそうな顔をしているお父様の顔があった。
「セヴェール様がね、クレアを見つけてくれたんだよ。
クレアを見つけて……私たちが来る間に、治癒魔法をかけてくれたりもしたんだ」
そうだったんだ……セヴェール様が。
そう思っているとお父様の私を抱く力が強くなった
「感謝してる。これ以上ないほど……
でもね、なぜだろう。クレアを一番最初に見つけるのは私がよかっただなんて……思ってしまうんだよ。」
「お父様……?」
「無力な父ですまない、もっと私に力があればクレアにあんなに思いさせなかったのに、守ってあげられたのに……」
「そんなことない!」
私はつい大きな声をあげてしまった。
辺りはいつの間にか人通りの少ない場所に入ったのか人が全くいなかった。
「パパはかっこいいよ! パパがいなかったら騎士団は動かなかったって聞いた! パパがいたから騎士団の人は早くあの森に着いたって言ってた!
私パパみたいになりたい! パパみたいに強くてかっこいい人になるの!!」
一息に言いきると、パパは目を驚いた顔をしていた。でもゆっくりとその目は細まって
「そうか、パパみたいになりたいか」
そう言って笑った。
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