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ついにきた!

ブクマありがとうございます!

 



 そして誕生日会からはや2カ月が経過した。



 あれから、レイ様がルミリアおば様と一緒にフロワール家によく遊びに来るようになった。

 週に一回ほどのペースで訪れるこの日を私は”鬼ごっこの日”と名付けた。レイ様が来た日は毎回のように鬼ごっこをするからなのだが、気に入ってくれたようで何よりである。


 正直この体は動かし難いし、なんならあまり走りたくもないのだが、私はどうやらあの顔に弱いらしく毎回本気でお相手させてもらっている。

 私としてもこういう日が無かったら率先して運動するとは思えないので、まぁ良いことだと思っている……大変だけど。



 余談だが、前回の"鬼ごっこの日"に話し方を改めるように言われてしまった。呼び方もレイリストorレイにしようとしていたのだが頑なに私が"様"をつけるので話し方だけでも、ということになったのだ。

 しかし、私は断った。なぜこんなにも頑なに断るかと言うと実は理由があるのだ。ちなみに前世とからのレイ様への崇拝とかそういうの……も少しあるが、そうではなくちゃんとした理由が。



 そう、正直レイ……と呼ぶのはさすがに距離が近いような気がして恥ずかしいのだが、レイリストと呼ぶのは無理なわけでは無い。前まではレイ様のことを頭のなかではレイリストと呼んでいたわけだし。

 しかし、だ。現在私は公爵令嬢な訳である。礼儀や作法ももちろんなのだが、話し方や人の呼び方にも配慮が必要な訳である。



 本当ならば私だってレイ様のことをレイとかレイリストって呼びたい、だが、私は平民だった人間である。

 そういう崩した話し方を実際に初めてしまうと絶対いつか夜会とかでやらかすと思うのだ。もちろんそれは話し方においても。

 ということをレイ様に話すとしぶしぶといった感じではあったがわかってもらえた。



 5年という期限付きで。



 ということは私が8歳の頃にはレイ様のことはレイまたはレイリストと呼んで話し方からも敬語をはずすということだ……

 それまでに令嬢として学ばなければいけないことを一通り完璧にしておかなければ……!

 と、相談してみると、さすがに早いだろうという声もあったが、元々やんわり始まっていたようだし、早いことに越したことはないし、本人もやる気という事で、私の日常に作法の講義が増やされた。





 そして雪が溶け、庭に花がちらほらと咲いてきた頃。

 私は城に呼び出された。



 お父様……

 あ、パパとママという呼び方も人前ではお父様お母様と呼ぶのが普通ということを作法の講義で学んだのでこの呼び方に戻すことにしてしまった。

 でも呼び方が変わろうとも私の大切な家族であることに変わりはない、しかしパパママと呼ぶのも好きなので寝室ではそう呼ばせてもらっている。私の大切な宝物だ。



 話を戻すが私は城に呼び出された。

 お父様はなにも言っていなかったがなんとなく誘拐された時の話だろうなぁと思う。あんな魔法も打ったのだ、むしろ今まで音沙汰もなかったのが不思議なくらいだ。

 でもお父様の不機嫌そうな顔を見ていて、きっと今まで私を連れていくのを断っていたんだろうなぁと思った。


 ギルおじ様達と開いてくれた誕生日会の時に思い出しても大丈夫だ、とは言ったものの、それでもやはり極力思い出さないようにとしてくれたのだろう。



 そんなことを考えて頬がほころぶ。



 あの誘拐事件が起こるまではほとんど表情も変わらないし、ちょっと怖い人だと思ってたんだけどなぁ、ゲームでのイメージもあったし……


 でも最近思うのだ、あのクレアが断罪されたときの顔……あれは自分の感情を抑えている顔なのではないかと、だって今のお父様が誘拐事件のことを思い出している時……

『守ってやることが出来なくてごめん』と謝られた時の顔と被るのだ。

 ゲームの時の顔は美羽に見せてもらった一回だけだからよく覚えていなくてはっきりとしたことは言えないけど……



 でも大丈夫だ。私は断罪なんてされない。そのために今頑張っているのだから。


 ここは現実だ、でもゲームの世界だ。

 私が実際にヒロインをいじめてなかったとしても権力があることに代わりはない、私に付け入ろうとして、回りがヒロインをいじめるかもしれない。

 そしてヒロインをいじめた理由を聞くと私の名前が出てきて私が罰をうけるのかもしれない。


 もしもの話しだ、実際はどうなるかわからない。

 でももしそんなことが起こってしまったら……冗談じゃない、とは思う。

 でもそうは言うものの、その可能性は無きにしもあらず。


 だから……私は決めた。


 私は誰とも婚約しない。少なくとも攻略対象であるレイ様や王子、宰相子息とは絶対に。



 そしてもうひとつ、魔法学院に通わない。これは難しいとは思っている。なぜなら私はもう魔法を使ってしまっているわけだし、そうでなくても私の体に魔力はあるからだ。


 魔法学院は魔力、魔法を鍛えるというのが目的の学校ではあるが、そのなかには魔力の制御も含まれる。

 だから魔力を持っていれば平民でも強制入学なのだ。ちなみにその場合は補助金制度あり。


 そして、この魔力とは12歳の時に行われる"洗礼の議"で持っているかどうかが分かるらしい。

 持っているとわかった時点で城に伝達し、貴族のように専属で魔法の教育が出来ない場合は、魔法学院の中等部に入れられ、魔法制御を学ぶ。


 貴族の場合は洗礼の議の前から鑑定の魔法を使える魔導師を雇うなどして、魔法の才があるかどうかを見てフライングして魔法の教育をしたりするらしい。

 というのも魔力制御などは小さい頃には行った方が早く制御できるようになるから、12才からとなると平均して3年ほど魔力制御に時間がかかってしまうらしいのだ。

 そして魔法制御ができて初めて魔法学院高等部……ゲームの開催場所へと入ることができるわけである。



 ちなみに魔法制御についてだが、私が誘拐されたときに話した

 "体内にながれる魔力を感じとり発動箇所に集める"

 という風に本に雑に書かれてあったやつだ、この魔力を感じとるって言うのに1,2年は裕に費やすのだとか。


 ……私本読んだあと結構すぐにできたけどな。

 まぁ、それはまだ私が幼いからだということと転生者補正ということにしておこう。

 とりあえずだ、私は魔法が使える訳である。となるとこのままでは学院に入学することは絶対、



 ……だと思うだろう?



 しかし、ひとつだけ入らなくてもいい方法があるのだ。

 言っただろう、魔法学院は魔力、魔法を鍛えるための学校だと。

 要はそれまでに学院でやることが無いくらい鍛えとけばいいのだ。


 ただ、この子は既に魔力・魔法に関して教えること無いくらい出来ますよっ、ていう判定が難しい。ではどうすればいいのか。

 調べたとも。

 言葉を話せるようになった私の情報収集能力なめるでないわ。


 あった、ひとつだけ、ここに認めてもらい、ここに所属していれば学院にはいる必要なんてない。



 "王宮魔術師"



 いわゆる国直属、城専属の魔術師だ。所属人数はたったの10数名ほど、ある者はいくつかの魔法を使いこなし、あるものはひとつの魔法を極めている。この人たちが戦争に参加すれば一日でひとつの国が滅びるだろうとまで言われている。

 まぁ実際は国内で仕事がたくさんあるので戦争なんて危ないところにはあまり行かないそうだが……



 そしてこの王宮魔術師の一人に、実は、我が父アルベルト・フロワールが入っているのだ。しかも父は魔法学院を出ていない。



 こんなに近くに私が目標とする人がいようとは……

 しかも父について聞いていくと、氷魔法の天才だとか、氷の貴公子やら氷魔法であれば王宮魔術師のトップ筆頭魔導師をも凌ぐとか。

 なのになぜそんなに私がさらわれたことで自分責めるんだパパ、私が拐われた時も私を探すのにパパの魔法が大活躍だったって聞いたよパパ。

 すごいじゃんパパ。私、尊敬してるよパパ。かっこいいよパパ。



 隣のパパを見上げて、私が拐われたときの事を話していたときの顔を思い出す。

 本当に別人だよなぁ、今はどっしりと構えてる威厳ある公爵様なのに……



「もうすぐ王城だ、何かあったらすぐに言うんだぞ」


「わかりました、お父様!」



 馬車に乗ってからそんなに時間たってないのにもう到着するのか

 まぁ王城と公爵家そんなに離れてないもんね。


 私は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

 そしかしたら今日会うかも知れないからだ。私の、いや、悪役令嬢クレアの婚約者だった。第一王子のオリエット・レガリアに。



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