思っても言ってはいけない言葉がある
お読みいただきありがとうございます!
夢を見た。
あぁ、これは、私に初めての推しができたことを美羽に話してたときの夢だ……
。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜
一目惚れだった。
くりくりとしたかわいい瞳、男性にしては低い身長、華奢な身体……
あぁ、好き。
たくさん声をかけて欲しい、たくさん話して欲しい、あなたがささやく愛の言葉を聞きたい。
「でもレイリストの攻略、超難関よ?」
「……え、」
「誠実なのかな?ずーーーっと"婚約者に申し訳ないから"って断られるの」
高得点っ!
素晴らしい、さすがレイリストっ!
でも、攻略したい!是非とも、攻略したい!あ、でもそれはレイリストの志を傷つけてしまうのだろうか……うーん、それはちょっと
なんとも表現しにくいけどレイリストは私の理想のままでいてほしいっていうかー……
「まぁどっちにしろさくらは初心者なんだからこの王子からやりなよ。
落とすの簡単だから」
「なるほど王子はチョロいんだね」
「それは言っちゃいけない、それが乙女ゲームだ、しかたないんだ、設定なんだ」
ということで泣く泣く私は手始めに王子を攻略することになった。
まぁ確かに王子は落としやすかった。好感度はすぐに上がった
その代わり悪役令嬢が邪魔してきてハッピーエンドに出来なかったのだが……
まぁ一回一通りプレイすることでゲームの世界のことや人間関係やキャラの大体の設定について知ることが出来た。
もちろんレイリストについても。
レイリストはあの可愛い顔に反して、一度剣を握れば他を寄せ付けない孤高の騎士。
しかも王子に近づいて居ることでいじめられているヒロインを何度も救うのだ。その姿のなんとかっこいいこと。これが惚れずにいられようか。
私の熱は上昇していく一方だった。
だってあんなにかわいい顔なのに性格男前とか、かっこいい!かわいい!まじ尊い!
というかこれが現実ならなにもしてくれない王子より絶対レイリスト選ぶわ……
なぜ私は王子なんぞを攻略してるんだ……
「初心者だから。
王子クリアしたらレイリストやってみればいいよ、というかレイリストほど難関なのも珍しいよ、婚約者のことがすきとかそういうのじゃないっぽいのにね……」
「そうなんだ……」
婚約者かぁ……。レイリストの婚約者ってあの頭良さそうな紺色の髪の美人さんだよね……
いいなぁ婚約者さん。私がこのゲームの世界の人物になれたならレイリストの婚約者さんがいい。
あ、でも愛されてる訳じゃないのか。まぁ、家同士が決めた話なんだろうしなぁ……
「……そう、だからね?」
「え?」
おっといけない、美羽を放置していた。
でも話している内容は先ほどの話の続きのようで……
なんか嫌な予感がする……
「そう、だからきっとレイリストは他の誰かに恋をしているの……でもそれは誰にも言えない、言ってはいけない、許されない恋、禁断の愛!
そう!レイリストは王国きっての秀才、宰相の息子に恋をしているの!いつもは意見が合わず衝突している二人でもその間には△$¥&%◯&¥¥}△¥}()@……」
。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜
…………。
……あぁ、そう、そうだった。
私、ほんと好きだったんだよなーレイリスト……
王子が終わったら、攻略なんてできなくていいから一回やってみようって思ってたんだった。
そんなことを思い出しながら目を開けると目の前には今夢で見たばかりの顔があった。
「…………!?」
び、びっくりしたぁ……
目の前にあった顔は確かに夢で見たものと瓜二つだが、それよりも断然幼い。あぁそうか、話している途中で寝てしまったのか。
たくさん遊んだし、そういえば今日はお昼寝もしていない。眠くなって当たり前だったのかも知れない。
少し身じろぎすると私たちにかかっていた毛布が落ちてしまった。
「あっ……」
「お嬢様、お目覚めになりましたか?」
「う、うん……」
近くにメイドさんが控えていたようで、毛布が落ちたのに気がつき近づいて来てくれた。
「んんぅ……
…………あれ。」
そして毛布が落ちるなどしたことでレイリスト……もといレイ様も目を覚ましてしまった。寝起きの顔も可愛い……
ゲームではこんな顔あり得ない、写真撮りたい、撮って美羽に自慢したい。あ、寝顔も撮っておけばよかった。カメラないけど……
「ふぁぁぁ……寝てた……」
「そうですね……私もいつの間にか寝てました……」
「そうだね……
寝顔可愛かったよー」
え?
先に起きたのは私だったから、レイ様は私の寝顔なんて……
「クレアが先に寝ちゃったから寝顔見てたんだよ
可愛かった」
ぎゃー!!
なんてことっ!
いや、レイ様の口から私が可愛かったという言葉を聞けて喜ぶべきなのか!?
おそらく今私の顔は過去最高に真っ赤になっていることだろう。
頭がパンクしそうである。
そして言ってしまったのだ。
「れ、レイ様も寝顔可愛らしかったですよ!!」
禁句を。
「は?」
気づいたときにはもう遅い。
……レイ様の声が普段より2トーンくらい下がった。
こ、これはヤバイやつかも……
な、なんてこと言ってしまったんだ私は。レイ様に"可愛い"が禁句だってこと美羽に聞いて知ってたのに……!
『レイリストについて今のところ分かってるのは"可愛い"が禁句ってことくらいね……
結構な頻度"可愛い"っていう単語が選択肢に上がるんだけど一回でもそれ選択するとぶちギレられるのよ。
しかもこれが本当に可愛くって……』
と、美羽が言っていたのを思い出す。
こ、こんな小さいときから"可愛い"禁句なのかよ!
こんなに可愛かったらついポロっと言っちゃうって!
「ねぇ、クレア……俺のどこがかわいいのかな?」
あれ、待ってさっきまで一人称"僕"だったよね、いつの間に"俺"に……
じゃない、全部ですぅ、全部可愛いんですぅ
……でも今その笑顔が怖いぃ……
どうしよう……今は怖いですって言ったら許してくれるかな?
そんなわけないよね。えっとー、えっとー……
「でも遊んでいる際に助けていただいたときはとてもかっこよかったです!」
質問の答えにはなってないかもしれないけど、怒りをお納めいただけないだろうか!?
「…………」
「…………」
「…………へぇ……そう……」
「はい!レイ様は何もせず座っておられたらまるでお人形さんみたい……いえそれ以上に可愛いですが、動かれるとまるで物語に出てくる王子様や騎士様のようです!」
ってつい、前半要らんことまで話してしまった。
しかもゲームの時に思っていたことをペラペラと……!
もしかして引かれただろうか、更に怒らせただろうか。
とレイ様の方を見るとなにやら考え込んでいた。
え、なぜ?
「れ、レイ様?」
「ん?」
「ど、どうかされたのですか?」
やっぱり引いちゃった?
いややっぱりお人形さんみたいも禁句だったか……!
「いやー、なんでもないよ」
と言っていつもの笑顔に戻ってくれた。
え? え? 許してもらえた?
大丈夫だったのか?
ま、まぁ、許してもらえたんなら……いっか。




