どこかで手違いでもありましたか?
本編スタートです( ´∀`)
私、成瀬さくらと申します。
ごく普通の高校生です。本当にごく普通なのだ。身長は全国平均くらい、顔もまあまあ普通。
成績は中の下くらいだけど……
とりあえず私はごく普通の高校生なのだ。
まぁあえて私の普通じゃないところをあげろと言うのであれば、以下の二つがそれに当たるかもしれない。
一つは親の顔を知らないこと。
簡潔にいえば赤ちゃんの時に失踪したのだ。
引き取ってくれたのが今暮らしている家、私の親の遠縁らしいのだが私と同い年の子供もいるのに大変だっただろう……
昔はよく親がいないことでいじめられたり、周りにはかわいそうだとかなんとかとよく言われたりしたが今が幸せだから良しとしよう。
二つ目は私の周りはすごい人ばかりだということだ。私が普通だからこそよくわかる。私の友達はすごいのだ。
私にはいつも一緒にいる友達が2人いる。
まず一人目、藍崎翔
私の幼なじみだ。
というか先ほど私を引き取ってくれたという家の長男で幼なじみというか家族に近い。
スポーツ万能で、剣道、柔道、合気道、弓道とか色々習ってたからか、すごく強い。
しかも頭もいい。どれくらいいいかというと子供の頃に行ったIQテストで180という数値を叩き出すくらい。もちろん高校のテストや全国模試は余裕の一位。
ついでに私みたいなどんくさい幼なじみがいるから面倒見も良く、後輩だけでなく先輩、先生にも信頼され現在高校の生徒会長をしている。
あ、最後になったが顔もイケメンの部類らしい。
ちなみに私と一つ屋根のしたで生活しているわけだが色気のある話は一切無い。
一切だ。
まあそういうことになっても困るだけだろうと思うから別になんとも思っていない。
二人目、笹倉美羽
美羽はとにかく美女だ。とりあえず美女。もっというならスラッとしたかっこいい感じの美女だ。
遊んでいる時によくスカウトのために呼び止められるし、これまでに何人の人たちが告白し悲しき涙を散らしたことか……
しかし私は知っている……あれは猫の皮を被った狼だと。
私は忘れない……ある日友達同士が美羽を取り合い同時に告白したとき……
「ねぇねぇ二人とも……今私にいった言葉をお互いに抱き締め合いながら言い合ってちょうだい。そしたら私……ずっと二人の近くにいてもいいわっ」
……と言ったそのときの美羽の期待に満ちたような濁った目を。
美羽は残念なことに腐女子なのだ。しかも重度の。
ついでに言えばオタクでもあり本人は
「人には誰しも地雷というものがある。だから私に同調しろとは言わない。でも私は腐女子である前にオタクでありオタクである前に腐女子なの」
という訳のわからんことを言っていた。
要するに三次元でも二次元でも男同士が仲良くしているのを見ると萌えるし萌えを得るために"推し"の類は買い漁るが、腐としての視点抜きにアニメやら漫画やらゲームは好きということらしい。
と、ここまで私の友達について簡単に紹介したわけだがしっかりと覚えておく必要はないかもしれない。
なぜそんなことを言うかというと、おそらくこの先会うことが出来ないかもしれないからだ。
あぁ、なぜこうなってしまったのか……
もう一度言う!
私はごく普通の高校生なのだ。周りにハイスペックな友達がいようとも、私自身は特に秀でた特技もなく、あえて趣味を言うならお菓子作りと美羽に貸してもらった漫画を読むことくらいの平凡な……
それなのになぜ……なぜ私は、
転生なんてしているのだろう。
……まぁ、とりあえず今この状況にいたるまでの経緯を話してみよう。もしかしたら私も今の状況を理解できるかも。
私は先ほど……よくわからないが下校中に……私、成瀬さくらは死んだのだろう。
…………だってそうでもなきゃ転生なんてしない、よね?
でも実感は湧かない。本当に一瞬のことだったから。
しかしあのとき私が死んでしまったのならなんと言う不幸だろうか……
たかがあんなことで……
そう、下校中。
私は雪で滑ってこけたのだ。
……相当盛大にこけ、打ち所が悪かったのだろう。
苦しむ暇もなかった……
あの日は都会なのに珍しく雪が降っていて雪用の靴なんて持っていないからいつもと同じローファーで下校していたのだ。
それがいけなかった。
本当に一瞬の出来事だった。「あ、滑った」と思った瞬間には頭に衝撃が走り、痛いと感じるより先に意識を飛ばした。
そして気がつけばベビーベッドの上……
なぜベビーベッド。
病院のベッドの上でいいのでは。状況整理したところで意味がわからん。
むしろこれで今の状況を理解しろとかふざけてんのかと怒ってやりたい。
誰に怒るべきなのかわからないけど。
というかまず雪の上をローファーで歩いたらいかんよ!
危ない!
ほんとに!
まぁそんな感じでとりあえず私は死んだのだろう。
ちなみに死んだ先で神様にであって何かしらのお告げを貰うとかそんなのも無かった。
一瞬幽体離脱して赤ちゃんの体に乗り移ったのかと思ったわ……
いやそれもあり得ないかも知れないけど今の状況の方もあり得ない。
良くできた夢といわれたほうが納得いくな……
……さっきベッドの枠に手をぶつけたときめちゃくちゃ痛かったけど。
転生ものの小説とか漫画はたくさん読んだけど実際自分の身に起こったら本気で焦るな……
え、これからどうすればいいんだろう。
とりあえずこの世界がなんなのか知りたいんだけど……
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そしてこの世界に転生し、情報収集を始めて早三ヶ月が経った。
流れるように日々が過ぎ去っていった。
まず最初に言いたい。
赤ちゃんってすごくたくさん寝るのね……
ずーーーーっと眠かった!
心は大人だけど体は赤ちゃん……
情報収集がしたいと思っても人に聞くことも出来ないし……
でも私頑張った。
めちゃくちゃ寝るの我慢した。
私は生まれたばかりの赤ちゃんなのだが転生者だからか、視界もはっきりしているし、音もしっかりと聞き取れた。
そしてこの世界は全体的に中世ヨーロッパのような作りなのだが言葉は日本語……のままなのだろうか?普通に理解出来る。
文字はまだ見ていないからよくわからないが、言語も転生者特権かなにかで勝手に翻訳でもされているのかもしれない。
さながら昼食後の授業を丸一日受けている気分だった……
私がこの三ヶ月でわかったこと、まず名前。
クレア・フロワール
これが今の私の名らしい。クレアまたはクーと呼ばれている。
そしてこの世界には魔法やら魔物やらがいるらしい……
転生したのが美羽だったら狂喜するだろうなぁ……
そんなことを思っていた時、私は気づいてしまった……
クレア・フロワール?
美羽に貸してもらったゲームの悪役令嬢の名前と同じだ。
いやいや、……私みたいなど平凡な人間を悪役令嬢に転生させたところでどうにも出来ないし……
……まさかね。
どうか私の早とちりであって欲しい。
そう思いながら日々を過ごしているといつの間にかさらに三ヶ月というか時が流れ転生してから早半年。
時間が経つのってはやいわー……
……さて現実逃避もここまでだ。
相当長い時間を要したが私は今確信を得た。
本当に私は美羽に貸してもらったゲームの悪役令嬢に転生してしまったのかどうか……
うん……
ゲームの悪役令嬢で間違いないらしい。
私は名前以外にもいくつか証拠を見つけてしまった……!
証拠1 家柄
ゲームと同じく公爵家
証拠2 家紋
よくよく見てみればこの家には至るところに家紋が描かれている。
その家紋は悪役令嬢クレアの持ち物に描かれていた家紋と全く同じ。
理由3 父の顔
今さらだが我が父アルベルト・フロワールは仕事が忙しいらしく長らく姿を見なかった。
私が生まれる少し前から国家間で問題が起こってしまったらしく外交官的な仕事をしている父はそちらにいかなければいけなかったのだとか……
だか今日その顔をみた、見てしまった。
その顔は少し若くなっているが悪役令嬢クレアが断罪されるときに登場した公爵閣下と同じ顔。
…………
……………………
……いや、だから、私を悪役令嬢に転生なんてさせて何をやらしたいんだって!
美羽だったらこの世界のことよく知ってるだろうし死刑回避も出来るだろうけどさ。
私あのゲームほとんど進められて無いもん、美羽に軽く聞いたネタバレ分しか知らんわ……
え。ほんとにどうしよう。絶対転生させる人、間違えてる。
誰が私を転生させたのか知らないけどとりあえず神様と呼ぼう……
神様……!
転生すべきは私じゃ無いと思います!
どこかで手違いでもありましたか!?
さっさとタイトル回収しときましょう