事件発生(7)
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今回も途中で視点が変わりますご注意ください!
~クレア視点~
『まだ……もっと、もっと』
どこかから聞こえるその声につられるように、私はさらに手に魔力を込めた。そして手のひらにある球体を圧縮し、それに炎をまとわせた。
出来た球体ごと手を真上に持ち上げ、手元にもうひとつ小さめの魔力の球体を作り出し……
炎をまとった球体にぶつける。
すると小さな球体がはじけ、もうひとつの球体は凄まじい勢いで空へ上がり……
"ドーン"
大輪の花を咲かせた。
………………たーまやーーー……
…………じゃない。なんだ、今の!
からだが勝手に動いたぞ、なんだ、今の!
というか今私に話しかけたの誰!?幽霊!?私守護霊でも憑いてるの!?私の体乗っ取られた!?
というかうるさっ
鼓膜破れるかと思ったわ!
え、いや、でも、出来た、出来たぞ私!
ありがとう守護霊!(?)
あれが"創造魔法"なのかどうかは知らないが、きれいな花火が上がったぞ!
え、ちょ、もう一回やってみよう!
そしてもう一度先程の工程を繰り返す。今度はどこかから声が聞こえることも無く、しかしスムーズに……
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーン"
出来た!
え、すごいすごいすごい!
ちょ、もう一回!
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーン"
わーすげー!出来たー!
やればできるじゃん私!すごいぞ私!
まぁ欠点として発動に時間がかかるのと私の鼓膜が破れそうなことがあるけど……
あ、そうだ、文字が入ったやつを作りたいんだった!
魔力をこう……調節して……あ、こっちの方が魔力操作技術はいるけど魔力をこめる量が少ない分早い!
これなら『た す け て』くらい一気に打てるかも!
よし!
"ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルーーーーッドンドドドーンッ"
おお!
…………え、出来たのかな?
よくわからなかった……
いや、でもこっちの方向のことを不思議には思ってくれたはず……!
私はここにいるよ!
そして一息つこうとしたとき。
グラッ、ベシャッ
いきなり世界がまわった。耐えられず私はこけた。
…………魔力を使いすぎたようだ……目眩がすごい。
"ウォーム"も解けちゃった……
さ、寒い……
このまま気絶なんかしてみろ、そのまま一生の眠りにつくぞ……!
でもすごい眠い……ちょ、調子に乗りすぎました。さすがに4発はやり過ぎだったかもしれない。というか魔力の消費量がすごい……なんで4発も打てたんだ……テンション上がってたからか。あ、もしかしてリバウンドが起こったとかそんなこと無いよね……いや……ありうる、まじか。
ぱ、パパさーん、誰かーたすけにきてー。
私はここにいるよー……
最後の力を振り絞ってなんとか起きているとザックザックと何かが近づいて来る音が聞こえた。
え、さすがに来るの早すぎない?
あぁ……もしかして拉致犯が先に来ちゃったか……いやまさか魔物?
どっちでも嫌だぁ……あ、でも……もう、無理……
あぁ、ここで私は死ぬのか……短い悪役令嬢人生だったなぁ……
そして私の意識は闇に落ちていった。
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~クレア父視点~
『たすけて』
そんな言葉を伝えられて動かない訳がない。
私が急ぎ隊舎に向かうとすでに30を超える騎士が準備を終え外に出ていた。
「これは……」
なぜこんなに沢山の騎士が外に出ているのだ?
「おい、アルベルト!」
すると後ろから聞き覚えのある声に呼び止められ、振り返ると後ろには幼なじみが立っていた。
ギルバート・グラディウス。
騎士団長でありながら侯爵家の当主でもある、といっても領地は弟に任せっきりだが。
しかしこいつがなぜここに……普段隊舎ではなく邸宅で寝泊まりをしているはずだ……
「ギル、なぜ騎士達が外に出ているのだ?」
「なんだよそんな驚いた顔して、お前の娘を捜すためにおれが集めたんだよ。だいたい幼なじみの一人娘がさらわれたんだ、しかも俺たちが見回りしてる会場からな、捜索の中止だってみんな本当はしたくなかったんだぞ?俺だって心配で眠れなかったしな……
そんななかさっきのあれだろ?おれが命令するより前にみんな勝手に準備始めてたよ。
あれがなにかもわからないし罠かも知れないが……ここで行かなかったら一生後悔する。そう思ったんだ。だから団員を収集した、全員はさすがに無理だったけどな、50人は集まるはずだ。
足りるか?」
感動で言葉もでなかった。
あの言葉を見たのは私だけではなかったのだ。娘を心配してくれていた人がこんなにもいたのか……
「あぁ、十分だ……
ありがとう。この恩はいつか、いつか必ず……!」
「いいよ、そんなん。言ったろ、俺が後悔するんだよ、行かなかったらな。
あ、陛下と宰相にはお前が怒られろよ。俺は『アルベルトの頼みで仕方なく動きましたー』って報告するからな」
ギルバートはケラケラと笑いながら騎士達の方へと歩いていった。
ま、大丈夫だろ、陛下もあいつも心配してたからな。
という言葉を残して。
その後、急ぎ出発した部隊に私も同行させてもらった。
雪中での進行をスムーズにするためだ。私も魔導師のはしくれだ、こんな雪のなかだからこそ私の"氷魔法"を有用に使うことが出来る。
魔法で雪を操り、そのあとを騎士たちがついてきたため、思っていたほど森に着くのに時間はかからなかった。
こんな森のなかで私がむやみに動いたところで邪魔になるだけだ、ここからは兵士たちに任せよう。兵士たちは何隊かに分かれ娘の捜索及び娘を拐ったものの捕縛に向かった。
私にはあまり剣の才能が無く自衛の手段は魔法くらいしか無いのだが、ここに向かうために魔力を大幅に消費していた。
娘を捜しに走り回りたい気持ちを抑え、ギルバートとともに森の奥へと進んでいた。すると森の奥から激しい戦闘音が聞こえてきた。
「すでに戦闘が始まっているのか……!
アルベルト、お前はここで待ってろ」
「あ、あぁ……!」
そういってギルバートは敵陣であろう場所に向かっていった。
私に魔力が残っていれば参戦も出来たのだが……あぁ、今日は自分の無力さをことごとく感じる日だ……
まさかあそこにクレアもいるのだろうか……しかしそれならばあの火の花も打ち上げることもできなかったはず……
いや、今はそんなことどうでもいい、クレアが無事でいてくれるのならそれで……
そんなことを考えているとやがて刃物と刃物のぶつかる音も消えギルがこちらに戻ってきた。
「もう大丈夫なのか?娘は?」
「大丈夫だ……うちの騎士と戦闘になってたのはここに拠点を構えてるって話されてた盗賊だった。
お前の娘のことについても訊問中だ」
「そうか……」
これで娘の居場所がわかればいいのだが……
「団長!」
しばらくすると訊問を終えたのか隊員が二名こちらに走ってきた。
盗賊の話によると確かにクレアはここにいたらしい、しかしいきなり爆発音と閃光がはしった時には監禁していたはずの小屋の中に姿が無かった。
そしてクレアを拐って来たのは自分達ではなくフードを被った魔導師なのだそうだ。しかしそのフードを被った男はいつの間にか姿を消し、捕まえられていない。
現在隊員が捜索中だということだ。
「そうか、了解した。そのまま捜索を続けろと伝えろ。
お前は私たちを令嬢が入れられていたという小屋に案内してくれ」
娘がいなくなったと聞いて一瞬ほっとしたが、この雪のなか娘が一人いるということに気がつき血の気が引く。
しかし、ならば余計立ち止まっている暇はない。
私たちは隊員につれられその小屋に向かった。
「こちらがその小屋です」
盗賊の言うとおり古びた小屋の中に娘の姿はすでに無かった。しかし隊員達が小屋のなかをくまなく捜索していると……
「団長、公爵様っこれ……!」
そこはドアの反対側にある物置のようなスペース、その場所には大人も通れるくらいの大きさの穴が開いていた。
クレアはここから逃げたのだろうか。そう思ってギルバートとともに小屋を出、裏手に向かって走り出した。
早く、早く見つけなければ。この雪のなかあの子は今一人でいるのだ。怖かっただろう、今も怖いだろう、寒いだろう、さみしいだろう。
そんなことを思い走っていると、暗闇のなか一ヶ所だけ明るい場所があった。
「なんだあの光っ……」
私たちがそこに向かっていくとそこには大きな杖を持った老人と、その人に抱えられた我が娘がいた。
「クレア……!」
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