事件発生(6)
途中で視点が変わります、ご注意ください!
~クレア父視点~
私はあの後、リリアナにつれられリビングにいた。
「旦那様、奥様、少しだけでもお休みください」
使用人たちはそう言うが寝られる訳が無い、それはリリアナも一緒だろう。
「旦那様……私は先ほどまで眠らせていただいたのですから大丈夫です。
どうかお休みください……」
「無理に決まっているだろう……」
お前は気を失っていただけだし、さっきまで気を失っていた妻を置いて休むなど余計心配で休めたものではない……
無言の時が流れる。
部屋にある時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
どれくらいそうやっていたのだろう。
すると突然、
"ドーンッ"
突然地を唸らせるような爆発音のようなものが響いた。
「な、なんだ今のは!」
「外を確認して参ります!」
使用人が駆け出していく、まさか巨大な魔物でも近づいたのだろうか……
こんな時にかぎって……!
"ドーンッ"
「……っ、またか!」
また先ほどと同じ音と振動が響いた、いったいなんだと言うのだ……!
すると先ほどそとに駆けて行った使用人が戻って来た。
「外に何か異変は!?」
「そ、それが! 破裂音とともに東の上空に火の造形物が!」
「……なに?」
造形物?
私は妻もつれてそとに出た。
するとまた……
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーンッ"
巨大な音とともに東の空に大輪の花が咲いた。
「…………」
なんだあれは……
「………………きれい……」
口から思わず溢れたようにリリアナが呟いた。
たしかにきれいだった、まるでいま感じている不安が取り払われるようなほど……
しかしあんなものはみたことがない。
魔物?
いや何かの魔法か?
しかしあちらの方向には森しか無いはず……
"ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルーーーーッドンドドドーンッ"
そんなことを考えているとまたしても爆発音が響いた。
今度はいくつか続けて……
しかし今度は大輪の花などではなかった、数回の爆発音とともに空に広がったそれには……
『 た す け て 』
一瞬だったが間違いなく、確かにそう書かれていた。
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~??~
いやー、寒い!!
なーんでこんな日に俺は一人でこんなボロい小屋の見張りをせんといけんのだ……
いやでもこんな割りのいい仕事、滅多にねぇしなー……
俺らは日頃盗賊としてこの森に拠点を置いている。
この森は王都から出るときは必ず通らなければいけないところだから金品を奪うにはうってつけなのだ。
しかし最近は規制やら防衛やらがしっかりしてきて、ここを通るやつらを襲うことが出来ず俺たちは困っていた。
そんな中、俺たちの拠点に怪しいやつが入ってきた。
そいつは黒いローブのフードを深く被っていてなんか不気味だった。自分は魔導師だ、お前たちに頼みたい仕事がある。
そういって俺たちに多額の金銭と食料を提示し、今回の仕事を持ちかけた。
仕事といっても数日後、ある家の令嬢を連れて来るから1日ここに監禁させろ。
ただそれだけ。
連れ去るのが令嬢というから危険なんじゃないかとも思ったが連れて来いという仕事でもないし、
うまくいけばしばらくの間俺たちは食にも金にも困らない。
お頭は了承した。
しかしなんで魔導師なんかがこんなところで俺らみたいなやつに仕事を頼むんだ?
ちょっとでも魔法つかえりゃー仕事には困らねぇだろうに。
まぁ深いことは探らねえ、めんどくさそうな匂いがプンプンするぜ。
俺はお頭に言われたことをやるだけさ。
そんでいま俺が頼まれてるのはこの小屋の見張り。この小屋にはあのフード野郎がどこかから連れてきた見るからに良いとこのお嬢様が入れられている。
そしてこのお嬢様が目を覚ましたらお頭たちに知らせて俺の仕事は終わりだ。
かわいいお嬢様だったぜー、まだ6歳にもなってないようなお子ちゃまだったが俺には分かる。
ありゃあ将来べっぴんさんになるぞ、まぁその将来があるのかどうかは知らねーが。
聞いたときは簡単な仕事だと思ったのだが生憎と雪が降って来やがった。寒くて死んじまうってフード野郎に文句を言ったら毛布だけ渡された……
自分にかけてる"ウォーム"っつう魔法をかけてくれりゃあいいもんを。なんでも魔法の重ねがけは魔力を大量に使うため簡単な魔法だろうと重ね掛け出来るのは上級の魔導師だけらしい。
いや、だったら自分に掛けてる魔法解けよなー……こっちは外だぞ外。
しかも俺の仕事はこの小屋を見張っとくだけ、中に入って見といてもいいんじゃないかと思ったがフード野郎に却下された。
屋根があるだけましなんだがなー……
あー、寒い。
早くこのお嬢様目覚まさねぇかな、そしたらさっさとお頭に伝えて俺は火の近くにでも行くんだが……
あんな良いとこのお嬢様だ、手も足も縛られてこんなボロいところに入れられてたらビックリもするだろう。
まぁいまだ小屋の中から物音はしない。まだ目が覚めてないんだろうなぁ。
というかお嬢様には毛布とかもなかったよな?
もしかしてほっとくだけで凍死するんじゃねぇか?
そんなことを考えていた、
その時。
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーンッ"
凄まじい爆発音が鳴り響き一瞬辺りが明るく照らされた。それは大地が揺れているんじゃないかと言うほどの衝撃で……
「うお!うっるっせー!!
な、なんじゃこりゃ!」
なんだなんだ襲撃か?
ちっ、相手にお嬢様の居場所がばれたのか……
こんな雪の中よく探したな、誉めてやるぜ!
しかし人の声や足音は聞こえない……
いったいどういうことだ。
「なにごとだ!」
お頭とフード野郎が部屋から出てきた。といっても俺もよくわからない。
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーン"
再び破裂音とともに辺りが明るく照らされた。
俺は、おそらくお頭たちも光と音と地響きに驚き目を閉じた。
本当になんなのだ。
こえぇー……
「な、なんだ今のは!」
「わ、わかりやせん!」
"ヒュルヒュルヒュルーーーーッドーン"
再び爆発音が鳴り響く、いい加減鼓膜が破れそうだ。
「おい!お前、連れてきた娘は!」
あ!そうだ!お嬢様!
すっかり忘れていた。
「ま、まだ起きていないかと!」
俺に一度確認してからお頭は小屋の扉を開け、固まった。
"ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルーーーーッドンドドドーンッ"
今度はいくつか同時に爆発音が鳴ったがそんなことはどうでもいい。
小屋の中に娘の姿はすでに無かった。




