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選択の時


ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m


すみません。先程の作者の不注意により、作成途中のお話を次話投稿してしまうという事態が起こってしまいました。さらに焦ってしまって修正も遅くなってしまったので読者の皆様を困惑させてしまったことと思います。以後気をつけます(T▽T)

 


 出したお菓子も食べきったので、片付けをしていると、タイミングよく扉が叩かれた。


 ……結局魔法の書を全然読む時間なかったな。


 そんなことを思いながらも扉を開けるとそこには殿下また一人で……本当にこの人は誰かお着きの人とかは取り巻きはつけないのだろうか、ゲームと違い過ぎていっそ心配になる。(ゲームでは常に一人くらいは使いの者として誰かが後ろに控えていた)


 まぁ、今回は生徒会の仕事……なのかわからないが、リフォンズ卿(前任者)からの手紙は殿下宛のものだったし、これが当たり前だと思うべきなのかもしれない。


 そんなことを考えつつも、身体は流れるように礼をとる。



「わざわざご足労させてしまって申し訳ありません」


「いや、気にするな。やはりレイリストもここにいたか。……隣を開けなくてよかった」



 そう言い、笑う殿下にレイは研究室の汚さを詫びているが、私は「やはり」と言われたことに首を傾げる。

 そんなに私達は一緒にいるだろうか。……いや、いるな。気をつけなくては……一応レイは攻略対象、これからどうなるかわかったものじゃない。



「では、生徒会室まで案内しよう」


「「よろしくお願いします」」



  ちょ、気をつけなきゃとか思ったばっかりなのに声がそろってしまったではないか。いや、今のは不可抗力だろう。不可抗力ということさせてくれ。



「どうしたの? クレア」



 よろしくと言ったっきり、動かない私を心配してレイが私の顔を覗き込む。

 いつもなら全然、全く気にしない行動と距離なのだが、今私は思った。



「レイ……」


「ん?」


「近い」


「……へ?」



 近い。そう、近い。

 今まで、いや最初の頃は気にしていたかもしれないが、年を重ねるにつれて全然、なんとも無くなってしまっていたが、今思った。

 近い。

 近いわこの人、パーソナルスペースが狭いのかもしれない。超狭い。

 こんなに近くに顔持って来るのレイとお母様くらいだよ。お父様でもこんなに近くないわ。



「どうしたの、いきなり?」


「どうしたのじゃないんだよ。ヤバイと思う、今気付いたけどヤバイと思う。この状態で夜会とか行ったら怒られると思う。

 離れよう、とにかく離れよう。当分私たち距離をおいた方がいいと思う」


「え、嫌なんだけど、というか無理でしょ」



 無理じゃない、無理じゃないよレイ。結構重要な問題だよ、これ。君とは"幼なじみ"という関係で、あらゆる修羅場を切り抜けようと思っているんだ。

 それなのに、普段から距離が近いのはいただけない。周りが勝手に噂しだしたらどうするんだ。



「まぁ、二人の距離が近いのは今に始まったことじゃないだろう? 王宮内では結構有名だぞ?」



 真剣に話しているところにそんな横やりが入った。そしてそれにレイは悠長に「そうなんですか?」と返す。



「殿下は余計なこと言わないでください。

 とにかくレイ、しばらく距離を置こう」



 横やりからの話はあまり聞いていなかったので、それが私にとって聞き捨てならないことだとは気づかなかった。



 とにかく、私とレイの関係をとやかく言わせないためには、ある程度の距離が必要だ。

 だって、レイは攻略対象とかそんなの関係なしにかっこいいのだ。ステル以外にも狙っている令嬢は星の数ほどいるだろう、見よ、あの研究室に詰め込まれた贈り物の数々を。

 私は嫌だぞ、修羅場とか。めんどくさいことこの上ない。



「いや、無理だって。なんで今さらそんなことに気づくんだよ。荷物も置いちゃったしどうしようもないんだけど……」


「…ふむ、これが……世に言う痴話喧嘩というやつか?」


「違います。言ってるんですk……「はいはい、とりあえず今は仕事の引き続きね」


「ちょっ、私まだ話して……「あとで聞くから。はい回って、鍵しめて」



 私の言葉に被せるようにレイが言葉を放ち、その言葉通りに動くように誘導する。



「……よし。殿下、案内よろしくお願いします」


「あ、ああ……」



 そして気づけば私はレイに手を引かれて、殿下に案内をされるという今の状況である。

 私の訴えは全て無視された。






 そしてそれから数分後、我に帰った私は頭を抱えた。

 殿下には仲が良いのだなという言葉と共に、私の新たな一面を見ることが出来てよかったと言われ。さらには、日頃からあの感じ(そういえば「余計なこと言わないで」とか言った)で話してくれて良いと許可を出され、もう穴があったら入りたい気分だ。



 真っ赤になった顔を片手でパタパタと仰ぎながら、少しでも落ち着こうと窓の外を見る。


 現在私がいるところは、研究室が集まる棟から、教室がある棟へと繋がる渡り廊下。

 廊下からは庭園が見え、そこでは何人かの生徒達が優雅にお茶を飲んだり、本を読んでいたりしてた。



 その光景は学院に勤めはじめて間もない私ににとっては初めてみる光景……のはずだ。


 しかし私はその光景に、どこか懐かしさを感じていた。


 気のせいだろう。最初に懐かしさを感じたときにはそう思ってその感覚を頭の隅に追いやった。

 しかし、一歩、二歩と進んでいくうちにその感覚は強くなっていく。

 そして一度前を向き、殿下越しに"そこ"が目に入った時、私はその懐かしさが気のせいなどではないと目を少し見開いた。

 庭園に植えられた木から鳥が羽ばたいたのが、視界の端に映る。



 私はこの光景を見たことがある。そして知っている、これから起こることを。



 一歩、二歩とその場所が近づいていく。そして、殿下がその場所に差し掛かった瞬間。



 ドンッ


「きゃっ」「うわっ」



 そこは渡り廊下の突き当たり。教室棟との連結点、T字路のようになった場所。

 そこにピンクブロンドの髪をした女の子が飛び出してきて、殿下と軽く接触してしまったのだ。

 ピンクブロンドの髪をした少女はぶつかった際に小さく声を上げたものの、すぐに持ち直してくるりとこちらに身体を向け、深く頭を下げる。



「も、申し訳ありません……!」



 そして、一度も顔を上げてこちらに顔を向けることなく、少し掠れた声でそう言い、私達の進行方向とは逆の方向へと走っていってしまった。


 しかし私には見えた。……彼女が泣いているのが。

 いや、見えていなかったとしても知っている。彼女は今泣いているのだ、今朝の三人組に罵声を浴びせられて。

 そして現在、《泣き顔を見せないよう走り去る》を選択し、その選択肢通り走り去ってしまってのだ。


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