事件発生(5)
ブクマありがとうございます!
あれからどれだけ走っただろう、あの小屋からいうと結構遠くまで来たと思う。
しかし逃げ出したときは焦っていて気づかなかったのだが、雪が積もっているせいで、足跡がついてしまうのだ。
これだけ雪が降ってたら新しい雪で消えるとも思うんだけど……
しかしそんな心配もしているなか新たな問題が発生した……
魔力の消費が思っていたより激しい。
これは由々しき事態だ、魔力が無くなったら見つかったときに攻撃することも出来ないじゃないか……!
というか多分"ウォーム"と"ミュート"を重ね掛けしてるのがいけないんだと思う……"ウォーム"だけのときにまだまだいける!って思ったもん。
同じ初級の"ミュート"もそんなに魔力使うとは思えないし……
このまま"ウォーム"と"ミュート"を重ね掛けしていたら私の魔力は持ってあと数十分……
足跡が残ってるせいで正直"ミュート"を解くのも不安だけど、"ウォーム"がなかったら間違いなく凍死する……
でも"ウォーム"だけにしたところで朝まで持つかなぁ、ここがどこかもわからないし、もう1つ怖いと思っていることがある……
魔物だ。
私は今まで屋敷のなかで育ってきたし、外出するときも馬車のなか、魔物になんて出会ったことがない。
でもたしかに魔物は存在するのだ。なぜなら日常的に食卓に並ぶから。
結構美味しいのだこれが……じゃない。
そう、魔物。
私のなかで魔物ってこういう山とかそういうところで出現するんだよね……
町中からそんなに離れてない場所だろうから本当にいるのかどうかはわからないけど、もしいるのだとしたら……やばいよね……
拉致犯からも逃げ、魔物からも逃げ、なんて無理に決まっている。
魔力もない。
帰る手立てもない。
……つんだ。
でも私はひとつ考えてることがあるのだ、これは本当に賭け。
出来るかどうかもわからないし、出来たところで誰かが助けに来てくれるかわからない。
もしかしたら私にかける魔法を"ウォーム"だけにして誰かが助けに来てくれるのを待った方がいいかもしれない。
でもなんとなく……
私の中にあるなにかが『やれ』と、叫んでいる気がするのだ。
この魔法を使える魔導師はいまこの王国にもたったひとりしかいない。
それは神の力の片鱗だとも言われる魔法……
いつぞやにパパさんとママさんが話していた魔法を創る魔法……
"創造魔法"
調べていくうちに分かったのだが、この魔法を使える魔導師はほとんどいない。
世界でも数えるほどだし過去にもそんなにいない。
この"創造魔法"は専門魔法と比べても特殊なのだ。まず初級、中級、上級というくくりがない。
『魔法を創る』
この一種類の魔法のためだけに"創造魔法"という言葉が作り出されたからだ。
次に、呪文などがない。
だから本などにも『魔法を創ることができる"創造魔法"というものがある』という風にしか書かれていない。
この国にもひとりだけいるそうだが、その人も新たな魔法を創ったのは数えるほど……さすがは神の片鱗と呼ばれるだけの魔法。
しかし私の中にあるなにかはこれを『やれ』という……。
なに?チャレンジ精神の塊様ですか?
しかしその思いは木々のなかを歩いていけばいくほど強くなる。
そしてなぜかふと思った。
やらなければ……死ぬと。
……なぜかはわからない、でもたしかに。
このまま歩き続けても、ここに居続けても危険だということは分かる。
そして私は思った。
私は誰がなんと言おうとも公爵令嬢だ、間違いなく沢山の人が私の捜索に動いていることだろう。
しかしこの辺りに人が来る気配はない、私の居場所がわからなければ人数は分散されるしこの雪だ。
危険という事で捜索が止められているかもしれない……と、
私のパパさんは有能だ、夜が明ければすぐに捜しだしてくれるだろう。
でもきっと、私の魔力はその時まで持たない。
しかし私の居場所さえ分かればみんな動いてくれるのでは?
だけど私が使える魔法の中には伝達系の魔法はない、
ならば……
創るしかないじゃないか。
そこで私は想像してみた。創れる創れないにしても創るならどんなものを創ろう……と。
そして頭に浮かんだものがある。
それは日本ではそう珍しくもないものだ
"打ち上げ花火"
日本の夏の風物詩である。……いまこっち冬だけど。
でも私の居場所を伝えられるもの……と思ったときパッと出てきたのがこれだったのだ。
あれ大きな音がするから相当遠くまでつれてこられていない限り分かるだろうし……
何よりあれ……現代で私は見たことがある。
花火に文字が打ち込まれてるやつ……あれができれば……
ただ難点として拉致犯にも見えるという点だ……
まぁ大丈夫だろう普通の花火は360°どこから見ても一緒だけど文字のやつは平面に作られているから真下からみたらただの線だと聞いたことがある。
創造魔法の理論はわかっていない。しかも詠唱も魔方陣もないなら思い浮かべようにも無理だ。
だから私は思った、花火を打ち上げるために必要なものを考えようと。
私は花火を作りたい。
基本は火……魔力操作で空に打ち上げる?
いや、花火って火薬を爆発させてるんでしょう?じゃあ火を打ち上げるだけじゃなぁ……あの大きな音もほしいんだし、あとあの華やかな感じがないと花火じゃないよね!
やばい、色々考えてたらワクワクしてきた……!
日本の花火はどうやってできていただろう……
あの世界には魔法なんかない……それなのにあんなにきれいなものを打ち上げられるんだよね。科学の力ってすごいな。
たしか……昔見たテレビでは……火薬玉っていうのを職人さんが作って、それを筒に入れて火を着けるんだよね。
なんであんなに空高くに上がるんだっけ?
ええっと、あ、そうだ……打ち上げる用の火薬が筒の底にあってその火薬の爆発の勢いで上がるんだっけ?
うーん……
火薬玉……今ここに火薬はないし……
いや、魔法にとっての火薬は魔力?……それを……爆発させるんだから……打ち上げは……
私はじっ……と自分の手を見つめた、そして自分にかかっていた"ミュート"をといた。
んー……魔力を火薬……というか爆発させたいなら圧縮させたらいいんじゃない?とりあえず手に魔力を集め、そして手の上に魔力の球体を作る
『まだ……もっと、もっと』
するとなぜだろう、どこかで誰かが私をサポートしてくれているような気がした。
クレアが3歳児らしからぬ動きをしてますが「まぁ、転生者だし」くらいに思っといてください笑笑




