生徒会
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「はーい!」
「俺、開けるよー」
「ん……?」
外から聞こえてきたのは、教室にいるであるレイの声だった。
「なんでレイがここに……」
ドアが開けられたと同時にそんな疑問を口にしつつ
そんな疑問を口にしつつ顔を向けた。
ステルはどうしたのか。
そう言葉は続くはずだった。
「え……」
しかしそのとかなりにいる人物を見て止まってしまった。
「え、で、殿下!?」
そして代わりに出たの驚きの声。
しかし、殿下とレイはそんな私を気遣うこともなく入ってくるのでとりあえず向かいのソファーへと促す。
「久しいな、クレア嬢。……いや、今はクレア先生と読んだ方がいいだろうか」
「お、お久しぶりです。えっと……先生と呼ばれるのはなれてないので出来れば普通に……って、それよりもどうしてこのような所に?! しかもレイ……リスト様まで」
「私が呼んできたんだ。二人に話しておかなければいけないことがあってな」
「そうなんですか……」
「そうそう。あ、クレア。例の女の子のことは気にしなくても大丈夫だよ。あの子達とちょっと話してたら、オリビエが来たから頼んどいた。
俺が一緒にいるより全然いいでしょ?」
「あぁ!」
レイに向けてグッと親指を立て。
「最高」
なんだ、オリビエが来てくれてたのか。だったら安心だわ。
「なにか用でもあったのか?」
「いえいえ! お気になさらないでください!
えっと、それでどういったご用件でしょうか?」
「あぁ……放課後でもよかったんだが……というより詳細は放課後に話したいのだが、クレア嬢は帰宅するのが早いだろうと思って今来たんだ。放課後の予定を開けておいてもらおうと思ってな」
……要は、放課後すぐに帰らないでほしい、と言うためにここに来られたということでしょうか……え、わざわざ?
「……なにかご用でしたら使いの者を送ってくださればこちらから伺いましたのに……」
「学院内への従者の連れ込みは禁止だろう?」
「あー……そ、そうでしたねぇー……」
……いや、確かにそうだけども。
いるだろう! 取り巻きの一人や二人!
あれ、ゲームでは周りの生徒がヒロインに手紙を渡しに来るシーンもあったはずなんだけどな……
「ただ概要だけは先に伝えておこうと思ってな。レイリストも呼んだんだ」
「あぁ……そうだったんですね。
えっと、ところで……レイ、リスト様も座ってください」
実はずっと気になっていたのだ。
今レイは殿下の後ろに直立している。さながら殿下を護衛する騎士だ。
レイは『余計なことを……』とでも言うように私を見つめてくる。
しかし殿下にも座るように促され、渋々といった感じでゆっくりとソファーに腰を下ろした。
私の隣に。
「いや、なんでこっち?」
「殿下の隣に座るほど強い心臓持ち合わせてないから。
というか殿下は俺達に用事があったんだからこれでいいんだよ」
そう小声で話している私達を不思議に思うでもなく、殿下は「ではさっそくだが……」と話し出した。
「生徒会という組織を知っているだろうか」
「……もちろん?」
知ってるもなにも。あれでしょ? あのー……生徒会。
あ、この学院での生徒会のことも知ってるぞ。ステルが選ばれてたから。確か試験での上位二人が選ばれるはずだ。ゲームだとステルとレイリスト。
……まぁ知ってるのはそれくらいで、細かい仕事までは知らないけどね! (重要なのはどれだけ好感度を上げるか)
「それがどうかしたのですか?」
「あー……そうだな。まずこれを読んでもらえるか」
そう言って渡されたのはかわいらしい便箋。
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オリエット殿下へ☆
ごっめんなさーい! オリエット殿下!
私この春休みにー、クレアちゃんに仕事の引き継ぎをするように学院長と王様に言われてたのー……
だからわざわざ帰って授業の方の引き継ぎはちゃんとしたんだけどぉ……生徒会の顧問の仕事内容引き継ぐの忘れちゃった。てへ(・ω<)
でももう王都には帰りなくないのでー……オリエット殿下。
後はヨ・ロ・シ・ク(人´ з`*)♪
殿下ならやれるわ! 私信じてるからっ!
あ、学院長とか王様には引き継ぎちゃんとやりました! って言っちゃってるのでどうかご内密に!
あとアルベルトちゃん。彼にだけはバレないようにして。ばれたら世界が凍るから、マジで。
リフォンズ
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「「「…………」」」
リフォンズ卿……それは私の前任者からの手紙だった。
あ、ちなみに男性だ。
もう一度言っとこう、男性だ。
偏見かもしれないが「田舎に住みたい」とか言い出しそうな人には見えないくらい派手な方だった。
……で。
「私、生徒会の顧問なんですか」
「そうだな……」
「なにも聞いていないんですが」
「リフォンズ卿が話してないなら聞いていないだろうな。学院長も引き継ぎはやったと聞かされているわけだし……
それと叔父上が2,3か月ほど指導に来られていたが、叔父上はご多忙だったから生徒会の顧問の仕事はしていないんだ。生徒会としても仕事の少ない時期だったしな……」
「あ……そうなんですね」
そっかぁ……生徒会の顧問か……
そういえば生徒会室に時々クレアいたな……
うわぁ、あれ顧問だったからなのか。殿下がいるから入り浸ってるだけかと思ってた。あ、まぁそうだよね。記憶の中の私、許嫁だからって付きまとうような人じゃないよなぁ。
「ふーん。クレアが生徒会の顧問ねぇ……生徒会ってもうすぐ行われる新入生パーティーとか、夏にある花火大会の運営とかもしてますよね? 顧問がクレアで大丈夫なんですか?」
「…………」
失礼だぞ! って言いたいけど言えない。
え、そんなことするの? いや、でも実際に運営するのは生徒でしょ?
「クレア……実際に運営するのは生徒でもそれを監督したり、もしものときに指示出したり最終決定するのは顧問なんだよ……」
「え!? まるで心を読んだかのようなお言葉!」
「……声に出てたんだよ」
まじか……
「え、でもそうなんだったら私顧問とか無理……」
「しかし一応経営学等は学んでいるだろう?」
「そうなんですが……」
しかもたぶん一周目でやってるんだけど……
それでも……
「すごい心配なんだけど……」
まるで私の心を読むかのようにレイが言葉をこぼした。
ちなみに今度は声には出していない。
「ならやはりレイリストを呼んでおいてよかったな」
「どういうことですか?」
「生徒会の顧問というのは思っている以上に責任の重い仕事のようでな……一つの失敗で様々な方向から非難を浴びる可能性があるんだ。そんな役職にクレア嬢をつかせるのは心配だ、という話が出ていたようでな。
その打開策として副顧問をつけよう、という案が考えられていたらしいんだ。それで白羽の矢がたったのが……」
「……え、俺?」
「あぁ。レイリストは経営学とかもだが、その他もろもろの学識もあるし、書類だったりも書けると聞いたぞ?」
「え、ほんとレイ?!」
「え、いや……そうなの?」
いや、私は知らないけど。
「実践経験も豊富だから生徒会の顧問くらい簡単だろうと聞いたが……
領で暫く実践もしたそうだが、それだけじゃなく騎士団の書類を捌いたりもしていたんだろう?」
「え? いったいなんの、え、は? …………あれですか!?」
どうやらレイは思い当たる節があるらしいが、私は何の事やらわからない。
しかしレイはと言えば「え、待って俺そんなことまでしてたのか? いや、でも確かに言われてみれば……」とぶつぶつと考え混んでしまって、私の事なんて気にも止めてくれない。
「えっと、それではレイが副顧問で私が顧問……という事でいいんですか?
私としてはレイ、リスト様がいてくれるととても安心するんですが、それならもい最初から彼が顧問でもいいんじゃないかとも……」
「……うーん。それが慣例みたいなのがあってな……」
あ……めんどくさいやつですね。わかりました、これ以上聞きません。
「ですが、誰がその案を出してくださったんでしょう。
レイリスト様を推薦した方にも感謝しなければいけませんね……」
「ん? あぁ、これは全部……「……殿下、その方はクレア"を"心配していたんですよね?」
「ん? ああ、そうだな」
「そうなんですね。そうですよね。
絶対に失敗できないってことか……
わかりました。その役職、心してお受けします」
「お、おう。そうか。ではよろしく頼む」
「はい。……よろしくねクレア」
誰か教えてくれようとした殿下の声を、思考の世界から抜け出したレイが殿下の声を遮ってしまった。
しかもなぜかやる気に満ちている。どうしたんだいったい。
まぁ、お城のお偉いさんの名前なんて聞いてもてわからなかっただろうけどさ、今度あったときにお礼くらい言おうと思ったんだけど……
まぁ、今度聞けばいっか。
話が一段落ついたので時計を見ると、もう教室に行ってもいい時間になっていた。
少なくとも殿下やレイは教室に行った方がいいだろう。
「殿下、そろそろ……」
「あぁ、そうだな。実はもうひとつ二人に頼みたいことがあったのだが……それは放課後話すとしよう。では私は先に失礼する」
「わかりました。わざわざご足労いただきありがとうございました」
「いや、気にしないでくれ。
ではまた放課後に」
そう言って殿下は颯爽と帰っていった。
なんか久しぶりに……というかほとんど初めて長い間話してたけど、なんかゲームのオリエットと今の殿下全然違うよね。
性格も変わってるし、雰囲気も……あれ、もうそれ別人じゃない? でもゲームのオリエット殿下って「俺がどこにいようと俺の勝手」とかっていうひとだよ? あれ、別人なんじゃない?
いや、でも全く異なる訳でもないような……まぁ、本人だから当たり前なんだけど。
……うーん。よくわからんな。まぁ、私……昔オリエット殿下に思いっきり毒を吐いたことあるしな……あれのせいでちょっと変わっちゃったのかもしれない……うん。
そんなことを考えていると、隣に座っていたレイが立ち上がった。
「じゃあ俺達も教室行こう。
なにか持っていくものがあるなら持つけど」
「……あー、大丈夫。大体は空間に入ってるから」
「……クレア実はこの研究室いらない?」
「実はもなにも」
周りを見渡せば、この研究室をもらい受けた日から、物がほとんど増えていないことがわかる。
言わずもがな、必要なものは全て魔法で収納しているからだ。
……まぁ、美羽が来たら色々持ち込むだろうから、この研究室も必要にはなると思うけどね。
「じゃあさ、クレア……」
「ん? なに?」
レイはチラリと自分の研究室がある方向を見て。
「……俺の授業道具、クレアの研究室に置いていい?」
苦笑いを浮かべて言いにくそうに、そんなお願いをしてきた。
数時間後。興味本意でレイの研究室が扉を開けると、次の瞬間、中からものが溢れ出す惨状になっていたとか、その中にお菓子もあって腐ってはないけど他のものに押し潰されてぐしゃぐしゃになってたとか、「鍵閉めときなよ……」「そしたら廊下にこれが山積みになるけどいいの」とかそんな会話があったとかっていうのはまた別の話。
クレアは基本人前ではレイのことを「レイリスト様」と呼びたいと思っています。でもつい時々普通に「レイ」って呼んでしまうという……慣れってすごいですね。
レイリスト、騎士団の書類をなんたら~っていう話は「閑話:考えた結果」に少しだけ"書類整理"という形で書いています。
本当にただの書類整理だったのか……
あとは今回の話の打開策ですね。誰でしょうね言い出したの。アで始まってトでおわる親バカを想像していただけたらなとおもいます。
それではあとがきに長々と失礼いたしました。次の投稿も来週日曜日の予定です。よろしくお願いいたしますm(__)m




