理由
お待たせいたしました!
また、皆様のお陰でpv500,000突破いたしました。ありがとうございます(T△T)
私は目の前の令嬢達を見て、初めて会ったにも関わらず、懐かしさを覚えていた。そうそうこんな感じこんな感じ。ゲームと一緒だわー、と。
でもやっぱり早めに来て良かった。ステルは王都に来るのも怖がってたのに、初めからこんないじめっ子令嬢達に囲まれたら恐怖しか湧かないだろう。
「……」
しかし現在のこの状況……なぜ悪役令嬢の親玉であったはずの私が突っかかられているのか。
ゲームでは令嬢たちがヒロインに突っかかっていたのも、悪役令嬢クレアの指示でやってたってことになってたけれど、ここで断言しよう、絶対違う。
ゲームのクレア完全に罪擦り付けられてるよ、少なからず今はこの子達誰かの指示とかで動いてないって、絶対。大体考えてみればこんな時からクレアがステルをいじめる意味がないもんね。なんでいじめの罪とか擦り付けられちゃうかな、公爵令嬢。
というかそうそう、悪役令嬢云々以前に……一応私も公爵令嬢なんですけど……何これ?
顔を知らない人がとてつもなく多いってこと? ……昨日自己紹介したのにな。
あ、さてはこの人達昨日の式の時寝てた? 令嬢が三人もいて全員熟睡ってどいういうことなんだ。
いいなぁ、私も寝たかった。
そっか、寝てたんだったら今の状況も……
「ちょっと聞いてるの!?
ここは貴方みたいな人が来れるような所じゃないの。特にこのクラスには選ばれた者しか入れない特別な場所よ。
そして、このクラスの一員である私達は選ばれた者なの。貧乏人と同じ空気すら吸いたくありませんわ。さっさとお帰りなさい」
いや、理解できない!
なんでこの人たち私のこと知らないの? 貴族でしょ? 魔導師の卵なんでしょ? 私、公爵令嬢で史上最年少で王宮魔導師になった天才魔術師なんですけど! ちょっ、自分で言わせないでよ恥ずかしい。
しかし知らないものは知らないのだろう。
真ん中に立つ令嬢Aがそう言うと、隣に立っていた令嬢達もそれに同調して私を嘲笑う。
こうも一方的に好き勝手言われてたらイラッともする。
でもここで怒っても仕方ない。誤解が生まれているみたいだし、その理由の半分は私にあるのだと思う。
「えっと私……」
だから優しく、優しく丁寧に自己紹介を再度しようとしていた時。
「なにやってるの?」
「あ、」
「へ? ……って、レ、レイリスト様!?」
聞き慣れた声が聞こえたので、思わず声をあげてそちらの方を向く。
そこにはゲームではもう少し遅めの登校だったはずのレイが立っていた。
突然の、いや。ここのクラスなのだから当たり前だが、現れたレイに驚き令嬢達は顔を真っ青にさせて固まる。
「……なにやってるの?」
レイが再度そう問いながら、こちらに歩いてくる。
令嬢達はさらに顔を真っ青にし、震え上がる。
「あ、あ……え、えっと……」
なんでそんなに怯えるんだろう。もしや悪いことをしてるっていう自覚あり?
それとも単なる緊張? なに、ファンなの? レイかわ……かっこいいもんね、わかる。
しかしレイがこちらに近づいて来るにつれて青くなっていく令嬢達の顔。
これはやはり怯えているのかもしれない。怒られるとでも思ってるのかも。まぁ実際ゲームでは怒られてしまうわけだなのだが……でも今はレイ、別に怒っている訳じゃないと思うよ?
眉間に皺が寄ってたりするけど、それも深い意味は無いと思われる。そして単に疑問に思ったことを口にしているのだ。「なにしてるの?」と。
あ、そしてその質問相手は……
「職員室にも研究室にもいないから何処に行ったのかと思えば……なんでもう教室いるの? まだ、始業には時間があるでしょう?
……というかなんで制服?」
「……いや、ちょっとでも学生気分を味わいたくて」
「「「………へ?」」」
私だ。
◇◆◇◆◇
私は現在"制服"を着ている。基本のデザインは学食とかが無料になるあの制服と一緒。
ただし私のは一定以上の寄付金を学院にすることで着用することができる特別仕様。
見分けるポイントは裾やら襟やらにある金色の刺繍と胸元の国旗を模したバッジ。遠目からだと分からない違いだ。
ここまで言えば令嬢達がなぜ私に突っかかってきたのかと言えば、一言で言える、この制服のせいだ。
しかもこの制服が出来たのは今年から。私が……いや、ゲームでオリエット殿下がステルのために発案したものを私が早々に作らせてもらったのだ。
制服の存在は知っていても、実際に見たことは無かったであろう令嬢方はその違いがわからず、私に突っかかってきたのだ。まぁ、理由の半分は。(もう半分は昨日の自己紹介を聞いてなかったせい)
だから別に私が突っかかってきたことを問題にすることはしない。というか紛らわしい格好をしてしまい本当に申し訳ございません。
ただ、あの、ステルに突っかかるのはやめていただきたいかなと思います。
というか、この制服を私が着ていることも、ステルへのいじめ防止に一役かっているのだ。
たしかにさっきも言った通り「ちょっとでも学生気分を味わいたくて」という理由もある。
いや、だってせっかく学校いるんだし。一応学生でもあるんだし……しかも制服可愛いし。
そうこの制服普通にかわいいのだ。スカートは地球と違って足を隠すために長くなっているのだけど、全然ダサくなくて、シルエットを見ると細く、長くなっているように見えるスッキリとしたデザインで、全体的に清楚な感じが漂ってくるのだ。
私は思った。もうこれは着るしかない。制服なんて学生の頃しか着れないのだ、卒業してしまってからそれを来ても只のコスプレなのだ。着るしかない、と。
ただ、私は教師でもある。それなのに制服を来ていてもいいものなのかとも思った。一瞬ドレスで行った方がいいかなぁ……とも考えた。
しかし結果。絶対制服の方が……楽、という結論に。絶対楽、めっちゃ楽。ドレスとは雲泥の差。
しかも制服だったら毎日ドレス選ばなくていいし、ドレスに合わせて凝った髪型にしなくていいし、装飾品もつけなくていい。あと、コルセットも付けなくていいし、軽いし、動きやすいし、
まぁ、欠点としてはこの制服に合うヒールが無かったことだが、それでも……制服の方がいい。
なので、ものは考えようだと思うことにした。
別に私は始終教壇に立ってるわけではなく、授業を受けることもある。
だったら気持ちを切り替えるためにも生徒として教室にいるときはこの制服。教師としてのときはこれの上に王宮魔導師のローブを羽織っていればいいではないかと。
そ・し・て! ここからが大切な話である。
さっきさらっと言ったのだが、この特別仕様の制服。ゲームでオリエット殿下が作ったものを一足先に取り入れさせてもらったのだ。
ただ、オリエット殿下がゲームで制服を作った理由はそんな大したことない平凡なものだと推測する。
簡単にいえば、好きな子と同じものが着たかったのだろう。
度々言っているが、ゲームにてオリエット殿下のルートで難しいのは悪役令嬢からのいじめを耐えることであり、オリエット殿下を恋に落とすことはさして難しくない。
よって殿下は結構早い段階で、ヒロインに恋に落ち、ヒロインに興味を持ってもらうためなのかなんなのか、制服を作ったりしていたのだ。
なんて幼稚な理由……16歳にして好きな子と一緒のものがほしいとかねだらないで殿下……って、まぁ、それはいい。
だが、どんなに幼稚な理由だろうと、効果は絶大だったのだ。
先ほど、令嬢達が私に言った"国の脛かじり"という単語。これを私はゲームで度々聞いたことがある。おそらく親の脛をかじっている、とかと同じニュアンスだろうと思うのだが、それを言っていたのはこの令嬢達だけではない。
上の学年の令嬢や、最低なことに貴族意識の高い教師とかからも言われていたのだ。
だが、特別仕様の制服が出来てからはこの単語が出てこない。
それに美羽が気づいたのが1ヶ月前。この制服が、どのように作用しているのかはわからないが、いじめを未然に防げるなら作ってしまおうか……と、創案とかを忙しいながら合間に書いて、色んなところに許可を貰って、急ピッチで仕上げてもらったのがこの制服。
……結構大変だった。ほんとに。……レイに説明して作って貰えばよかった。
と、そんな経緯と、やっと出来た制服を着て教室に来たら絡まれたのだと言うことをかいつまんでこの場でレイに"日本語"で説明した。
いやー、こんなところで日本語が役に立つたつとは思わなかった。近くに人がいるから声をレイだけが聞こえるようにするのが難しいし、読唇術とか使われたらどうしようもないからね。まぁ、言ってる意味はわからないだろうけど。
いやー、にしてもレイのスポンジのような……いや、吸水性の良いタオルのようなレイの頭脳にほんと感謝。さすが各国を回ってきただけあるよね。「外国語とか覚えなれた」とか言ってたよ?
なんだそれ、天才かよ。羨まし過ぎるんですけど。……今度言葉が通じない国に行くことになったらレイを連れていこう。そうしよう。
っと、話があらぬ方向へ飛んでしまった。というかいつの間にか周りに人が増えて来ちゃってるんだけど……ど、どうしよう。
最後まで読んでくださりありがとうございますm(__)m
次話を少しでも楽しみにしていてくださればと思います!




