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今話からまた、クレア視点に戻りますのでよろしくお願いいたします!
美羽と翔を呼び出してから3ヶ月という時間が流れた。
美羽と翔は最初に呼び出されてから1ヶ月後、地球から再びこちらの世界に呼び出され、私にゲームの情報を教えてくれた。
その後も美羽は、見落としがないか何度もゲームをプレイしてくれたため、これから起こるイベントを大体把握することが出来た。
美羽には感謝してもしきれないのだが、唯一の心残りを言うとすれば、ゲームを自分でプレイできなかったことだろうか。
ネタバレを聞くだけなんて、そんなこと言っている場合でないとわかっていながらも、虚しいことこの上なかった。
そして美羽と翔は2ヶ月前から週末をこちらで過ごし、大半は遊んで帰るということをくり返していた。
私が忙しくて話をする時間もほとんどなかったせいというのもあるのだが、私が城のお偉いさんや、貴族達と全く楽しくないおべっか合戦をしている間に、王都を散策して珍しいものをみたり、美味しいものを食べたりしているとは何事か。
羨ましいにも程がある。私なんて子供の頃から、魔法に関することばっかりしてたから王都で遊んだことなんて一度もないのに……! 今や王都に長年住んでる私より、美羽と翔の方が王都に詳しいってどういうことなんだ!
羨ましいとしか言い様がないが、二人がこっちの世界にいる間、ずっと遊んでいたわけではないと言うのは私も知っている。
二人は最近……商品開発にいそしんでいるのだ。
作っているものは様々だが、作り方とかは地球に帰ってからインターネットで調べてきているので、ほとんど失敗は無い。
インターネットとかはこっちの世界では圏外になっていて使えないのだが、こっちでちょっと過ごしてみて『あれほしいなぁ』と思ったものは地球に帰って調べてそれをメモしたりしてこっちに来るのだ。
調べたい放題、作り放題。もう出来ないことはない。
簡単なリンスも作ってくれたし……最近では簡単な発電機をつくっていた。
一応美羽と翔は何でもこっちに持ってこれるので、リンスもシャンプーも、持ってこようと思えば持ってこれるのだが、さすがに地球のものを持って来ると、混乱が起きそうなので、作ることにしたらしい。
しかし、だ。その心を作るものを選ぶときにも待っていて欲しかった。
リンスとかはいい、単純に嬉しかったし。子供の頃、欲しいなぁ、とは思ったけど、作り方とか知らなかったから我慢し続けてたからね。
そう。そう言う平和なものってい言うのかな……こう、社会に衝撃を……まぁ、ちょっとは与えてるけど、これくらいのものなら作ってもいいだろう。
でもさ……電気はだめだと思うんだ。だってこの世界、たぶん"電気"を使うっていう概念無かったんだから。
電気だけでなく、この世界は"科学"という概念が少ない。
科学という言葉が無いわけでは無いのだが、ライトとかも光の魔法具だったりするし、洗剤もあるにはあるけどうちでは魔法具を使っているし……なんというか魔法があるせいで、科学に頼らなくてもなんとかなってきてしまったあまり、その観点の成長が乏しいのだ。
雷とか、静電気とかは普通に起きるから、電気の存在を知らないってことはないが、それを使用すること無く、する方法も無く、それを利用しようという考えにも至っていないのだと思われる。
でも電気をこの世界の人間が使うようになったら世界は変わるということは容易に想像できるのだ。
公爵家でも使っている、地球では家電と呼ばれた製品によく似た機器はこの世界では電気ではなく魔力で動く。
制作者が付与した魔力だったり、魔石だったり、使用者の魔力だったりその方法は様々だが、この魔力を付与がされていたり、魔石を使ったものというのはとても、とっても高価だ。
そして使用者の魔力を使用するというものも、前記の二つほどではないがそこそこ値段はするし、使用者が器具に魔力を流すという作業は結構むずかしい上に、そこそこの魔力がいる。
何が言いたいかというと、誰でも使えるものではないのだ。この王都でも使えていない、または買えない人は多いだろう。
しかし、電気となればどうだろう。最初は高値だろうが、ある程度開発が進めば、誰もが平等に使えるようになるんだと思う。
これが初めての試みなのであれば、これから何十年、何百年とかかるかもしれないが、ネットで調べれば電気の歴史とか調べられるのだ。
しかも、何も科学だけに頼らなくてもいい。地球だったら特別な機器とか施設とかじゃないと出来ないものだったとしても、魔法を使ったら結構簡単に出来ちゃったりする。
例えば火力発電をしたいのならば火魔法を、なにかを合成・分解したいのなら錬成魔法を使えばいい。
……もう、出来ないことなんて無い。強すぎる。
ずいぶんと好き勝手やっているので、怪しまれるのではないかと思うと思うが、美羽と翔はお父様達には、"レイが旅先で仲良くなった友人で、再会した後、私と意気投合した人物"ということになっている。
会うまでそう言う設定で、レイがそう話したのだが、レイは二人のことを、レガリア王国から遠く離れた場所にある島に育った者達で、そこには黒髪黒目の人間が多く、この国では見たことも無いようなものがたくさんあったのだ、という風にも説明している。
だから美羽と翔が、この国では珍しい黒髪黒目でも、王都で物珍しそうに騒いでいても、魔法を見て異様にテンションを上げても、この世界に無いものを口にしても、夢のようなものを作ろうとしていても、怪しむ人はいない。
少なくとも公爵家の人たちは、レイリストの友達ということもあって受け入れてくれているようだ。
そして二人は平日、冒険者として依頼を受けたりしているという曖昧な理由で週末にしか来ないことになっているのだが、これもそんなに怪しむ人はいないらしい。
というか"レイの友達"というのが、相当強いようで、そんなにすぐ信用して大丈夫なのかと問うと大体「まぁ、レイリスト様のご友人ですし」と返ってくる。
確かにレイは人を見る目がありそうではあるが、我が家のレイへの信頼度が高すぎる。私もだからなにも言えないんだけどね……
でも二人とも楽しそうに異世界生活を送ってくれてるいるようで本当によかったと思っている。
まぁ、そんなこんなで3ヶ月という、時間が流れたわけだ。
そして私は現在、魔法学院の全生徒、全教員が集まっている講堂に用意された席に座った。隣にはレイが座り、緊張に固まる私を心配そうに見ている。
今日は、全然待ちに待ってない、入学式の日である。
そして最悪なことに、新参者の代表として、私が挨拶をすることになったのだ。そりゃあ緊張もする。
唯一の救いとしては、今年新設された科である武道科からの代表として、レイも挨拶することだろう。
武道科とは文字通り武道を極める科で、勇者がレガリア王国から誕生したことや、騎士団に魔導師が採用されるようになったとこと、師匠やお父様達が進言したことから、新設されたのだ。
この科が出来たことで魔法学院も、魔法・魔術学院に名前を変えた。
そして言わずもがな、レイは勇者としての実績があるからこそ、今日は壇上に上がらなければならない。相応のありがたーいお話を期待されているだろうし、大変だなぁと思う。私だったら絶対嫌だ。
まぁ、勇者のレイの話が後に控えているので私の話なんてろくに聞いて無いだろうから大丈夫だ、という、安直な考えによってちょっと安心しているわけである。
そして、式が始まってしまったわけだが、学院では入学式の前に、在校生に向けて始業式を行い、その後、入学式、新任式を行う。
新任式が一番最後に行われる訳だが、一番最初の始業式からずーーっと面白くもない先生の話を聞かなければいけないのだから全生徒が凶悪な睡魔に襲われていることだろう。
私も壇上に上がらないといけないというのはわかっているのだが、どうも眠たくて仕方ない。
時々起立しないといけないのがとてもうざい。
でもそれを顔に出すことなんで出来ない。令嬢だからというのもある。しかしそれだけでは無い。
私は閉じそうな目を一生懸命開けて、密かに手の甲をつねる。
私は絶対に寝るわけにはいかないのだ。
そう、……だってこれは仕事だから。
首をかくかくさせながら、熟睡している人が何人も目につく。
あぁ、私も寝たい。
でもできない。
だって……
だって私……
今日から先生なんだもの。
お読みくださりありがとうございます。
私も翔や美羽を見たいに気軽に異世界に行ってみたい(。-∀-)




