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事件発生(4)

 


 つ、疲れたっ……



 私はロープと一緒にとれた手袋を拾って着け直しながら辺りを見回した。



 ……うーん。改めてみるとほんとボロいなぁこの小屋……

 これ本当のお嬢様がこんなところに転がされてたら大泣きしそう……


 いやー、連れ去られたのが私でよかったー。

 普通の三歳児がこんなところに放り込まれて放置されてたら泣きわめくぞほんと。

 転生者の私ですら、自分が魔法が使えるとわかったことで少し心の余裕は出来たけど、それでも不安は無くならないのだから。


 でも正直初級の魔法で出来ることっていうのも限られているのだ。

 こんな時になんだけど私が今までに学んだこの世界の魔法について話しておこう。

 この魔法には大きく分けて12種類の魔法がある。



 まず基本の

 "火魔法" "水魔法" "大地魔法" "風魔法" "無属性魔法"



 これらは魔力持ちであれば得意不得意こそあれど誰でも使えるといわれている魔法だ。

 私が今使っている魔法も基本魔法で"ウォーム"は火魔法、"ミュート"は無属性魔法だ。


 基本魔法以外の魔法は

 "氷魔法" "錬成魔法" "聖魔法" "闇魔法" "従属魔法" "空間魔法" "創造魔法"


 通称"専門魔法"と呼ばれている。


 根本的には基本魔法と同じだ。

 自分にできる範囲の魔法を使い続けたり、魔力を増やしたりしていればステータスは上がるし、それまで失敗していた魔法も使えるようになる。

 しかし、専門魔法は基本魔法と違って使用できる者が少ない。


 専門魔法は発動するのも魔導師の才能に依存するし、発動しても基本魔法と違い魔力消費量がその人によって違ったり、ひとによってはいくら努力しても中級、上級の魔法を習得出来なかったりする。しかしそれがなぜなのか、使用できる人が少ないためまだわかっていない。

 ただひとつ言えることは専門魔法を使用できるひとは優遇されるということだ。


 もちろん魔導師というだけである程度職には困らない。

 しかし、基本魔法以外の魔法を使えると専門職の称号をもらえるのだ。

 だから基本魔法以外の魔法は"専門魔法"だなんて呼ばれているとも言える。



 たとえば"錬成魔法"は鍛冶職人に最適な魔法だ。

 もちろん魔法がなくてもできるのだが、圧倒的に早いし質がいい。熟練の人は魔法付与までできるのだそうだ。




 あと転生した私的に"氷魔法"が優遇されるのは驚きだったのだが、この世界には冷蔵庫とか冷凍庫が無い。

 いや、冷蔵庫的なものはあるのだが一般的に冬に出来た氷を地下に運び無属性魔法中級の"セーブ"を掛けてもらって大切に使うのだ。


 冷凍庫はまだしも冷蔵庫がないのは問題だよなぁ、構造さえわかったら冷蔵庫をつくってあげたいよ……


 まあそんな理由で"氷魔法"を使える人は大変優遇される。貴族の家にはもちろん城などでも引っ張りだこだ。





 この世界の魔法についてざっくり話すとこんな感じだ。とりあえずいろんな魔法があるのだ。



 さすがファンタジー。



 さらにここで私が今"リバウンド"無しで使えると判断している初級の魔法について説明しよう。


 初級魔法は主に生活魔法として使われるものをさす。


 火をつける


 水を出す


 風をふかせる


 畑を耕す


 騒音を無くす……まぁこんな感じの平和な魔法。



 なので基本的には攻撃するためのものではない。

 ……こんなこと言いたくないが、"ファイア"も結局は火をつけているだけで相手に向かって飛んで行くわけでは無いので、ほんの少しの足止めにしかならない。


 なので見つかったら"ファイア"でも魔法ぶっぱなす!とか言っても早速ばれる訳にはやっぱりいかないのだ。

 あくまでも最悪の事態の時は、だ。

 正直そんな危険な橋渡りたくもない。しかも人に向かって魔法を放っていいものなのか?日本で育ち、転生したあともそんな血なまぐさいこととは無縁だった私にはそんな勇気ないぞ。



 ……という事で、なんとか安全かつばれないように逃げだせないかと辺りを観察しているのだ。こんなに古い小屋なのだ、すきま風もすごいので、もしかしたらどこかに穴があるかもしれない。


 するといい感じのところがあった。

 ドアの反対側……いまは物置っぽくいろいろなものが置かれているそこには壁の木材が割れて少し大きめの穴が空いていた。

 今の私は"ミュート"をかけているからいくら物音をたてても大丈夫なんだしいけるはず……

 あ、待ってこの穴……三歳児の私の体は普通にとおるかもしれないけどドレスが……


 本日の私、誕生日よろしくふわっふわのフリルたっぷり超豪華なドレスだってこと忘れてた、これのせいでトイレすら手間取ったんだったよ……

 うーん……もったいないけど……裂く?

 いや、そんな力は私には無い……




 うーん……仕方ない。






 脱ぐか。







 ……と、一瞬決意したんだけど、穴に近づいてみたら思っていた以上に小屋がボロかった。

 ……これだったら思いっきり蹴れば壁を壊せそうだ。

 ごめんなさいねぇ、脱がなくて。でも三歳児の肌着姿とかごく少数の人にしか喜ばれないでしょう?

 しかもこれからか雪の中を歩くんだよ?想像するだけで凍えそう。まぁ今"ウォーム"のおかげで全然寒くないんだけどね。



 まぁそれはおいといて、私はまず脱出のできそうな穴の周りにある物をある程度どかしていき、穴から少しだけ見える外を見回した。



「森だ……」



 いや、山?

 木しか見えないからわからない……

 誕生日をしていた会場からどれくらい離れてるんだろう。


 知らないうちに雪が沢山積もってるなぁ……


 目を覚ましてからだったらまだ30分も経ってないはず ……いったいどれくらいの時間気を失ってたんだろう……

 でもとりあえず裏には見張りとかはいないみたい……

 今のうちに穴を広げて逃げよう。



 早くしないと誰か来てしまうかもしれない。



 そして私は壁を殴ったり蹴ったりして壊していった。




 壁を壊すことなんて無いからテンションが上がってしまったとかそういうんじゃない。

 決して。

 まぁそんなことをしていたら簡単に穴が完成した。






 大人も通れるくらいの大きさの穴が……





 ……やりすぎた何て言わない、


 絶対に言わない。


 でもこれでドレスを着ていても余裕をもって通ることができる。あ、一応出来る限り荷物を穴の前に持ってこよう、少しはごまかせるかもしれない。





 こうして私は小屋から抜け出し、森のなかへと走り出した。



お読みいただきありがとうございますm(__)m

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