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穴とサイリウム

作者: 阿部つくも

☆診断メーカーのお題で書きました。

阿部つくもさんには「あーあ、言っちゃった」で始まり、「手を伸ばしても空を掴むだけだった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。

#書き出しと終わり

https://shindanmaker.com/801664

ーーー

 

「あーあ、言っちゃった。そゆこと言われると白けんだよね」

 ぼくが最初に「顔が可愛い」とほめると、女の子は唇をとがらせてサイリウムを下に向けて振った。

 ぼくが落ちた穴は、もう少しで地上へ指が届く深さから五十センチ下がった。女の子は穴のふちに立って、ため息をついてしゃがむとぼくをのぞきこむ。

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

 ぼくはあせる。

「ピンク色のツインテールがとても似合ってる」

 女の子はまたサイリウムを下に振った。

 穴がまた六十センチ深くなった。

「私、普段は髪黒くて結んだりしてないし」

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

「普段の格好もオシャレだけど、今日はまたいちだんといい感じ」

 女の子がサイリウムをブンブン振る。

 穴がさらに七十センチ下がった。

「ようするにオモテしか見てないって事だよね」

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

 ぼくは必死に考えた。ルックスのことを言うのがまずいのかもしれない。

「性格もいいと思う」

 穴が無情に八十センチ下がった。

「性格よかったら、こんな穴に落としたりしてないよ」

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

 ぼくは泣きたくなった。どんどん地上が遠くなる。必死に考える。

「きみに応援される人は幸せだと思う」

 遠い場所でサイリウムが振られて穴はまた九十センチ下がった。

「これ、ただ持ってるだけで別に誰のことも応援してないし」

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

「きみに愛される人は幸せだ」

 力いっぱいサイリウムが振られて一メートルも下に落ちた。

「好きな人はカノジョとラブラブでいるよ。マジでむかつくな、お前」

「もっと私のことをわかってくれないと、穴から出られないよ」

 全身から汗がふきだした。覗いてくる女の子の顔がかなり遠い。

「きみのことが好きなんだ。付き合ってほしいんだ」

「……」

 女の子の顔が赤くなるのが見えた。

「それ本当?」

「本当だよ、好きなんだ」

「うん。わかった。じゃあ、大事なものをあげる」

 女の子は穴の底のぼくに向かってサイリウムを落とす。

「それ、上に向かって降って。そしたら穴の底が上がるから」

 ぼくはしゃがんでサイリウムを振り上げながらゆっくり伸び上がった。

 それでも穴は一・一メートル下がった。

「どうすればいいんだ」

 上から声が響く。

「私もサイリウムも関係ない。あんたが嘘をつくと勝手に穴にはまる体質になっただけ。だから助けられない」

 女の子はそう言って穴から離れた。

「そんな、助けてくれ。助けてくれ」

 本当のことを言ったが、どんなに手を伸ばしても小さくなった空をつかむだけだった。

お読み下さり、ありがとうございました。

よかったら、他の作品もお読みくださいね。

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