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2nd Nightmare  作者: 白川脩
最終章
51/57

第1話


結衣、恭子、歩美の3人を乗せたエレベーターが向かう先は、麗子が待つ屋上。


「覚悟は良いわね?」


歩美が2人に訊く。


「んなモン、とっくにできてらぁ」


「私も問題ありませんわ」


いつも通りのぶっきらぼうな返事を返す結衣と、いつも通りの丁寧な返事を返す恭子。


歩美は2人の顔を交互に見て頷き、それ以上は何も言わない。


エレベーターが止まり、扉が開いた。


眩しい朝日が差し込み、思わず目を細める3人。


「気持ちがいい朝ね」


朝日に視界を遮られて気付かなかったものの、麗子の声を聞いて、3人は正面に彼女が居る事に気付いた。


「ゲームは終わりよ、津神。観念しなさい」


デザートイーグルを取り出し、それを麗子に向ける歩美。


結衣もレイジングブルを構え、恭子もガバメントの銃口を向ける。


麗子は向けられた3つの銃口を見て、不適な笑みを浮かべた。


「3体1…か」


「投降するなら今の内だ。後は知らねぇぞ」


そう言いながら結衣は、リボルバーの撃鉄を引き起こす。


それでも尚、麗子に投降する気は皆無であった。


「正直、驚いてるわ。あなた達がここまでやれるとはね」


「無駄話は結構ですわ。死ぬか降りるか、早く選びなさい」


恭子の無慈悲な冷たい声。


「まぁそう言わないで、恭子ちゃん。最後の機会になるかもしれないのよ?お話くらい、ゆっくりしましょう?」


「お断りですわ。あなたと話す事など何もありません」


「もう…冷たいわねぇ…」


苦笑と共にそう言いながら、3人に向かって歩き出す麗子。


銃を構え直し、麗子を威嚇する3人。


その威嚇に効果は見えず、麗子に立ち止まるような様子はない。


ついに歩美が、引き金を引いた。


射出された.50AE弾が、麗子の眉間に向かって風を切り裂きながら飛んでいく。


麗子は首を傾けてその銃弾を避けて見せ、ニヤリと笑った。


それが合図となったかのように、結衣、恭子の2人も発砲を始める。


3人の銃弾を、麗子はことごとく避ける。


全員の銃の装填してある弾が尽きた所で、一度その攻防は中断された。


「…なんかの映画で見た事あるな」


結衣が苦笑混じりにそう呟く。


「スローモーションで銃弾を避ける映画ですか?それなら私も見た事がありますわ」


そう言ったのは、銃の弾倉を入れ替えている恭子。


「下らない話なんかしてないで、さっさと奴に銃弾を当ててみなさい」


再装填を終えた歩美が、2人にそう言った。


その言葉に、結衣は不機嫌そうに口を尖らせる。


「下らなくはないぜ?人類とコンピューターの戦いっつー興味を持たせるコンセプトの映画は中々…」


「今話す事じゃないでしょうが。さっさと…」


「なんといっても、アクションシーンが魅力ですわよね」


「あんたも真面目にやりなさい!」


歩美に一喝され、恭子はしかられた子供のようにしゅんとなったが、結衣は舌を出して反抗。


「ほんと…仲が良いのね…」


3人のやり取りを見た麗子はそう言って、くすくすと笑った。


「…余裕みたいね」


忌々しそうに訊く歩美。


「余裕ですもの」


麗子のその発言には、3人全員の眉がぴくりと動いた。


許せぬ発言。


「上等だこの野郎ッ…!」


3人の中で最も感情的な結衣が、リボルバーをしまって素手で麗子に走っていく。


麗子はそれを受けるように身構える。


結衣の走り様の右ストレート。


それは軽く受け流され、続けて身を翻しながらの大振りな左フック。


それも流されたが、そこまでは予想通り。


本命である後ろ回し蹴りを、結衣は麗子の首を狙って放った。


「残念…」


蹴りを片手で受け止められ、もう片方の手で胸部を殴り付けられる結衣。


絶大な力によるその一撃は、結衣の身体を元居た場所である歩美と恭子の元まで押し戻した。


「畜生…こいつは中々効くねぇ…」


飛び込んでいった際の勢いは削がれてしまい、結衣は立ち上がって殴り付けられた患部を手で押さえながら苦笑を浮かべる。


「(肉弾戦は…)」


「(敵いませんね…)」


歩美と恭子は冷静になり、麗子に殴りかかりたい気持ちを必死に抑えた。


そんな2人を麗子は煽る。


「あら、あなた達は来ないの?もしかして怖じ気付いちゃった?」


見え見えの挑発。


それを聞き捨てる事ができなかったのは、恭子であった。


「我慢の限界ですわッ…!」


たった一言で我を忘れた恭子は、赤い瞳で麗子を捉えながら彼女に向かって走り出す。


その様子を面白そうに見ながら、身構える麗子。


走り様に攻撃を仕掛けた結衣とは異なり、恭子は麗子の前まで来た所で一度立ち止まる。


そして、小振りな連続攻撃を仕掛けた。


麗子はそれを、全て捌いていく。


恭子も隙だけは見せないよう、大振りな攻撃は控えている。


避け続けられるが、人外である恭子にはスタミナ切れという概念は無い。


しかし、それは麗子も同じである。


彼女は正確に、恭子の攻撃を捌き続けた。


「…埒が明きませんわね」


我に返った恭子が攻撃を止め、溜め息混じりにそう呟く。


「そうでもないわよ?疲れてきちゃったわ、私」


「ナメた口を…」


思わず再び攻撃を仕掛けそうになったものの、


「恭子。待ちなさい」


歩美のその声で落ち着きを取り戻し、恭子は麗子を見て舌打ちをしてから戻っていった。


「随分と冷静なのね、歩美ちゃん。もっと血の気の多い子かと思ってたわ」


「このバカと一緒にしないで頂戴。勝ち目のない戦いなんて仕掛けないわ」


「…バカって言うなよ」


恥ずかしそうに、恨めしそうに歩美を睨む結衣。


歩美は気にせず、話を続けようとする。


それを遮るように、麗子がこう言った。


「それじゃあちょっとおかしいわよねぇ…。勝ち目のない戦いを仕掛けないのなら、どうして私の元に来たの?」


「勝ち目のある戦いだからよ」


「…と言うと?」


「確かに…」


言葉を言い掛けて、銃をしまう歩美。


「あんたと真正面からぶつかったって、この3人じゃあ勝ち目は無いわ」


「何をするつもり?」


「何もしないわ。…そろそろ出てきなさい」


歩美はそう言って、振り返る。


その行動には結衣と恭子、そして麗子も驚き、そちらを見る。


すると、視線の先にあった非常階段から、1人の女性が現れた。


「…気に入らないわね。気付いてたの?」


明美であった。


「この上なく忌々しい気配が漂ってたわ。気付かないワケがない程のね」


「命の恩人にその言い方はどうなのかしら」


「どうなのかしらね」


「………」


明美は溜め息をつき、3人の元へと歩いてくる。


「こりゃまた…」


「意外な登場ですわね…」


やってきた明美を怖いものでも見るかのような目で見る結衣と恭子。


明美はふっと鼻で笑う。


「安心しなさい。私の目的を邪魔しなければ、敵対するつもりは無いわ」


「目的って?」


結衣が訊く。


しかし、明美は何も言わずに結衣を一目見ただけで、答えようとはしなかった。


「無視かよ…」


苦笑する結衣。


「それで…」


麗子が話を再開させる。


「明美ちゃんが加勢したのはわかったけど、どうするつもりなの?」


その言葉に、眉をひそめる歩美。


「…4対1よ?」


「それは間違ってるわねぇ…」


「…は?」


くすくすと笑って、手を上げる麗子。


それに呼応するかのようにエレベーターの陰から現れたのは、日本刀を携えた女性。


「…どうして?」


思わず苦笑を浮かべる歩美。


他の一同も、似たような反応を見せる。


「ごめんなさいね。こう言う事よ」


現れた葵はそう言いながら麗子の隣へと歩いていき、4人に身体を向ける。


一同が困惑している中、麗子はくすくすと笑いながらこう言った。


「4対2ね…」


第1話 終



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