第14話
麗子の言葉を元に、マンションの20階へとやってきた歩美と茜。
広いホールのような場所で2人を待っていたのは、明美であった。
「…来たわね」
2人に気付き、背を向けたままそう呟く明美。
「こんな所で何をしているのかしら」
歩美のその言葉に、明美は振り返りながら銃を取り出し、銃口を歩美に向けて答えた。
「あなたを待ってたのよ。歩美姉さん」
「…どういうつもり?」
「大人しく死んで頂戴。面倒な事は避けたいわ」
「何を言ってるのか理解できないわね。質問に答えなさい」
銃口を見せ付けられても一切動揺していない歩美を見て、明美は呆れた様子で溜め息をつき、銃を下ろした。
「…脅しだけで言う事を聞く程、聞き分けの良い人間じゃなかったわね」
「それで脅してるつもりなら、二流以下ね」
お互いに煽る事を止めない沢村姉妹。
そんな2人を見かねた茜が、2人の間に割り込んだ。
「ちょっと待ちなさいよ、2人共。話くらい穏やかにしたらどうなの?」
「茜。話っていうのは人間と人間が言葉を交わす事を言うのよ。ケダモノみたいな奴を相手にする事は話とは言わないわ」
「だからそういう事を言うのを止めろって言ってるのよ…!」
「私は事実を述べてるだけよ」
「…もういいわ」
歩美の説得を諦めた茜は、明美に顔を向ける。
「…そう言えば、こうやって面と向かって話をするのは初めてね。沢村明美ちゃん?」
「神崎茜…。葵の妹だったわね」
「えぇ。…そう言えば、姉さんは?」
「さぁね…。この建物に入った時に別れたわ。別に、同じ目的で動いてるってワケでも無いし」
「そう…。私からあなたに1つ、訊きたい事があるの」
「何よ」
「あなたの目的は津神麗子が製作したウイルス。だったらどうして、歩美を殺す必要があるの?」
「その質問に答えた所で、私に何か得があるとは思えないのだけれど」
「あぁ…あはは…」
苦笑を浮かべ、茜は顔を背けてぼそっと呟く。
「まー似てるわねー…この姉妹…」
そこで、茜を押し退けるように歩美が一歩踏み出す。
「こいつは関係無いわ。殺すのは私だけなんでしょう?」
「邪魔をしてくるようなら殺せって言われてるから、満更無関係ってワケでも無いのだけれど」
「それなら邪魔はさせないわ。それで良いわね」
「…どうかしら」
曖昧な返事を返す明美であったが、歩美はもとより彼女の返事に期待していなかったらしく、気にも留めずに歩き出す。
「ちょっと…!」
「誤解しないで」
歩美は茜だけに聞こえるように小さな声でそう言い、こう続けた。
「荒事は避けるつもりよ」
「避けるって…どうやって…?」
「まぁ見てなさい」
明美に向かって歩き出す歩美。
その時、2人の背後にあるエレベーターの扉が開いて、その中から麗子が姿を現した。
「良かった。間に合ったみたいね」
「あ、あなた…!」
反射的に銃を取り出し、銃口を麗子に向ける茜であったが、ほぼ同時に麗子が手を伸ばして彼女の銃を強引に下ろさせる。
「待って、茜ちゃん。私はあなた達と戦うつもりで来たワケじゃないの」
「は…?」
「うふふ…。見に来たのよ。"姉妹喧嘩"をね」
麗子はそう言って、歩美の後ろ姿に視線を移す。
勿論歩美は彼女の出現に気付いていたが、あえてそちらを見ずに歩き続ける。
途中、彼女はこう呟いた。
「…丁度良いわ」
「何が丁度良いのよ」
既に近くまで来ていた事からその呟きは明美の耳にも聞こえたようで、彼女は怪訝な表情でその意味を訊く。
「何でもないわ。それで、本当にやる気なの?」
歩美は質問をはぐらかしたが、明美は気にせずに答える。
「当たり前でしょう。死んでもらうわ」
「取引でもしたのかしら」
歩美の呟くようなその一言に、明美は眉をひそめた。
「…何?」
「あんたの目的は津神が持っているウイルス。それをやるから私達を殺せと言われれば、あんたに断る理由は無いものね」
「…私が誰と取引をしたって?」
「津神、本人よ」
歩美の即答に、明美は驚いた様子で言葉を失った。
そんな彼女を見て、歩美は鼻で笑う。
「…別に驚くような事じゃないわ。ちょっと考えれば、すぐに浮かんでくる答えよ」
「そこまでわかってるなら…」
リボルバーを取り出して銃口を歩美に向け、撃鉄を引き起こす明美。
「これ以上話は必要無いわね。始めるわよ」
しかし、歩美はそれを見ても、銃を構えようとはしなかった。
「最後まで話を聞きなさい。誰がやるって言ったのよ」
「…はぁ?」
「私はあんたと戦うつもりは無いわ。…いえ、正確に言えば、"今は"戦うつもりは無いって言った所かしら」
「話が見えないわ。わかりやすく言いなさい」
「考えてもみなさい…」
歩美はそう言いながら、ついに銃を上着の内側に隠してあるショルダーホルスターにしまった。
「あんたはあの女に利用されてるのよ。確かに、あんたは私を殺したがってるようだし、考え方によれば一石二鳥とも言えるわ」
「…何が言いたいの?」
「あの女の趣味の悪い余興の為に、私達が役者になる必要は無いと言ってるのよ。ウイルスなら、あの女を殺して奪えば良いじゃないの。私を殺したければ、その後いくらでも相手をしてあげるわ」
そこで明美はようやく歩美の魂胆を見抜き、嘲笑を浮かべてこう言った。
「へぇ…。歩美姉さん、私を説得してるの?」
「どう捉えて貰っても結構よ。ただ、今だけはお互いの利害が一致していると思うだけ。津神を倒せばウイルスは奴の手から離れるし、私達は津神の身柄を拘束できる。そうでしょう?」
「………」
しばらく黙り込み、腕を組んで見つめてくる歩美を睨み付ける明美。
しかし、突然ふっと笑ったかと思うと、彼女は銃を下ろして歩美の元に歩いていった。
「言われてみれば…」
そして、彼女の隣に並んでエレベーターの前に居る麗子に視線を移す。
それから歩美の顔を横目で見て、こう言った。
「確かにそうね」
歩美はその言葉に対し、目を閉じて呆れたように鼻で笑う。
2人は麗子の元へと歩き出した。
「ふむ…。これはまた、意外な展開ね…」
「どうするつもり?津神麗子さん。あの2人が手を組んだら、誰にも止められないわよ」
「茜ちゃん。あなた、私に加勢してくれる?」
冗談っぽくそう訊いた麗子であったが、茜はわざとらしい笑い声を上げた後、彼女から離れて沢村姉妹の元へ歩いていきながらこう言った。
「残念だけど、私年上嫌いなのよ」
「うふふ…。それは残念…」
麗子はそう言いながらも、実に楽しそうに笑っていた。
そんな彼女から離れて沢村姉妹の元にやってきた茜は、歩美の隣に並ぶ。
「ちょっと、びっくりしちゃったわ」
歩美はその言葉に、視線を正面に居る麗子に向けたまま答える。
「…何の話よ」
「まさか説得して和解するとはね」
その言葉に、茜とは逆側に居る明美が反応する。
「和解じゃないわ。一時的な休戦よ」
「そうよ。こっちだって和解するつもりは更々無いわ」
「ふふ…。はいはい…」
茜は嬉しそうに、くすくすと笑った。
「どういうつもり?明美ちゃん。約束と違うような気がするんだけど…」
向かってくる3人の中、麗子は明美にそう言って首を傾げて見せる。
「気が変わったわ。歩美姉さんとその他の連中を敵に回すよりも、あんた1人を殺す方が楽だと思ってね」
「楽…か。随分とナメられちゃったものね」
「気付いているハズよ」
今度は歩美が口を開く。
「あんた1人じゃ私達には勝てないわ。大人しく投降しなさい」
「ふーん…。そこまで言うなら、相手をしてあげるわ」
右手で目元を覆い、ニヤリと笑う麗子。
「全力でね…」
そう言って右手をゆっくりと下ろすと、先程までは黒かった彼女の瞳が赤色に変わっていた。
それと同時に銃を構える3人。
麗子は3人が引き金に指を掛けるよりも早く、3人の元に瞬間移動と言えるような早さで潜り込む。
3人はそれぞれ左右後ろに移動し、麗子から遠ざかる。
そしてほぼ同時に、麗子に銃口を向けて引き金を引いた。
麗子は3人が発砲した銃弾を見切って避け、そのまま一番近くに居た茜の元に姿勢を低くしながら接近し、彼女の顎にアッパーを放つ。
そのアッパーを身体を反らして間一髪で避け、そのまま麗子の顎を蹴り上げる。
茜の鋭い蹴り上げを麗子は片手で受け止め、動きを止めた所に顔面めがけて渾身のストレートを打ち込む。
茜に回避する術は無かったが、そのストレートよりも早く沢村姉妹の2人が麗子の頭部を狙い、左右から同時にハイキックを放つ。
麗子が攻撃を中断して回避を優先した事により、茜は難を逃れる事ができた。
「ふぅ…。助かったわ。お二人さん」
「足を引っ張らないで頂戴。木偶の坊は歩美姉さん1人で充分だわ」
「そうよ。協調性の無いお荷物は1人だけでも既に大変なんだから」
そう言ってから、互いに睨み合う2人。
そんな2人を見て、麗子はおかしそうに笑い出した。
「仲が良いのねぇ…。見ていて微笑ましいわ」
「誰と誰が…」
「仲が良いですって…!?」
歩美、明美と続けて走り出し、麗子に殴りかかる。
その後ろで、茜は溜め息をついてこう呟いた。
「息ピッタリね…」
沢村姉妹の2人が猛攻を仕掛けているのを見て入る余地が無いと思った茜は、その場で2人を見守る。
そんな行動を沢村姉妹の2人が見たらすぐさま突っかかってくるハズであったが、それに気付かない程に2人は激しい攻撃を繰り広げていた。
何も言わずに連続攻撃を仕掛け続ける2人。
それを、変わらぬ余裕に満ちた表情で捌き続ける麗子。
左足による後ろ回し蹴りから右足での回し蹴りという二段攻撃を正面から歩美が仕掛け、間髪入れずに背後から明美が掌底突きを放つ。
その2人がかりの連続攻撃すらも通じず、歩美の蹴りを後ろに下がって避け、背を向けた状態のまま明美の掌底を避けて彼女の腕を掴み、そのまま彼女の身体を歩美に向かって投げつけた。
歩美は投げられた明美の身体を避け、明美は受け身を取って立ち上がる。
「ちょっと。妹が投げられたのよ?姉なら受け止めなさいよ」
「お断りよ。こんな時ばかり姉妹面しないで貰えるかしら」
再び並んでぎすぎすとし始める2人。
そこで、2人の後ろで見ているだけであった茜が突然走っていき、2人の頭に手をついて飛び上がって麗子にドロップキックを放った。
予想外の攻撃に動揺したのか、麗子はその攻撃を避ける事に失敗する。
茜の足は麗子の胸部を捉え、彼女の身体を転倒させた。
蹴りの衝撃による反動を生かし、宙返りを決めて見事に足から着地して、茜は沢村姉妹の2人に顔を向ける。
「どう?中々良い奇襲だったでしょ?」
満足げな茜とは逆に、沢村姉妹の2人は暗い表情で茜に歩み寄る。
そして突然、2人は茜の頭を同時に叩いた。
「痛っ…!何すんのよ!」
「それはこっちのセリフよ!いきなり後ろから人の頭に手を掛けて突拍子も無い事しないで頂戴!」
「後ろから私達を襲って津神に寝返ったのかと思ったわよ!」
沢村姉妹の怒濤の訴えに、思わず怯んで苦笑を浮かべる茜。
「あぁ…えぇと…。まぁほら、津神に一撃は与えられたワケだし…」
「何が"一撃は与えられた"よ。よく見なさい」
親指を肩の辺りで立てて、背後を指差す歩美。
茜が苦笑を浮かべたまま彼女に従ってそちらを見てみると、確かに派手に転倒したハズの麗子が、何事も無かったかのように腕を組んで笑みを浮かべながらこちらの様子を見ていた。
「あ、あら…?」
もはや言い訳すら浮かばなくなった茜の困った顔を見て、麗子はくすくすと笑う。
「中々良い攻撃だったわよ。茜ちゃん。死ぬかと思ったわ」
それが嫌味であるという事は、余裕綽々の彼女が浮かべているいたずらっぽい笑みにこの上なく表れている。
「ごめんなさい…」
肩を落として蚊の鳴くような弱々しい声を漏らした茜に、沢村姉妹の2人の鋭い視線が突き刺さった。
「さてと…もうちょっと遊んであげたい所なんだけど…」
不意に麗子がそう言い出し、組んでいた腕を解く。
その様子に何か不審な気配を感じたのか、3人は同時に身構えた。
3人の臨戦態勢を見ても麗子に変化は見えず、彼女は余裕が見て取れる歪んだ口元からふっと笑みをこぼす。
「一旦、区切りましょうか。他にも見逃せない楽しい事が沢山あるのよ」
「随分と楽しそうね」
嫌味っぽくそう言ったのは明美。
「えぇ。楽しいわよ。例えば…飼い主に忠実な可愛いペットが、ウイルスを注入されて変わり果ててしまう様を見たり…とかね。他には…」
「それはどういう事かしら…!」
銀色のデザートイーグルが、歩美の怒声と共に麗子に向けられる。
「歩美…?」
彼女の様子が急変した事に、驚きを隠せない茜。
明美は麗子の言葉の意味を悟ってはいたが、歩美とは異なり意には介さず、また、彼女のように動揺したりもしなかった。
「勘が鋭いのねぇ…。きょとんとしてるのは茜ちゃんだけよ?」
「ど、どういう事よ…?」
「上条亜莉栖。知ってるわね」
明美の声。
茜は彼女に顔を向け、訊き返す。
「亜莉栖ちゃんがどうしたのよ…」
茜は亜莉栖の名前を口に出した所で、全てを察した。
同時に湧き出てくるように覚えた、怒りの感情。
歩美の隣で、茜は彼女と同じように銃を構えた。
「あんたまさか…!」
「うふふ…。そういう事。今頃どうなってるのかしらね…。沢村姉妹の喧嘩が見れないのなら、もうここに居る意味は無いわ。私はそっちを見に行くとしましょうかね」
愉快な様子で笑いながら、エレベーターへと歩き出す麗子。
足を一歩踏み出した所で、1発の銃声と共に彼女の胸部に風穴が空いた。
「…ふーん。なるほどね」
流れ出てくる血を指で絡めとり、それを愛しそうに見てから、麗子は振り返る。
歩美のデザートイーグルの銃口が硝煙を燻らせているのを見て、麗子はニヤリと笑った。
次の瞬間、彼女の顔から笑みが消え、彼女の姿が目の前から消える。
何が起きたのかを一同が知るよりも前に、歩美の身体が宙を舞った。
「歩美ッ…!」
地面に叩き付けられた歩美の身体を見て、茜が反射的に彼女の名前を呼ぶ。
同時に気付いたのは、先程まで歩美が立っていた場所に麗子が居るという事であった。
そして、麗子が一瞬で距離を詰め、彼女の顎を殴り上げたという事にも気付く。
突然の事に気が動転していた茜は、次に自分が何をするべきなのかを迷ってしまう。
その答えが出る前に、麗子の指が茜の首に絡み付いた。
「うふふ…茜ちゃん。寸剄って聞いた事ある?」
茜の身体を片手で持ち上げながら麗子がそう訊くが、茜は首を圧迫されている事により声が出せない。
麗子はそれを知っていながら訊いているらしく、返答を待たずに続ける。
「なんでも中国かどっかの武術のものらしいんだけど…凄い威力らしいわよ」
そして、空いている方の手を茜の鳩尾の部分に添えるように持っていく。
「こんな感じかしら…?」
麗子が力を込めたような素振りを見せた瞬間、茜の身体がびくんと跳ね上がる。
そのまま、彼女の身体はだらんと力無くぶら下がった。
「さて、残るは…」
茜の身体を乱雑に投げ捨て、明美の方に身体を向ける。
しかし、彼女が居たハズであった場所には、誰も居なかった。
麗子が不審に思って辺りを見渡そうとした瞬間、後頭部に何かを突き付けられる。
それが銃口だと言う事を麗子が悟った瞬間、頭の後ろで轟音が鳴り響き、視界の半分が一瞬で無くなった。
「あら…ちょっと油断しちゃったかも…」
右目の辺りに大きな穴が空いたにもかかわらず、麗子の口元は歪んでいる。
その笑みは、麗子に致命傷を与えたハズの明美を苛立たせた。
「これでもダメなのね…。流石にくたばってくれても良いんじゃないの?」
溜め息混じりにそう言って撃鉄を引き起こし、次の発砲の準備をする明美。
「そうはいかないわ。私はまだ楽しんでいない…」
そこまで言い掛けた麗子に、突然異変が訪れる。
彼女は激しく咳き込み始め、どす黒い血を吐き出した。
「(暴走…?)」
明美は銃を構えたまま、眉をひそめてしばらく様子を見る。
咳が止まった麗子は珍しい事に弱々しく笑い、明美にこう言った。
「やっぱり仕切り直しにしましょうか…。この傷は流石にちょっと時間が必要だわ…」
「はいそうですか…と見逃すとでも思ってるの?」
「見逃すわよ…やむ無くね…」
麗子がそう言った瞬間、部屋の窓ガラスがけたたましい音と共に割れ、そこからイリシオスが次々と侵入してくる。
その様子を見た明美は思わず苦笑を浮かべ、こう呟いた。
「…ここ20階よね?」
「あの子達には容易い事よ。垂直だろうが、指を掛ける隙間さえあればどこでも登れるのよ」
それを聞き、明美は面白くも無さそうに鼻で笑う。
「それは結構…。話はいいわ、さっさと消えなさい」
「あら…」
銃口をイリシオス達に向ける明美を見て、驚く麗子。
続けて麗子が言おうとした事に、明美は彼女が喋り出すよりも早く答えた。
「勘違いしないで貰えるかしら。こいつらを片付けたら、次はあんたよ。見逃すのは今回だけだからね」
「うふふ…。そう…」
踵を返し、エレベーターに向かう麗子。
その途中で、麗子は背を向けたまま明美にこう言った。
「姉妹愛ってのは素敵なものね」
その発言にカチンと来た明美は思わず麗子の方に顔を向けたが、その時には既に彼女はエレベーターに乗り込んでいて、閉まっていく扉の間からこちらに手を振っている姿が見えた。
「…やっぱり今すぐ殺しに行こうかしら」
そんな彼女の憤る気持ちを静めたのは、目の前にやってきたイリシオスの威嚇の声。
そして、気を失って倒れている歩美の姿であった。
「…貸しにしとくわよ。歩美姉さん」
明美はそう呟き、目の前のイリシオスに銃口を向けて引き金を引いた。
第14話 終