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第6話 機械兵VSブラックパーティー

 突如現れたサソリの尾を持つ機械兵。ブンブンと機械仕掛けの尾を振り回し、近くの机椅子を破壊して行く。


「くそ!こんな町のど真ん中になんで機械兵がいやがる!」


「あぶねえぞ!魔法使いは下がれ!」


 幸い『パーティナイト』には数多の剣士、武闘家、魔法使いが集まっている。だからだろうか、機械兵1体現れたところでといった感じで緊張感はそれほどなかった。


「大丈夫?今回復してあげる」


 吹き飛ばされた魔法使いに回復を施すマヤ。この会場には僧侶はマヤ一人だった。


「ありがとう。僧侶さん。死ぬかと思った」


「ん……? あなた怪我は……」


 吹き飛ばされた魔法使いには怪我はなく、人間が稼働できる首の範囲を超えてこちらを振り向く。

 目は暗黒より暗く、空洞になっており、ニヤッと口が裂けた。


「マヤ!離れろ!」


 ディーゼルが叫ぶ。と、同時にマヤは自分に『防御倍加(タフガル)』を詠唱破棄で(バフ)る。


「シネェエエ!」


 魔法使いに化けた機械兵が、腕をチェーンソーに変化させマヤに切りかかる。『防御倍加(タフガル)』をかけてないと一瞬で腕が吹き飛ぶ勢いだ。


 腕に『回復魔法(リカイフル)』を掛け、『攻撃倍加(ガケタル』を同時詠唱していく。


「舐めんじゃねえ!」


 マヤの『攻撃倍加(ガケタル)』が掛かったストレートは魔法使い機械兵の顔面を捕らえる。

 一気にホールの反対側の壁まで吹き飛んでいく。砂埃を上げ壁が崩れ落ちる。


「あの人僧侶だよな……なんてパワーだ」


 周りの戦士たちが口をあんぐり開け、驚く。


「あかん。今のでも死んでへん……」


 アカネがつぶやく。すると砂埃の中から首がぐるりと反対を向いた魔法使いがのそりと出てくる。


「チッ回復役ぶっ殺せると思ったのにダメか」


 ガキキッと自分で首を正面に持ってきながら仕留め損なったと悪態をつく機械兵。サソリの機械兵も近寄りフードを外す。


「だめだ、アルコールのせいで魔力が弱まってる……」


 マヤは一撃で仕留められなかった後悔と、グランマに禁酒されていたことを思い出して悔やむ。


「貴様名を何という」


 サソリの方の機械兵がマヤに問う。


「機械もしゃべれるんだな、ガラクタ風情が、そっちから名乗れ」


「フッ。笑わせる。どちらが『下』かどうか分かってないらしいな」


 サソリの機械兵は銀髪をかき上げ漆黒の目で笑う。


「お前こそ状況が分かってないようだな。ここに何人の戦士がいると思っているんだ!」


 マヤはニヤリと笑いながら、周りを鼓舞するように叫ぶ。


「そうだ!ぶっ殺すぞ!」


「いいぞ僧侶の姉ちゃん! ガラクタなんざ、俺が直々にぶっ殺してやる!」


 周りの戦士たちも鼻息を荒くし、自前の武器を握り直し、今にも飛び掛かるい準備はできている。


「本当に有利だと思っているのか。これだから人間は。行け『擬人機械種(マテリアルソルジャー)


 フードの男がネジのような機械片を空中に放り投げると、ガチャガチャと醜いトカゲのような機械兵に変身していく。その数20体ほど……。


「これでも有利かな? ハハハハハ!」


 フードの機械兵が高笑うと、一斉にトカゲの機械兵が飛び掛かってくる。

 戦士たちは、眉間に皺が集まり額に汗がほとばしる。ここが死線になると覚悟に変わる。


「来るぞ! 構えろ!」


 トカゲ兵と20人の戦士の剣先が交わる。火花が散り金属音が響き渡る。


「クッソ! なんて力だ!」


「硬いぞ! だめだ!」


 大半の戦士が一太刀目で気付いた。ムカデの機械兵が言う『下』の意味を理解した。戦士の生命線である剣は、粉々に砕かれるか、刃こぼれでで使い物にならなくなっていく。

 背中に汗が流れ、死の恐怖が立ち込める。


「やれ! 機械兵ども!」


 ムカデの機械兵がさらに上から命令を掛ける。トカゲ兵たちは、ギラリと赤褐色に目が光り腕がチェーンソーに切り替わる。


「我が身に宿りし、光の欠片、其れは我が唯一の命の煌きなり。

 主よ、我々に鋼の導きを…… 絶対防御魔法『鋼鉄防御包囲網(ダプロビデンス)』」


 マヤは、空に十字を切り呪文を詠唱する。空気中が煌き、戦士たちの肌がメタル化していく。この空間に存在する人間(・・)に向けてガード魔法を掛けるマヤ。


 トカゲ兵のチェーンソーは鋼の戦士たちの肌を切りつけるが、マヤの呪文の力で、キズ一つつかないボディと化しているため、事なきを得る。


 とは言え、自分の身体をチェーンソーに切りつけられる恐怖は、戦士たちを戦意喪失させるには十分だった。

 大半の戦士たちはへたり込むか、周り右で駆け逃げていく。


「ほう……なかなか腕のたつ僧侶がいるみたいだな」

 

ニタリと笑い、余裕を見せるムカデ。


「久々に詠唱させやがって。くそ……」


 さあてどうする。機械兵は15、6、7……17体。後ろには先ほどの魔法使いの擬態兵とムカデ野郎。なかなかハードモードだな。


「マヤ。大丈夫か。助かった」


「ディーゼル」


 詐欺剣士は生きているみたいだ、とっくに逃げ出したかと思ったが。驚いた。


「マヤ。2分間稼げるか。俺に策がある」


「頼っていいのか、本当にこの状況打開できるんだろうな」


「マヤさん。さっきは、防御魔法おおきに。またあの時みたいに攻撃つよくしてや。うちがやったる」


 ディーゼルと話していると後ろからアカネが割って入る。なんとも頼もしい。


「オレもいるぞ。どうすればいい」


 げ。さっきのガキンチョ勇者。なぜ逃げてない。横にはギャル魔法使いが手をつないで付き添っている。

「あーしが魔法で守ってるから。絶対一人にさせないよ」


「おい無駄話してる暇はねえぞ!」


 ディーゼルが声を張り上げると全員がトカゲ兵をにらむ。


「みんな私の肩に触れて!」


 マヤが声をかけると4人はマヤの身体に触れた。


「ちょっと勇者ァ! どこ触ってんの!」


 無意識にお尻をタッチするクイン。


「行くぞ! 『攻撃倍加(ガケタル)』!『速度倍加(シアタル)』ンナアアアアアァッ5重詠唱ッ!」


 5人の円陣は光に包まれステータスが倍加していく。 


「オラアアアア! 『天業雲剣』の錆にしてくれる!」


 ディーゼルは、マヤの術で威力が上がったのを楽しむかのように笑いながらトカゲ兵を薙ぎ切っていく。


「サイダー神拳!! チェッストオ! 竜巻微炭酸!」


 アカネも食ったステーキ分大暴れ。一気に4体のトカゲ兵を相手にする。チェーンソーの刃を寸前で交わし、シャカシャカ振られた腕を叩き込んでいく。


「キィエエエエエ!」


 クインの前にも2体のトカゲ兵が立ちはだかる。


「アゲハさん、下がってて」


 勇敢にもショートソードで立ち向かおうとするクイン。


「エレクトロ!スタン!」


 クインが叫ぶとショートソードに雷が落ちたかのように稲妻がほとばしる。


「小僧、やはり一族の血を引いているな。誘拐確定だ」


 ムカデの機械兵がぼそりとつぶやく。


「ヤア!」


 へたくそながらショートソードを突き立てるとトカゲ兵はバチバチとショートし、のたうち回った後、電源が切れたように動かなくなった。


「やあるじゃん クイン!」


 アゲハは、クインがただの子供だと思っていたからか、一体倒したことに驚いた。クインはアゲハを守り満足げだ。

――しかし背後にはチェーンソーが迫る。


トカゲ兵がクインに切りかかる刹那。

マヤが踏み込み、とんでもないスピードで、トカゲ兵の顔面にストレートを浴びせると、そのまま連打で体中にマシンガンを打ち込むかの如く拳を弾く。


「オオオオオオオラァッ!!」


 アゲハとクインはその場にへたり込む。なんとかギリギリで、マヤに助けられた形だ。

トカゲ兵は今ので最後か。

 マヤが周りを見渡すとムカデ、魔法使いを残し一掃した。ディーゼルとアカネもさすがに息が上がる。

私の残りMPも搾りかす程度しかない。



――パチパチパチパチパチ

 

「コングラッチレイション。なかなかやりますね。人間にしては」


 ムカデ男が拍手し、祝辞を述べる。


「おい、マヤ。2分稼げ。今しかねえ」


 ディーゼルがマヤに耳打ちする。確かに今なら2分程度稼げそうだ。


「お前たちの目的はなんだ!」


 いいぞクイン。勇者らしい発言だ。ディーゼルに目をやると、下を向きぶつぶつ何かを唱えている。


「目的? それは君だよクイン君。君の能力だ」


「能力……こんな子供になにがあるっていうのよ!」


 マヤも続ける。ディーゼルの時間稼ぎもそうだが、単純に気になる。


「うるさいヨ! 人間!」


 ムカデ男の横にいた魔法使いの擬人兵がものすごいスピードでクインに迫る。


 クインは無我夢中でショートソードでガードすると。バチっと電撃が走りホール中が光る。


「下がれ! スタンピート! 研究対象を傷つけるな!」


 ムカデ男が指示すると擬人兵(スタンピート)は下がる。


「今のが我々の目的だ。雷神族のクイン」


「ら、雷神族……」


 全員がクインを見つめる。

 クインの髪の毛は逆立ち、体中に電気がほとばしっていた。



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